特別寄稿 石川啄木「はてしなき議論の後」の隠されたモチーフ
——「創作」巻頭詩をめぐって——
近藤典彦(国際啄木学会元会長)
1911年(明44)6月に制作された石川啄木の「はてしなき議論の後」は三つのテキストを持つが、長詩として一の完成を見たのは同年7月刊「創作」所載の、六章からなる「はてしなき議論の後」(一〜六)のみである。この詩を一篇の長詩、一つの世界として見るならば、これを「呼子と口笛」における独立した六篇の詩として見たときとは、別の相貌を呈する。序章にはロシア皇帝アレクサンドル二世暗殺を企てたカラコーゾフの事績が秘められ、終章には同皇帝暗殺に成功したソフィア・ペローフスカヤのイメージが沈められていて、詩はその主題が皇帝暗殺に関係するものであることを暗示している。であるならば、啄木がこの詩でうたおうとしたのは日本における皇帝暗殺未遂事件すなわち大逆事件なのではないか。この問を以下に追求してみたい。
◎ 特別寄稿の近藤典彦先生の論文は、13ページにわたります。
文芸誌 『視線』はこちらで求められます。
(つづく)