Mark Waters監督『The Spiderwick Chronicles』 (邦題:スパイダーウィックの謎)

スパイダーウィックの謎 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

スパイダーウィックの謎 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

Charlie and the Chocolate Factory』で、なんの面白味もないただのいい子を演じた Freddie Highmore くんが、タッチの上杉兄弟のような性格分けの双子を一人二役で演じている。この映画は特殊効果でゴブリンとかのクリーチャーがたくさん出てくるわけだが、そういうのよりもこの一人二役が全然違和感なく見られることに一番の効果を見た。もちろん、ちゃんと演じ分けられる Highmore くんもすごいけど。
さて、映画としては、実に well-made な感じで、何の破綻もなく、また最後のオチに向けた伏線の張り方も見事で、お手本のような作品。しかし、であるがゆえに、どうにもとんがったところがなく、何一つ引っかからず、作中で起こったことのすべてが、あれがあれのメタファーね、という感じに全部理解できてしまい、観た者の中に何も残らない(「呪い」がかからない)。
子供向けというけれど、子供だったら楽しめるのだろうか。あと、全然 chronicles じゃないよねえということで。

人文総合演習A 第4回 (坂本敏夫『死刑と無期懲役』)

死刑と無期懲役 (ちくま新書)

死刑と無期懲役 (ちくま新書)

今回から報告開始です。最初の回が、そのあとの回の基準となってしまうので、いつもちょっとした不安を抱えながら授業にのぞむのですが、(今回も)無用の心配でした。また今期から採用した「報告×2、コメント×2、司会×1」の5人体制という学会シンポ方式(今回は報告が1名ですが)も、うまく機能したようでなによりです。特筆すべきは司会者の冷静さでしょうか。司会が落ち着いているかいないかで、結構変わってきます。もちろん、報告者、コメンテータともに、質問に対するリプライの迅速さがよかったですね。自分の意見についてあらかじめ考え抜いているからこそできることです。
長くなると続かないので(笑)、授業の場での議論の内容についてはおいておいて、議論のテーマについて簡単にコメントを。一つは、「あんな奴は死ぬべき」だとしても、実践的にはこれが「そういう奴は殺すべき」に変換され、それによって、殺す人、殺し方、殺す相手を正しく特定する方法、といった事柄を定めなくてはいけなくなるということ。この問題について論じる際には、「死ぬ」と「殺す」の区別、特に「人は勝手には死んでくれない」という事実が重要です。
もう一つは、本書もそうですが、死刑囚は反省と改心の機会を得て感動的な美しい話の主人公になることが可能ですが、殺人の被害者は、つねにいい人であったというほとんど存在しない例外的事例を除いて、そうはなれないということ。ワイドショーはつねに被害者を善人に仕立てますが、本人を知っている人にとっては白々しく響くことも少なくないのではないかと思います。感動したときほど中和が必要です。
なお、死刑については、たとえば郷田マモラモリのアサガオ』(全7巻)という漫画があります。一読の価値はあると思います。
いずれにしても、今回の議論を経たことで、出席者のみなさんは、今後、死刑とか刑罰とか犯罪とか冤罪とかの、関連する言論に触れた際に、否応なくそれまでとは違った反応をしてしまうでしょう。それが、この授業がめざす「呪い」です。
 
以下、出席者のレスポンス(司会者のが欠けてますが。早く出してね)。

続きを読む