小説というのは難しいものだなあと思ったのです。

サマーウォーズの映画にいたく感心いたしまして小説を読みましたのです。
そしてあろうことかそんなに面白くなかったのです。
ええ、僕は頭を抱えましたよ。
以下の話は前提条件として映画版サマーウォーズにいたく感動して、小説版サマーウォーズに今イチピンと来なかった(哀しいことに)人間が書いております。
前提条件とネタばれに納得した上で先にお進みください。


小説版について少しばかり述べましょうか。作者は岩井恭平さん。読んだことは無いけどムシウタの作者で有名な人。文体は悪くない。程々に読みやすくてさくさく読めるという感じ。ストーリーラインも基本的には映画版準拠。ただしどっちがどの程度先に書かれたものかは把握してません。そんな感じで。

さて、僕が何にショックを受けたか。これはですね小説版サマーウォーズに特に批判する点が見当たらないということです。それどころか構造だけで見たら映画よりもちゃんと作られていると僕は感じました。根拠を述べましょう。

・夏希が花札を得意だったという栄の言及

「夏希先輩も大おばあさんに花札を教わったって」「あの子の勝負運は、一族の中でもピカ一だ。天性のもんだろうねえ」177P

これは映画版で一番気になったところです。小説版ではきちんと言及されていて非常に素敵。というか映画ではなんで削ったんだろう。数秒なのにねー。

・夏希の心理描写
映画は基本主人公視点で進むのですが、小説版では夏希視点が結構な頻度で現れますね。健二を選んだ理由、どう思ってたかなど映画では言葉足らずだった部分に言及されていると思います。

・ラブマシーンを作った動機と名前の意味
侘助先生のあれですね。まあベタだけどあるとないとじゃ大違い。説明無いとラブマシーンなんてただの滑った名前だものね。

とまあぱっと思いつくのでこれくらいですね。もうちょっとあるかもしれない。基本的に小説の描写は映画と比べて丁寧です。
そして、そこが問題。なんで映画の方が面白かったんだろうなという。
実は今回感じた感覚は初めてではありません。描写としては正しく思えるのにトータルで見ると面白くないという感覚。アイシールド21を読んだ時にも感じましたし、理由あって冬に出るを読んだ時にも感じました。

勿論この感覚を個人の好みといってばっさりきることは可能です。さらに言うならば創作の面白さを理詰めではかろうなんて愚の骨頂だというのもしかりです。
しかししかしながら、僕は考えずにはいられないのですよ。正しいことと面白いことの関係について。正しければ面白いのか。正しくても面白くないのか。
この命題は僕が数年考え続けている命題なのです。
誰か分かったらこっそり教えてください。僕はそれまで考え続けています。