〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

国際啄木学会「2012年秋のセミナー」<その1> 啄木行事レポート

《関連イベントに参加しての私的レポート》



国際啄木学会
「2012年秋のセミナー」



[森義真 氏]


<台日文学者交流会報告> 森 義真 事務局長
2011.3.11東日本大震災復興祈念の「台日文学者交流会」が、2012年6月9日・10日・11日と岩手県で開催された。(主催:台北駐日経済文化交流処、共催:国際啄木学会)

  • 講演「文学者が見た東日本大震災」齊藤純   講演「台湾文学の現状」陳義芝
  • バス実地研修「岩手の文学の原風景を見る」(石川啄木記念館、宮澤賢治記念館、盛岡城跡公園など)
  • 「音楽を交えた台日交流」詩人・歌人俳人・ミュージシャンなどの発表
  • バス被災地(釜石市大槌町)訪問 大槌高校生徒との交流会

 
○ 交流会に参加した台湾の詩人白霊さんが、震災をテーマに作った詩を国際啄木学会の望月会長に寄せた。

その手に敬意をこめて
               白霊


岩手県の海辺で
数百の手が家に帰らないままにいる
数百の手が海という手にからめとられ
必死になって、家への帰り道をさがしている
数万の手が海に走り込み髪を振り乱してさがしている
船をこぎ海という巨大なポケットの中をまさぐっている
その手の名を呼びながら
 
数万の手が海岸で
あらたに数万のあかりをともす
名前が書かれたあかりはない
ちょうど名前が書かれた手がないように
だが海に落ちた数百の手には
それぞれのあかりの
あの数百あるいは数千度の熱さと
数十あるいは数百メートルの思いが見えている
たとえその手に名前は書かれていなくても
どの手もそれぞれの指紋があるのだ
 
数万の手が岸辺で手をふっている
数百の手も浪の合間で手をふっている
こちらの手はあちらの手に敬意を示し
あちらの手もこちらの手に敬意をしめしているのだろう
名前が書かれた手はない
けれどどの手にもすべて名前があるのだ
 
「昔の岩手県のその手に敬意をはらいます!」
岸辺のその手は言い
「新しい岩手県のその手に敬意をはらいます!」
海の中のその手は言うのだ
(横路啓子さん訳)

(つづく)