啄木の息 <ブログ版>

─ いまもなお瑞々しく語りかけてくる啄木の魅力を追い その息づかいに触れてみたい ─

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2017-09-29

[] 「矢車草 <2>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

「矢車草 <2>」

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-石川啄木の歌に登場する花や木についての資料-


矢車草

     函館の青柳町こそかなしけれ

     友の恋歌

     矢ぐるまの花




この歌は特定の人を歌ったものでなく、苜蓿社の人びとを懐かしがってのちに歌ったもので、矢車の花は函館では六月から七月に咲き、各家庭や公園などの広場に植えられ、めずらしい花でもないがかれんさが人びとに好まれている。郁雨は「そのころの日本娘を思わせるような楚々たる風情の花である、と同時に、廉価で庶民的である。私は極く薄い紅色の矢車の花を見る時、何時も節子さんを思い出すが、苜蓿社の仲間は『合歓の花』に例えて節子さんを称えて居た」という。

(『啄木の妻 節子』 堀合了輔 洋々社 昭和56年)


この歌が、広く人々に愛唱されている理由の一つには、主題は漠然とした光景でも、その環境のなかにある心情を詠んでいるということであろうが、それぞれの引き出す余情が深いこと、加えて、一つの歌曲めいたようにまとまっている韻律のよさにある。

(『啄木の歌と現代短歌』 林和三郎 洋々社 昭和54年)


苜蓿社は啄木を函館に招き、青柳町に住む場所を提供した函館の詩人たちのグループだった。啄木は青柳町の名前を歌に詠み込むことで、「青柳町」を不滅のものとした。

How I miss Green Willow Street in Hakodate !

The love-letters of my friends,

The blue of cornflowers.

新しい友人たちに囲まれて、啄木はこれまでにない感慨を覚えたに違いない。その友人たちは、啄木と詩歌の趣味を共有するばかりでなく、啄木に親しみを覚えるあまり自分の「恋歌」まで読ませたのだった。

(『石川啄木』 ドナルド・キーン著、角地幸男訳 新潮社 2016年)


昭和45年、啄木一家は「石をもて追はるるごとく」故郷の渋民村を出た。一家離散の出奔であった。知友を頼って函館に着いたのはその翌日である。啄木は函館に三ケ月暮らしたが、この地に多くの友を得て、共に酒を飲み、詩を語り、恋を語り、夢を語った。その後の啄木の人生において、この時期ほどに幸福な日の巡り来ることはない。それ故に啄木は、後に流浪した北海道を回想する歌133首を歌集『一握の砂』の中に「忘れがたき人々」として収めたが、函館を詠んだ一連の歌は啄木青春短歌を代表するものとなっている。

(『資料 石川啄木』 佐藤勝 武蔵野書房 1992年)



(「矢車草」つづく)


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