子猿のオヤツと山百合のオシベ

オシベの消えたヤマユリの図

 午後、仕事部屋で執筆してたら、外からキャオキャオと高い声が聞こえてきた。
 窓の外を見ると、猿の姿がちらほら。どーやらさっきのは子猿の声だったらしい。洗濯物を干してるので猿の群れには庭に入ってほしくないのだが、しばらくその様子を観察してみた。
 母猿に抱かれてる赤ちゃん猿もいるし、もうちょっと大きくなって自分で動きまわってる子猿もいる。大抵、群れの移動は大人の男猿が先頭で進んでいくもののようだから、どーやら群れの先陣は通り過ぎた後らしい。大人は必要なきゃあ騒がないから、僕もくろべーも気付かなかったのだな。
 見ていると、子猿の一匹が、庭先で咲いてるヤマユリに近づいた。花の脇にしゃがむと、「わーい」って感じで茎を持って花を手元に引き寄せている。そして花の中に手を突っ込んだと思ったら、何やら取り出してはむしゃむしゃ食べている。明らかに、花の中でも美味しいところを知ってるって感じの食べ方だった。
 花の形がラッパ型なこともあり、なんだか映画館の大型紙コップでポップコーンをむしゃむしゃ食べてるような姿である。何食ってるのかなーと気になったので、夕方の散歩に出る時にチェックしてみた。


 通常、咲いてるヤマユリは、目に鮮やかな赤や黄色のオシベが前に突き出している。聞けば、花粉が多くて元気のいいオシベは赤で、時がたってつかれると黄色になるんだろか。黒いくろべーの毛についても赤いのが分かるくらい強い色素で、服に花粉がつくとなかなか落ちずに厄介なんだとか。
 で、子猿がむしゃむしゃやってたヤマユリはというと、このおしべがきれいになくなっていた。僕とくろべーの通り道だし、厄介な存在を食べてってくれたのはとてもありがたい。猿はヤマユリの花ごと食べたり根っこを掘り出して食べたりするんだけど、子猿のうちはそこまではしないもんなのかな。あるいは今年はヤマユリが豊作だから美味しいとこだけつまんでんのかな。
 これで、移動する先々でウンコを落としてったりしないんだったら、猿の群れがきても何の文句もないんだけどなー。