【『一握の砂』表紙】
- 「見開き4首。この体裁にこそ啄木のもくろみがある」と脚注と解説を手がけた啄木研究者の近藤典彦さんは話している。
東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる
に始まる「我を愛する歌」から「手套(てぶくろ)を脱ぐ時」に至る全5章。旧字を新字に変えたほかはすべて初版本を踏襲した。
- 近藤さんは、歌の配列に啄木の砕身を見る。「第1章は、自己紹介。ページをめくるごとに、悩み事があって家をでた→海に行った→砂山でこんなこと、いろいろあった→そして家に帰ってきたと、心の百態を描いていく」
- 「夢やあこがれ、自負、失意。啄木の一生が凝縮した『一握の砂』。
はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る
など格差社会の現代日本にあって啄木歌は一層リアルだ」と近藤さん。
(2008-12-06 朝日新聞)