〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「この世界の片隅に(中)」すずは健気に生きる


【ムカゴごはん】


この世界の片隅に (中)」

周作と結婚した主人公のすずは、戦争の真っただなか昭和19年の広島に住んでいる。闇市防空壕、空襲、配給、特高、間諜、憲兵遊郭、・・・。

日常では使われないような言葉に、著者のこうの史代さんは解説を入れる。出戻りの義理姉の過去、そして、夫の過去にも話が飛ぶ。

とても難しい出来事が起きた。
幼なじみの男性がすずを訪ねてきた。夫はその男の部屋用の行火を「すずさん持ってってあげんさい…」と渡した。「ほいで折角じゃしゆっくり話でもしたらええ」と………夜なのに。「もう会えんかも知れんけえのう」と妻の背中に言う夫の思いは何なのか。

あと数ヶ月で無差別爆撃されるはずの未来に向かって、話は進む。

迷子になったすずに道を教えた遊郭に生きる女性リンは、それこそ「リン」と立っていて美しい。


下巻を読むのが恐ろしい。