Hatena::ブログ(Diary)

わさっき RSSフィード

2015年12月20日

[] 相似な図形の長さ〜新たな3口のかけ算

いきなりですが問題です.

82.8cmの直径の円があります。その3.23倍の直径の円の円周は何cmでしょうか。

求める式と答えを書きなさい。

円周率は3.14とします。

さっそくですが解答です.円周を求めたい円の直径は,82.8cmの3.23倍ですから,82.8×3.23で求められます.そして円周=直径×円周率を使えば,円周は82.8×3.23×3.14という式で表されます.暗算できそうにないので,電卓で計算してみますと,839.77416となりました.答えは839.77416cmです.めでたしめでたし.


それで終わったら苦労はしませんで,まずは元ネタを挙げておきます.

実際の文章題は,p.49に見られます.作問課題を通じて,子どもが作った問題とされています.

本文に,授業中のやりとりも載っています(pp.31-32).「 」が先生,『 』が子どもの発言でしょうか.

「(2)の式は?」『82.8×3.14×3.23』「え,ちがうよ,(82.8×3.23)×3.14だよ。かける順番を逆にしても結果は同じだけど,式としては間違いだよ。まぎらわしいんだよな,数値が。でも考え方は(82.8×3.23)×3.14だからね」

高学年の小数の計算でも,かけ算の順序に注意して指導しているんだと思いながら,読み進めると,その直後に,後日談がカッコ書きとなっていました.

(後に気がついたことだが,直径が3倍になれば円周も3倍になると考えると両方とも同等に正しい。)

冒頭の文章題に対して,82.8×3.14×3.23あるいは(82.8×3.14)×3.23の式もまた,正解になるのだといいます.

この主張を確かめるため,「82.8cmの直径の円」を「小さな円」,「その3.23倍の直径の円」を「大きな円」と名付けておいてから,次の4つの数量を考えることにします.

  • A:小さな円の直径
  • B:大きな円の直径
  • C:小さな円の円周の長さ
  • D:大きな円の円周の長さ

そうすると,「さっそくですが解答です」として書いたロジックは,AをもとにBを経由してから,Dを求めている(Cは出現しない)ことがわかります.それに対し,あとで正解と判明した式は,AからCを得て,そして「直径がp倍になれば円周もp倍になる」という性質を使い,Dに至った(Bは出現しない)と考えれば,納得がいきます.

ここで当ブログの過去の記事と照合しましょう.3口のかけ算,かけ算の順序です.小学校ではa×b×c,大人モードで次元を入れるとn1[d1]×n2[d2]×n3[d3]で表せるような場面について,教科書をはじめこれまで見聞きしてきた情報をもとに,自分なりに整理を試みたのでした.

ここまで見てきた文章題では,2番目と3番目の因数がともに無次元量であり,倍の操作を表しています.これは《倍の合成》と共通します.その一方で,2番目と3番目の因数を交換できる(ただし最初の因数は固定)というのは,《2つに比例》の性質です.

どうやら今回見てきた,円周を求める問題は,《倍の合成》とも《2つに比例》とも異なる種類に位置づけるのが良さそうです.類題(後述)も考えられますので,《相似な図形の長さ》と命名したいと思います.

《相似な図形の長さ》が,《倍の合成》や《2つに比例》とどこが違うのかというと,上記のABCDを使うなら,D÷Aという計算,言葉にすると「最終的に求める数量が,場面の最初の数量の何倍になるか」を得ることに意味がない,となります.

実際のところ,冒頭の文章題で,「大きな円の円周は,小さな円の直径の何倍か」という問題を,考えることはできて,それは3.23×3.14でも3.14×3.23でも,839.77416÷82.8でも求められます.だけれど,その数値に,数量関係として何か意味づけをするというのは,他の可能な「何倍になるか」と比べて,困難というわけです.

もう少しだけ,個人的な理解の状況を書いておきますと,この文章題を見つけて,本文の後日談にも感銘を受け,はてブをしたのは,今月16日のことです*1.ABCDの4つの数量に気づいたのは,その日,昼食をとりに大学のメインストリートを下っていたときで,D÷Aによって,以前に書いた場面と区別できると思いついたのは,メインストリートを上って戻っていたときでした.


小学生が式を立てて計算でき,《相似な図形の長さ》に分類できる問題を2つ,書いておきます.

  • 小さな正方形と,大きな正方形があります.小さな正方形の1辺の長さは3cmです.大きな正方形は,小さな正方形の2倍の大きさです(1辺の長さが2倍です).大きな正方形のまわりの長さは何cmですか.
  • 1:50000の地図(地図上の長さは,実際にはその50000倍になります)の上に,3つの地点A,B,Cがあります.地図でAとBの距離は3cmです.AとCの距離は,AとBの距離の4倍です.AとCの距離は,実際には何kmですか.

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20151220/1450537200