〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

ふるさとの歌 啄木没後百年・1

○ もし石川啄木が長生きしていたら――。

  • 劇作家昆明男さんは啄木生誕111年の年に、そんな脚本を書いたことがある。その「長寿庵啄木」では、貧乏で早世であるはずの歌人が病気を克服。小説で成功し、晩年には宮中の歌会に呼ばれるほどになる。
  • 北上川と中津川が合流する盛岡市清水町で生まれ育った。〈やはらかに柳あをめる/北上の岸辺目に見ゆ/泣けとごとくに〉。知らず知らずのうちに啄木の歌が耳に入ってきた。
  • 演劇は役者とともにつくり上げる。だから、思い通りになることはない。「短歌はモノローグ(独白)、演劇はダイアローグ(対話)なのよ」。啄木がもうちょっと長生きして芝居に出会っていたら、歴史に残る作品ができていたんじゃないかな。時折、そんな想像をする。
  • 今年、啄木の小説「雲は天才である」を題材に、6月上演予定の新作を執筆した。小説を読み込むと言葉の巧みさに驚く。古さは感じなかった。

◇◇
岩手に生まれた石川啄木が没してから13日で100年。わずか26年の生涯を送った歌人が、長く愛され続けてきたのはなぜか。啄木の世界にひき込まれた人々を訪ね、魅力を探る。
(2012-04-10 朝日新聞>マイタウン>岩手)