(旧姓)タケルンバ卿日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2008-07-08

若い人は海外旅行離れしてないよ

本当に若い人は海外旅行離れしてるのかな。

ここ最近ずっと言われて来たことですが、極めて由々しき事態だと思います。

若人よ、旅に出よ: 大石英司の代替空港

ホントかね?

オレはゼミの後輩にディベート教えている関係で、大学3年・4年を10年以上定点観測できる環境にあるんだけど、そういう変化を感じないんだよな。旅行離れしてる気配はない。世代による変化、時系列的な変化を感じないんだよね。

海外を旅する若者が急速に減っている。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

こんな記事もあるんだけどさ。でも、母集団としての海外旅行者は増えているわけで。

同時に若年人口は減っている。

トータルのパイが減っている中で、抽出する対象の若い人が減っているんだから、旅行者に占める若い人の割合は当然減ってあたりまえ。このあたりまえのデータをもって「海外を旅する若者が急速に減っている」とは到底言えないような気がするんだよな。データの読み方に論理の飛躍を感じちゃう。

そこでちょっと調べてみることにした。本当に若い人の海外旅行離れが進んでいるのかを。

まずはこちらで海外旅行客の統計を集める。

この中に「海外旅行者の性別・年齢階層別構成比率」があるので、まずはそれを収集。法務省とか国土交通省の孫引きデータだけど、両者のサイトは古いのがあまりないので、データの統一性ということで、ここんちのデータでツラを揃える。

次に総務省から人口推計のデータを。

これでデータ集め完了。あとはこれを使って計算。計算方法は簡単。各年の年代別の人口海外旅行者数を弾き、割ってみる。そうすると世代別人口に応じた旅行者数がわかる。「何人に1人」という形で出る。で、これが少なければ少ないほど旅行好き世代。そういうことになる。

一応注意として、今回はザラッとでいいやということで、一部、割合の数値から人口とか旅行者数を割り出しています。なので完全に正確な数値とは言えません。細かい数字に興味があったら各自で調べてちょうだいな。そこまでは面倒なんでしません。大体でわかればいいものなんで。ザックリ計算。傾向がわかりゃいいんだよ、傾向が(スゲエ適当)。

なので割合なんかも合計が100%になるとは限りませんし、細かな誤差が発生しております。それを前提にご覧下さい。

まずは各世代別の旅行者数割合。

(表1)海外旅行者の世代別比率(%)

~910~1920~2930~3940~4950~5960~
19932.25.328.418.419.315.311.0
19942.25.228.218.518.915.611.3
19952.35.327.718.918.915.411.5
19962.55.027.818.618.615.612.0
19972.75.326.919.217.416.212.3
19982.95.526.219.516.416.912.6
19993.05.524.919.715.717.813.5
20003.15.423.520.115.618.314.0
20013.24.921.920.815.918.814.5
20023.05.120.521.315.919.015.3
20033.14.520.122.616.818.614.2
20043.24.818.522.217.218.715.4
20053.24.817.721.917.818.915.6
20063.24.817.021.917.919.016.2
20073.24.816.321.218.618.417.5

これを折れ線グラフにするとこうなる。

f:id:takerunba:20080708173158g:image

ま、これを見ると確かに20代の右肩下がりは顕著。これを世代別人口で調整するとどうなるか。海外旅行者1人あたりの人口数を出すとこうなった。

(表2)海外旅行者1人あたりの世代別人口数(人)

合計~910~1920~2930~3940~4950~5960~
199310.549.927.05.47.28.69.118.3
19949.242.723.44.96.37.68.016.3
19958.235.719.84.45.56.87.114.6
19967.529.618.74.15.16.46.413.3
19977.527.017.04.25.06.56.313.3
19988.026.517.04.65.37.06.714.2
19997.724.516.14.65.26.86.413.1
20007.121.614.64.44.76.05.912.0
20017.823.117.35.15.16.36.313.1
20027.723.916.05.25.06.16.112.6
20039.628.522.06.46.07.17.717.3
20047.621.616.05.35.05.46.013.0
20057.320.615.15.14.95.15.812.7
20067.320.514.75.14.95.05.812.2
20077.420.514.85.35.15.05.811.9

同じくグラフ化。数値が大きいところは省略。

f:id:takerunba:20080708173159g:image

2003年SARSとかイラク戦争の影響で、データが大きく歪んでいるけども、それ以外はほぼ一定。特に21世紀に入ってからは「5.1→5.2→6.4→5.3→5.1→5.1→5.3」と5人台前半で安定しており、人口比の関係から、トータルでの割合は減らしているけども、20代の海外旅行熱が下がっているとは言えない。

海外を旅する若者が急速に減っている。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

これは到底言えない。「減っている」とまでは言えないし、ましてや「急速に」を読み取るのは不可能だな、この数字からでは。

むしろこのデータから次のことが読み取れるのでは?

勤労世代のライフスタイルには変化がない

グラフの下に張り付き、横ばいで推移しているのは20代〜50代。つまり勤労世代。ここに変化がないということは、勤労世代のライフスタイルの変化を指し示さないのではないか。これまで通り相変わらず人は旅行に行く。それだけのことでは。

ライフスタイルに変化があるのはティーン&リタイア世代

逆に変化があるのは10代未満・10代・60代以上の3つ。この3世代はどれも旅行熱が上がっていると考えられる。この世代はいずれも勤労世代じゃない。ということは、親が我が子に対し、子どもの間に海外を経験させようという意識が出てきたり、学生の間に海外へという意欲があったり、リタイア後の生活の中で海外に行く。こういうライフスタイルの変化があるのではないか。変化があったのは若者ではなくて、それよりさらに下の層、あるいははるか上の世代ではないのか。

改善する可能性は大きい

だとしたら若者海外旅行離れどころか、実は熱は高まる可能性がある。10代は90年代より2000年代に数値を良くしてる。ということは、彼らの世代がリピーター化することで、それまでの世代より、海外旅行好きの割合が高まる可能性すらある。

中年になってからでも海外はいけるけれども、やっぱり若い内の海外体験というのは特別ですよ。

若人よ、旅に出よ: 大石英司の代替空港

これが本当ならば、その「若い内」が20代から10代に早まった人間が増えたおかげで、将来は明るいのかもしれない。世代別人口が減っているから、海外旅行客数という切り口では目立たないだけでは。

少なくても自分がチョチョイとまとめたデータでは、若者海外旅行離れしているとはいえない。「変わらん」というのが結論。騒ぐことの問題はないですよ。みんな旅行好きですよ。

問題はこっちでは?

むしろオレはこっちに問題を感じるな。データ元である旅行業協会の統計ページ。この一言。

1996年2001年を比べると、全体では20歳代が5.8ポイント減少しているのに対し、50歳以上は5.7ポイント増加している。20歳代の女性は依然として海外旅行の最大のマーケットを構成しているが、この5年間では8.0ポイント減少している。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2002/06.htm

2002年と5年前の1997年との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の減少が目立ち50歳以上の比率が6ポイント増加している。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2003/06.htm

2003年と5年前の1998年との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の減少が目立つ。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2004/06.htm

2004年と5年前の1999年との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の低下が目立つ。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2005/06.htm

2005年と5年前の2000年との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の低下が目立つ。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2006/06.htm

2005年と5年前の2000年*1との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の低下が目立つ。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2007/06.htm

2007年と5年前の2002年との構成比を比較すると、20代の減少、特に20代女性の低下が目立つ。

http://www.jata-net.or.jp/tokei/004/2008/07.htm

よくもまあ7年も連続で同じようなことを書くよね。問題点わかってるんなら手をつけなよ。7年も前に問題に気付いておいて、7年連続で「20代の減少、特に20代女性の低下が目立つ」ですか。

……でも7年も続けば、そいつらもみんな年をとり、30代になっていくわけで。何故か30代の問題にはならんのだなあ。……ホワイ?

このあたりの不思議さが解消されないかぎり、「若者海外旅行離れ」という話には乗れないね。どうみても単なる若い人叩きです。本当にありがとうございました

*1:「2006年と5年前の2001年」の誤植と思われる

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