良くも悪くも漱石の高揚感が分かる作品で、その壊れっぷりが見事だと言うしかありません。

takuzemi2014-06-13

 昨日は午後の3限に文学の授業がありました。水村美苗さんの「男と男」と「男と女」−藤尾の死をテーマに話したのですが大いに楽しかったですね。私に取っても『虞美人草』はかなり気に入っている作品で、そのキメラ的な継ぎ接ぎ細工的な構成も見事だと思います。良くも悪くも漱石の高揚感が分かる作品で、その壊れっぷりが見事だと言うしかありません。この作品に付いて英文学者の高山宏氏は美文の部分を無視して読むと、あたかも『虞美人草』が一本の戯曲であるように読めると言うのですね。この作品にはあからさまな二項対立が書き込まれていることも学生諸君にお話ししました。甲野君と宗近君の二人は比叡山という高所にいて、藤尾と小野は東京にある六畳間という低所にいるのですね。この小説はロード・ムービー的な側面も持っていることもお話ししました。鉄道で大きな距離を移動することが明治の時代から始まったのですね。最後にねじめ正一さんと谷川俊太郎さんの「詩のボクシング」の前半を観て、B6の紙に感想を書いてもらって授業を終えました。
 昨日は時間に余裕が有ったので春日部回りで大宮に出ました。そごう3階のビッグ・カメラで認識革命の最新版を買ったのです。試みに「シェイクスピア・ハンドブック」の「リア王」と「ヴェニスの商人」の二項目を認識させてみたのですが、以前使っていた認識ソフトではA41ぺージ当たり5〜6個の誤変換が有ったのですが、この認識革命は全く誤変換が無いのです。今朝方はこのソフトを利用してルイ・アラゴンの『死刑執行』のデータベース作りに着手したところです。

2限は恒例のランボー読書会を相棒のFさんと楽しみました。

 2限は恒例のランボー読書会を相棒のFさんと楽しみました。かなりの量のテクストを読了したのですが、古代の神々やキリスト教の神が出てきて、日本人である私たちには背景が分からずに難解でした。残念ながら来週の金曜日には相棒のFさんが所用が有るらしく、お休みということになりました。当日は3・4年の合同コンパが予定されていて、遅い時間に私はゼミに参加して、流れに乗ってコンパに出掛けることになりそうです。
 5限の3年生のゼミまで長い空き時間が有ります。今日は演劇論と文学の残りの講義予定を考えました。シラバス通りに講義を進めるのではなく、学生諸君に意外なプレゼントができるような講義をしたいものだと思っています。時にはDVD鑑賞も良いでしょう。そんな感じで演劇論の予定を組んだら、これ以外は無いと言う流れができました。最終回までの演劇論はこれで確定です。週末に文学の方も残りの講義予定を確定させるつもりです。
 マリーズ・ブリュモンの『『星の王子さま』を学ぶ人のために』(世界思想社)の第5章「人間からユマニスムへ」の85ページから輪読しました。天職の道が邪魔されたパイロットは心の中に空虚を抱えています。18章で花びらが三枚付いた、どうということもない花が人間に付いて、こんなことを言うのです。「人間には根っこがありませんもの。それで人間はずいぶん、苦労しているんです。」と言うのです。シモーヌ・ヴェイユの「根を張ること」の大切さを学生諸君に語っておきました。最後に「ユメ十夜」のDVDとマネの「オランピア」を紹介するビデオを観て授業を終えました。最後に学生諸君の近況をA4の紙に書いてもらいました。