〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「一握の砂」発刊100年 盛岡タイムス


【生前唯一の歌集「一握の砂」】


「一握の砂」発刊100年 盛岡タイムス 特集
  世紀超えて読み継がれる歌

石川啄木の歌集「一握の砂」は、近代短歌を語る上で欠くことができない。今年は発刊から100周年。「一握の砂」の魅力とは何か、所収短歌が人々の心をつかむのはなぜか。「ふるさと」に住む人たちの心の内にある啄木を訪ねる。

  • 「空に吸われし十五のこころ」は希望 達増拓也県知事
  • 本当の心に迫ろうとした歌 啄木記念館学芸員・山本玲子さん
  • 12人の心の中にある「一握の砂」一首

北田まゆみ 汽車の窓 はるかに北にふるさとの山見え来れば 襟を正すも
工藤久徳  霧ふかき好摩の原の 停車場の 朝の虫こそすずろなりけれ
小泉とし夫 新しきサラドの皿の 酢のかをり こころに沁みてかなしき夕
佐藤静子  いのちなき砂のかなしさよ さらさらと 握れば指のあひだより落つ
谷藤裕明  ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな
中野寛次郎 ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく
野中雄太  霧ふかき好摩の原の 停車場の 朝の虫こそすずろなりけれ
船越英恵  たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず
望月善次  ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな
森義真   近眼にて おどけし歌をよみ出でし 茂雄の恋もかなしかりしか
守屋美咲  見てをれば時計とまれり 吸はるるごと 心はまたもさびしさに行く
八重嶋勲  わが恋を はじめて友にうち明けし夜のことなど 思ひ出づる日

2010-01-01 盛岡タイムス 特集)