「1は0以上」の証明

経済学のための数学入門』例2.1.1(3)(63頁)。ただ、テキストのここのところは、誤植もあるし、解説が簡単すぎてよくわからないので、以下はちょっと違った方針をとっています。



実数集合において、0というのは加法の単位元、1というのは乗法の単位元でした(単位元についてはこちら)。つまり、0を足したり、1をかけたりしても、何も変わらないということでした。
他方、実数集合には、全順序 が定義されています。小学校で習った「〜以上」という記号ですが、その全順序ということを、ここではとりあえず、すべての実数が、他のすべての実数との間に、 という関係を結べることになっている、と理解しておきます。
さて、以上の導入では、果たして0と1の間の の関係はどうなっているのかについては、直接にはわかりません。でも、我々は誰でも、 ということを知っています。必要なのは、それを証明してやることです。
証明に使うのは、実数の性質のうち、

  • 不等号の両側に同じものを足してもよい
  • 「0以上」の数をかけあわせた数も「0以上」

の2つです。



まず、 は全順序なので、 のうち、少なくとも1つは成り立ちます。
が成り立っているとすると、これが証明すべき事柄ですから、ここで終了です。
が成り立っているとしましょう。このとき、「不等号の両側に同じものを足してもよい」ということですから、両辺に を足してやりましょう。

各辺について計算すると、

となりました。ちょっと変な感じですが、続けます。「「0以上」の数をかけあわせた数も「0以上」」なので、いま「0以上」ということになった 同士をかけあわせてやれば「0以上」のはずです。

右辺を計算していきますが、「 をかけたら逆元になる(マイナスがつく)」を使います(証明はこちら)。

は1の逆元ですから、その逆元は1ですね。

真ん中を省略すると、

が言えているわけです。というわけで、いずれにしても(ということは、必ず) が成り立ついうことです。以上で証明は終わりです。