〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「2011 盛岡大会」<その 5 > 国際ミニ講演<I> 林水福 啄木行事レポート

《関連イベントに参加しての私的レポート》



[北上川の夜]


<その 5 >
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国際ミニ講演<I>
  林水福(台北駐日経済文化代表処・台北文化センター長、台湾啄木学会会長)


「台日文化交流の現状 〜啄木、遠藤周作にも触れながら〜」

  • 私の肩書きは、台北駐日経済文化代表処(大使館にあたる機構)台北文化センター長。文化センターの主な仕事は、日本であまり知られておらず・人気もないが質の高い・価値のある台湾文化を日本に紹介することである。
  • 日本と台湾の文化交流としては、いくつかのイベントを行っている。今年6月には、「孫文と日本の友人たち」展を開催した。梅屋庄吉夫婦(「君は兵を挙げたまえ。我は財を挙げて支援す。」と巨額の資金を孫文の革命のために提供し、孫文が日本に亡命した際も梅屋家にかくまった)、南方熊楠大隈重信犬養毅といった日本の友人たちの資料を台北駐日経済文化代表処公邸で展示した。
  • 日本と台湾との関係は、「国境を超えた友情が今につながっている」という言葉そのものだと言える。エピソードとして、日本交流協会台北事務所で、台湾人に日台関係の調査をした。質問の一つに「自分の国を除いて、一番好きな国はどこ?」の結果、日本が1番だった。台湾は永遠に日本人のやさしさを忘れない。
  • 日本人にとって台湾文学はなじみが薄い。台湾の小説や現代詩には日本語訳されたものもあるが、量は多くない。文化センターでは早稲田大学思潮社と協力し、「台湾文学講座」を開催している。
  • 文化の違いの面では、日本人は何でも早くから企画を始め、きちんと進めていく。5年先のスケジュールを組んでいたりする。台湾では早くても2年先くらい。台湾はフレキシブルで物事を進めるスピードが速いとも考えられる。これが文化の違いだと思う。



[講演する林水福氏]

  • 遠藤周作の作品の翻訳状況について話したい。私は1986年、遠藤周作の『母なるもの』『影法師』を翻訳、出版した。そのころ、台湾で遠藤氏のことを知っている人は多くなかった。1990年、遠藤氏はすべての作品の、台湾での翻訳出版権を私に譲与してくれた。現在、台湾で遠藤周作といえば林水福が連想され、『深い河』(24刷、42,500 冊印刷された)が連想される。
  • 原作を読んだほうがいいという人もいるが、直接原作を読める人は多くない。翻訳は絶対に必要だ。
  • 私の現在の仕事の一つには、いかに台湾文学を日本に紹介するか、いかに啄木文学を異郷の地台湾で花開かせ、実らせるかがある。来年の大会は、台湾開催が決定された。啄木文学を伝えるには実によいチャンスとなる


(盛岡大会記念短歌大会表彰式につづく)