〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 関西の啄木人気の背景分析 -国際啄木学会開催-


[シンポジウム 左端司会席より 瀧本和成氏、河野有時氏、田中礼氏、木股知史氏(撮影:山田武秋氏)]


関西の啄木人気に迫る -京都で国際学会セミナー-

  • 国際啄木学会(会長・池田功明治大教授)の京都セミナーは22日、京都市中京区の立命館大で開かれた。石川啄木が生前訪れたことがない関西の地でも人々の心を捉え、深い関心が示され続ける背景を探った。京都開催は2010年の京都大会以来、7年ぶり。開会式で池田会長は「関西では1930年代から啄木を研究する人や愛好してやまない人が実に多い。どうしてなのか究明したい」とあいさつした。
  • 「〈関西〉における啄木研究/啄木研究における〈関西〉」と題した討論では、京都大名誉教授の田中礼(ひろし)さんと甲南大教授の木股知史(さとし)さんが基調報告。田中さんは首都圏に次ぐ関西の都会性を挙げ、啄木の望郷歌はそれぞれの古里への思いに仲立ちしたとした。「関西は在野の学問が盛んで清新はつらつ、活気のある自由な教育が生まれた。こういう気風から『啄木研究』が生まれてきたのではないか」とした。木股さんは1922(大正11)年に歌誌「ポトナム」を創刊し、立命館大教授にもなった小泉苳三(とうぞう)に焦点を当てた。「本質は刹那の感動を盛るもの」とする小泉の「短歌論」や、江戸時代の歌人の郷愁表現が啄木と通じる部分があることを語った。
  • 愛好者が集う「関西啄木懇話会」は80年ごろ始まり、本を出版するほど活気があったという。天理大名誉教授の太田登さんは「アカデミックではなく、平場で啄木の良さを語り合った」と補足した。
  • セミナーはそのほか、太田さんが「〈漂泊の愁ひ〉考―歌集『一握の砂』の主題再説」として発表。立命館大学教授の田口道昭さん、京都府立北稜高講師の倉部一星さんの発表もあった。(学芸部・佐藤俊男)

(2017-04-27 岩手日報