業務を覚えることの意味
定時後、仕事に関する本を読む。 現在、システム設計を担当している画面の機能に関わる部分について調べていたんだ。
- この項目には、どんな意味があり、どういう風に使われるのだろう?
- 画面入力される値は、具体的にどんな数値なのだろう?
- なるほど、この計算式によって算出されるのか。
などと考えながら専門書を読む。
すると、プロジェクト・リーダーがやって来て、こう言った。
「本を読むのはムダだ。そんなことより、仕事を進めてくれ。」
意味が分からない。 いや、分かるには分かる。 要するに、リーダーさんは、「業務の中身なんて覚えなくていいから、とにかく設計書を早く仕上げて欲しい」というワケだ。 他の担当者のように、何も調べず急いで設計書を書いてくれ、ということなのだろう。
しかし、だ。
何かを造る、ということは、その内容を理解しておくべきであって、理解の深さによって、造りも変わってくるものなのだ。 私は、設計書をちゃんと書くために必要な本を読んでいるのである。
とは言うものの、実は、業務を全く理解していなくても、システムの開発はある程度出来てしまう。 意外なコトに聞こえるかもしれないが、実際にそうなのだ。
画面デザインとデータベースのカラム定義があれば、たいていの業務システムは、なんとなく&とりあえず組めてしまう。
- 表面をなぞらえるだけで開発できちゃう♪
ただし、業務を知らないで作るのと、理解した上で作るのとでは、やはり、動きが変わってくる。 動きだけではない。 目に見える部分も見えない部分も、細かな仕様や使い勝手に至るまで違ってくる。 もちろん、背景まで理解するには時間がかかるし、業務をすべて覚えるのは相当な時間がかかるだろう。
私は、ひと言、「本当にムダでしょうか?」と、リーダーに問い返して帰宅した。 残業するのが無意味に思えてきたから。
帰宅途中、姉歯ショックに少し似ているかもなあ。と思った。
- 構造計算書を偽造してでも、速く安くマンションを造る。
- 業務内容を知らないまま、早く設計書を書き、システムを構築する。
今日も開発の現場では手抜き工事や突貫工事が行われている。
明日、もし、どこかの業務システムが緊急停止したらそれは、進捗アップという名の亡霊にとり憑かれたプロジェクト・リーダーの指示の結果なのかもしれない。