takminの書きっぱなし備忘録 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2009-09-22

今のARの技術的課題

| 14:44 | 今のARの技術的課題を含むブックマーク 今のARの技術的課題のブックマークコメント

なんだか、ちまたではAR(Augmented Reality = 拡張現実感)をビジネスにしようと大盛り上がりだけど、技術者はこの盛り上がりに対して冷めた見方をしている人が多い。

実際、このブームは技術わかってるの?っていう人がやたら騒いでいる気がして、かつてのセカンドライフブームの時と個人的に既視感がある。

僕自身はiPhoneも持ってないし、セカイカメラなどのARアプリを使ったことないけど、とりあえず僕の独断と偏見で、今のARブームの技術的問題点を挙げてみる。


まず今ブームになっているAR技術は主に、カメラを通してみた情報に、仮想世界の情報を重畳するというものだけど、これには大きく二通りの方法が提案されている。

ひとつはGPSやプレースエンジン(無線LANによる測位)、これにジャイロセンサーを加えたもので、デバイスの位置と向きを把握した上で、カメラで撮影されている領域を推定するというもの。

もう一つは、画像が撮影されている対象とそのカメラからの相対的な位置を推定するというもの。

前者の問題点としては、位置情報の精度の問題と、正確な情報の重畳が難しいという問題がある。例えばGPSだと数メートルから数十メートル(単独測位)の誤差があるというし(Wikipediaより)、これだとおおまなか自分の位置を知るのには適していても、ジャイロと組み合わせたところで正確なカメラの向きを知るのは難しい。

しかもカメラの向いている向きに対象が重なっていた場合に不都合がある。例えば、カメラには手前のお店が映っているのに、奥のお店の情報が重畳されてしまう可能性がある。

後者(画像認識)はGPSなどの方法と比べて、正確にカメラに映った対象に対して情報を重畳表示できるものの、認識精度とDBサイズの増大による検索速度の低下の問題がある。今の画像認識型のARの主流はARマーカと呼ばれるタグを使うのが主流だけど、現実世界にARマーカーをベタベタ貼り付けるわけにはいかない。

もっとも、自然画像(例えば東京タワーのようなランドマークとか、お店の外観)から特徴点を取得して認識するという技術も存在するし、それなりに高い精度を実現できているけど、これを例えば屋外のナビゲーションに使おうとすると、途端に厳しくなる。なぜかと言うと、屋外における画像認識は天気や時刻によって照明条件が大きく変わってしまうから。

それともう一つ大きな問題は、例えば本当に街中のナビゲーションを自然画像による画像認識で行おうとすると、大量の画像データを登録する必要が出てきて、これが検索速度と精度に大きく影響する。もちろん、大量の画像データに対して検索速度と精度を高める試みは活発に研究されているところなので、近いうちに大きなブレークスルーがあるかもしれない。

また画像認識に関しては、GPSの情報と結びつけることで、検索するDB領域を絞り込むなどの対応が考えられる。

上であげた、インターフェースの問題を回避する方法として、小さなRFIDチップを色々なところに埋め込むといったソリューションが考えられるけど(電脳コイルはそういう設定らしい)、まあ今の段階では現実的ではないでしょう。


それと、例えインターフェースの側が情報の重畳をうまくできるようになったとしても、今度は仮想世界の情報と現実世界の情報をどう結び付けるかが問題になってくる。つまりDBの問題。

もちろん、AR用に専用DBを用意する手もあるけど、現実的にはすでにネット上にある情報を利用することでしょう。

ぐるなびAPIなど、既に位置(住所)情報を持っているようなものは、すぐにARで利用可能だと思うけど、今度はお店の外観などの情報とそのAPIを結びつける作業が必要になる。同様にAPIが存在しないネット上の情報についても現実世界のオブジェクトを結びつける作業をする必要があって、それらを社員の手作業でやるのか、自動でやるのか、CGMでやるのか、どのみち店舗の移転や外観が変わるなどが起こった時にメンテナンスを行う仕組みをどうするかというとこが、ベタだけど以外に面倒くさいところになるんじゃないかという気がしてる。

まあ、DBメンテナンスというのは今のもろもろのWebサービスにもついてまわっている問題ではあるんだけど、人と資金が限られたベンチャーがこれやるのはそれなりに大変でしょう。


多分、ARビジネスの成長モデルはS字カーブだと思う。つまり、今のブームは技術的な限界などもろもろで一回終焉をむかえて、しばらくの間下火の時代が来ると思う。

そのあと、技術の発展によってここであげた技術的問題を超えた時に、新しい成長ステージが来るんじゃないだろうか。

というわけで、今の段階で現実的なARの落とし所としては、「ARis」のようなエンタメや、地理的な範囲や認識対象が限定されたキャンペーン系あたりかなと思う。

でも、長い冬の時代に継続して取り組んだ企業が、カーブを抜けた途端に急成長したりするので、企業のみなさんにはあきらめずに続けてほしいと思ってます。でも、投資家の皆さんはよくわからないのにあおるのはやめましょう。

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