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2014年11月14日

[] 比の順序問題

2:3などとして書き表される「比」について,簡単な整理と検討を試みます.

比と比の値について,2:3=2/3(2分の3.以降の「/」を使った式も同様です)とすることの批判を,Web上で見かけました.2:3の比の値が,2/3なのか3/2なのか覚えられないという,中学生を指導してきた方のご苦労も書かれています.

その先生へのアドバイスはさておき,2:3の比の値は2/3である,というのが,どのくらいの範囲でルール化されてるか,調べておこうと思い立ちました.まずは海外かな,とするとCommon Core State Standrdsだな…取り決めと具体例が見つかりました.

CCSS.Math.Content.6.RP.A.1

Understand the concept of a ratio and use ratio language to describe a ratio relationship between two quantities. For example, "The ratio of wings to beaks in the bird house at the zoo was 2:1, because for every 2 wings there was 1 beak." "For every vote candidate A received, candidate C received nearly three votes."


CCSS.Math.Content.6.RP.A.2

Understand the concept of a unit rate a/b associated with a ratio a:b with b ≠ 0, and use rate language in the context of a ratio relationship. For example, "This recipe has a ratio of 3 cups of flour to 4 cups of sugar, so there is 3/4 cup of flour for each cup of sugar." "We paid $75 for 15 hamburgers, which is a rate of $5 per hamburger."

6年の学習となります.具体例を訳すと:「動物園の鳥小屋では,鳥の翼とくちばしの比は2:1だった.なぜなら(どの鳥も)翼2つにくちばし1つあったから」「候補者Aの得票数に対し,候補者Cはその約3倍の票を得た」「このレシピでは,小麦粉3カップと砂糖4カップを使いますので,砂糖のカップ数に対して3/4の小麦粉を必要とします」「15個のハンバーガーを買うのに75ドルを支払った.ハンバーガー1個あたり5ドルの割合だ」.

この引用より前,「2:3」と表したり,「2/3なのか3/2なのか覚えられない」と悩んだりするのは,そこで出てくる2つの数をいわば,対等に扱っています.しかし英語で書かれた事例では,「The ratio of wings to beaks」や「3/4 cup of flour for each cup of sugar」で,対等には見えません.それぞれ,beak(s)そして(each cup of) sugarが基準量となり,それに対するwingやflourの量を,比で表すことができる,となっています.


比と比の値について,日本の算数/数学/算術ではどうなっているか,見かけた情報を書いていきます.

2つの数量AとBの割合を表すには,大きく分けて2つの方法があります。1つは,AとBのどちらか一方を基準(1とみる)にして他方を表す方法です。例えば,Bを基準として「AはBの3倍」とか「AはBの2/3」などと表します。もう1つは,AとBのどちらか一方を基準にするのではなく,2つの量に共通な量を基準にして,簡単な整数の組み合わせで表す方法で

(図省略)

・比の値

a:bの比の値は,a÷bで求められます。

a:bの比の値は,aがbの何倍になっているかを表す数です。このことから考えても,比は割合の1つの表し方であるといえます。

なお,比と比の値を等号で結んでよいかどうかは定義によりますが,小学校では,比は2 つの数量の関係を表すことから,等号では結ばないことにしています。

日常生活において,比を用いて考えることは少なくない。一元一次方程式を活用する場面として,簡単な比例式を解くことが考えられる。例えば「2種類の液体A,Bを3:5の重さの比で混ぜる。B150gに対して,Aを何g 混ぜればよいか」を求めるには,Aをxg 混ぜるとして,比例式3:5=x:150を考えればよい。この比例式は,比の値を用いて3/5=x/150と表すことができるので,一元一次方程式とみることができ,この方程式を解くことで,x =90となる。つまり,液体Aを90g混ぜればよいことが分かる。このように,比を基にして数量を求めるような具体的な場面において,比例式をつくり方程式に変形することで問題を解決する。

引用者注:α:β=h:kなど,比を含む等式を用いた議論ののち)

此一定の分数h/kを,α:βなる比の値と称す.(略)

α:βなる比の値rなりといふことを書き表はすに

α:β=r

なる記法を用ゐる.此場合には前節に説きたる意義に従ひて

α=rβ

なり.

ドレッシングをつくるために,サラダ油を大さじ3杯,酢を大さじ2杯まぜました。このときのサラダ油と酢の体積の割合を,:という記号を使って,

3:2

と表すことにします。3:2は,「3対2」と読みます。3:2のような表し方を,比といいます。この例では,3:2は,体積比を表しています。

2つの量AとBの比を

A:B

と表すときは,AをBと比べているのです。それで,Bを「もとにする量」と呼び,Aを「比べられる量」と呼びます。

これは,Bを単位としてAの値を測っているのと同じです。したがって,上の例では

A:B=3:2=3÷2=1.5

と考えることができます。この1.5を,比3:2の値といいます。

比の値を,簡単に比と呼ぶことがあります。

(略)

ところで,三角形の3辺の長さa,c,cが,それぞれ,ある長さの3倍,4倍,5倍であるときは,

a:b:c=3:4:5

と表します。この比a:b:cを,連比といいます。

このとき,a=3k,b=4k,c=5kとなっていますから,

a/3=b/4=c/5=k

が成り立ちます。

(略)

連比においては,

9:6:10=9÷6÷10=1.5÷10=0.15

などとすることは無意味です。


これらから,次のことが分かります.まず,歴史的にも国際的にも,a:bをa/bで表すという取り決めがあると言ってよさそうです.

「2:3の比の値が,2/3なのか3/2なのか」の混乱について,検討してみるなら,比の概念が,乗法や除法,数量関係,割合,比例,比例式と,多くのことと結びついている点が,無視できないように思っています.2つの数を,どちらが先でも後でもいいけれど表現の必要に迫られて並べ,コロンで挟むという書き方は,「数量関係」を重視しているわけです.そこに固執すると,わり算あるいは分数の式にして,1つの数に対応させることの意義が,想像しにくくなります.

最後の引用は,「連比の値」(という用語は公式にはありませんが)に関する話が含まれています.a:b:c=3:4:5だと扱いにくいように見えるけれど,それらにない文字kを導入することで,a=3k,b=4k,c=5k,あるいはa/3=b/4=c/5=kという式を得ます.この等式を活用して,ある種の問題が効率良く解ける,というのは受験のテクニックとして,中学3年のときに教わりました.答えを得る際にはkがうまく消えてくれるのも,大事なところで,自分で置いたkがもし,最終的な答えに入っていたら,立式か計算のどこかで間違えていると判断すればいいのです.

算数・数学を離れても,比の値は,2つの数の取り違いを防いだり,比(割合,比例)として見たときに正しい/間違っているのをチェックするのに,便利かもしれません.税込価格と税抜価格の2列からなる表を作ったときに,各行の左の数を右の数で割って,いまなら1.08*1になってあればいいし,そうでなければ「ここ間違ってるよ」と指摘することができます.

*1:手続きとしては,税抜価格を税込価格で割っても差し支えありません.その意味で,2/3でも3/2でもどちらでもいいのですが,暗算や手計算で行うと煩雑になりますし,商「.925925…」の意味が容易に想像できないというデメリットもあります.かけ算の順序論争で見てきた「どちらでもいい」と「どちらにするか」の対比を,考えることができるのです.

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