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解放専門委員会からラウンドテーブルへ〜性的マイノリティへの図書館サービス

図書館情報学を学ぶ人のために

図書館情報学を学ぶ人のために

大学生協で購入しました.編者のうち2人(田窪先生,原田先生)は,関西の大学の教授ということもあり,情報知識学会を通じて何かとご指導をいただいています.
自分の教育・研究に近いのは,第5部(21世紀の技術が示す知識のカタチ,第17章〜第20章)*1でして,まずそれらの章を読みました.それから,前のページをぱらぱらとしていると,そういったことも図書館の活動なのかと思った一節がありました.第9章(マイノリティを支援する図書館)のp.94です.

3 性的マイノリティへの図書館サービス
1970年代にはじまった性的マイノリティへの図書館サービス
 次に性的マイノリティに対する図書館サービスをみていきたい。性的マイノリティへのサービスは1970年代のアメリカで開始された。アメリカ図書館協会は1970年に「ゲイ解放専門委員会」(Task Force on Gay Liberation)を設置し,同性愛関連の文献リストの作成,同性愛関係資料にかかわるコレクションの構築と資料へのアクセスの改善,さらには図書館界における同性愛者への職差別の是正など,性的マイノリティを視野に入れた活動に着手した。「ゲイ解放専門委員会」は現在ではアメリカ図書館協会「ゲイ・レズビアンバイセクシュアル・トランスジェンダー・ラウンド・テーブル」(GLBTRT)に名称を変更した(バイセクシュアルは両性愛者,トランスジェンダーは身体の性と心の性が一致しない人々を指す)。このグループは性的マイノリティに関する優れた図書を推薦する「レインボープロジェクト」などに取り組んでいる。

性的マイノリティへの図書館サービスや各種活動について,その実務や理念などは,上記引用のすぐ後から次のページまでに書かれています.「2 移民・難民への図書館サービス」「3 性的マイノリティへの図書館サービス」「6 先住民への図書館サービス」について解説したあと,「なぜ図書館がマイノリティへのサービスを行うのか」の答えとして,「文化的多様性を映し出すコレクションを収集し提供する」「マイノリティの情報ニーズに応えエンパワーメントを支える」「社会の文化的多様性を伝える」が,p.99で太字になっており,それぞれ数行で詳しく述べられています.
引用した中で目を引くのは,当初「ゲイ解放専門委員会」として設置されたのが,「ゲイ・レズビアンバイセクシュアル・トランスジェンダー・ラウンド・テーブル」に変わったというところです.ゲイ*2だけではなくGLBTを対象とし,専門委員会からラウンド・テーブル(円卓)へと,組織替えをしている点です.
性的指向性自認などで苦悩し,こちらに打ち明ける学生がもしいれば,その苦しみを少しでも理解するとともに,『図書館情報学を学ぶ人のために』の本を貸し出すのはもちろん,大学内外の図書館で情報収集することを勧めたいと考えます.また組織について,専門委員会だとかラウンド・テーブルだとかいった活動母体を自分自身,持っているわけではありませんが,長期にわたって活動をし,社会の動きに応じて組織名をすげ替え,活動方針の軌道修正を図りながら,社会と関わることをしていきたいと,思うようになったのでした.


以前に紹介した生と性:

今朝見かけた多様性:

図書館情報学を学ぶ人のために』の書評ほか:

*1:部および章の目次は,https://www.amazon.co.jp/dp/4790716953のカスタマーレビューで見ることができます.

*2:「住民からの同性愛に関する図書への除去要請は絶えることがなかった。」(p.95)は,専門委員会が作られた前後の状況を語ったものと見ることができます.