軽井沢とクラウドの奇妙な一致

ホイチョイプロダクションが1983年に発表した「見栄講座」。バブル期を象徴するような本とも言われるが、シニカルにスノッブを笑い飛ばす、そのブラックなユーモアが私は好きだった。

その「見栄講座」の中に軽井沢をテーマにした一節がある。

軽井沢というのは、ブラック・ホールのような土地で、その面積は、年々加速度的な膨張を続けています。すなわち、周りの土地が何故か次々に軽井沢と名前を変えて行ってしまうのです。沓掛が「中軽井沢」になったのはまだいいとして、横川が「東軽井沢」、信濃追分が「西軽井沢」、浅間山の北の群馬県側が「北軽井沢」、さらにその北が「奥軽井沢」となるに至っては、もはや量子力学理論の助けを借りなければ、説明のつけようがありません。この分では、そう遠くない将来、高崎が「軽井沢下」、浦和が「軽井沢前」、練馬が「軽井沢入り口」と名前を変え、やがては、日本全土が軽井沢になってしまうことでしょう。

しかし、本当に「軽井沢」と言えるのは、上図に示したように、国道18号の北、旧軽ロータリーを中心とした、ほんの一区画に過ぎません。浅間山が爆発したら火山弾が飛んで来るような場所を、軽井沢と呼ぶのはやめてもらいたいものです。あなたも、塩尻湖のテニス民宿でテニスの真似ごとをして来たくらいで、「軽井沢に行って来た」と友だちに言うのはやめましょう。

トレンドは拡大解釈され、なんでもかんでもその仲間にされることがある。かつての軽井沢がそうだった。上の「見栄講座」での説明の通り、それこそ関越自動車道の(当時の)入り口である練馬が軽井沢入り口に成りかねないほどの勢いだった。

最近、その拡大解釈が著しいのが、クラウドだ。そもそも明確な定義がある言葉でもないので、言ったもん勝ちだったのではあるのだが、今は本当に、これもクラウド、あれもクラウド、たぶんクラウド、きっとクラウド*1というくらいになんでもかんでもクラウドだ。その中でも、もっともわからないのが、

プライベートクラウド

だ。

これって、「自宅でまったり、どんちゃん騒ぎ」のような言葉のねじれ連結というか、自己矛盾というかな感じではないか? 同じくバブっている「グリーンIT」と組み合わせて、「グリーンクラウド」とか誰か言い出すんじゃないか、とか思っていたら、すでにもうやっていた。しかも国が。まぁ、これは無理の無い組み合わせではある。

どうせだったら、どローカルな悪いイメージのついてしまった携帯を開き直って「ガラパゴスクラウド携帯」とか言ってみたりしたらどうだろう。んー。いまいち。

ところで、軽井沢はバブル崩壊とともに人気が低迷し、西武王国ともに再建中という感じみたいなので、絶賛売り出し中のクラウドのたとえに出すにはかなり縁起が悪かったと思うのだが、気にしないでおこう。軽井沢スケートセンターがお亡くなりになってしまったのは残念だが。

ごめんなさい。意味のないエントリで orz

*1:わかんねぇー