2010FIFA ワールドカップ 〜 最新オッズ 6月26日版(最終)

ワールドカップはグループステージ全ての試合日程を終え、本日から決勝トーナメント、ノックアウトステージがスタートします。何といっても嬉しいのは、そのラインナップに日本の名が含まれているということ。本当に素晴らしい!

12月に組み合わせが発表された直後、賭博市場のオッズは日本のグループステージ突破の可能性をどう評価しているのか書きました。その評価は開幕直前の賭博市場でもあまり変わることなく、日本の予選突破確率はおおよそ20%前後であると見積もられていました。世間を支配していた0勝3敗という極端な評価よりはマシですが、そのほとんどがアップセットの確率で説明できるような評価でした。

しかしながら、グループリーグでの日本代表、特に対デーン戦で見せた日本代表の鮮やかなプレイは、決してアップセットだけでは説明することが出来ない素晴らしいものでした。これは今後、賭博市場における日本代表の評価を大きく変えるものとなります。恐るべし本田圭佑、彼の躍進はどこまで続くのでしょうか。

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さて、ワールドカップ期間中に何度かお伝えしている賭博市場のオッズも今回が最後、ノックアウトステージに残った16カ国の優勝オッズと「ベスト4」オッズです。ベスト4は日本代表の目標でもあります。この目標と岡田監督の評価の移ろいを考えると、NIKEWrite the future は何も誇張されたものでない現実社会だったと実感できますね。未来を描け、日本代表!

優勝オッズとベスト4オッズ

優勝 ベスト4
ブラジル 4.60 1.86
アルゼンチン 6.00 2.18
スペイン 5.50 1.87
オランダ 8.20 2.78
イングランド 13.50 4.10
ドイツ 16.00 4.20
ウルグアイ 19.50 2.44
ポルトガル 26.00 4.50
パラグアイ 50.00 5.60
アメリ 42.00 3.95
ガーナ 60.00 4.80
チリ 60.00 11.50
メキシコ 95.00 13.00
日本 120.00 10.50
韓国 160.00 7.60
スロバキア 300.00 25.00

2010FIFA ワールドカップ 〜 最新オッズ 6月22日版

6月22日現在、各グループの第二試合が終了した時点での賭博市場のオッズ一覧です。予選通過( To Qualify )、1位通過( Group Winner )、優勝オッズとグループリーグでの勝ち点をまとめてあります。

残り1試合を前に既に予選敗退が確定したチームや、1位通過が不可能なチームがあります。100%確定していることを対象に賭けは成立しませんので、もはや市場もオッズも存在しません。そのようなケースは表中では "n/a" と表記してあります。また、起こり得る/得ない確率がほぼ100%という対象についてはオッズが付かない(市場こそ存在すれど取引がマッチングしない)場合もあります。そのようなケースは "-" と表記してあります。

なお、ノックアウトステージ1回戦ではグループ1位と2位同士のマッチアップとなります。優勝を狙う強豪国はそこまで計算し勝ち点を調整することもあるため、一概にチームの強さだけでオッズが決定されません。

グループA


南アフリカ

メキシコ

ウルグアイ

フランス
勝ち点1441
予選通過40.001.051.0513.00
1位通過n/a3.851.34n/a
優勝-42.0036.00190.00
ウルグアイとメヒコが引き分けに終わればフランス v 南アフリカ戦の結果いかんに係わらず予選通過となります。談合試合にならずともプレイ中に互いの空気を読み、思惑が一致しているようならば引き分けの可能性が一番高いでしょう。ただしこの大会の先を考えるならば、ノックアウトステージの1回戦が対アルヘンになるのを避けるために1位通過を狙う価値は十分にあります。

グループB


アルゼンチン

ナイジェリア

韓国

ギリシャ
勝ち点6033
予選通過-4.701.674.80
1位通過1.02n/a160.0070.00
優勝6.00520.00220.00530.00
アルヘンは予選通過がほぼ決まりました。ひげもじゃ監督マラドーナはもはや今大会のマスコットキャラクターと化していますね。残り3カ国にも全て予選通過の可能性はありますが、条件が有利な韓国が1段上の位置にあります。

グループC


イングランド

アメリ

アルジェリア

スロベニア
勝ち点2214
予選通過1.501.655.501.79
1位通過2.123.35n/a4.10
優勝12.5095.00-400.00
スロベニアはグループトップをキープ、最終節でイングランドに引き分け以上なら予選通過という条件なのですが、なお英米が favorites です。その英米は2試合引き分けで同じ勝ち点ですが、対アルジェリア戦で予定調和的に不甲斐ないイングランドと対スロベキア戦でエキサイティングな試合を魅せたアメリカは対照的でした。

グループD


ドイツ

オーストラリア

セルビア

ガーナ
勝ち点3134
予選通過1.3022.001.521.87
1位通過1.58n/a7.204.20
優勝12.00-80.00140.00
ドイツはクローゼの出場停止というお土産けまで付けてセルビアに敗れました。そのため、オージー以外の3チームが三つ巴となり、結果が読めないグループとなっています。ガーナはアフリカ勢でノックアウトに進出できる可能性のある唯一のチームになりつつあります。

グループE


オランダ

デンマーク

日本

カメルーン
勝ち点6330
予選通過n/a2.281.76n/a
1位通過1.0526.0048.00n/a
優勝10.00190.00310.00n/a
オランダが早々に予選突破を決めました。逆にカメルーンは敗退確定、ライオンの夏(現地は冬だけど)は終わりました。オランダが順位をコントロールする可能性は低いため、両者の試合は消化試合となります。日本は対オランダを敗戦こそすれど1点差に抑えたことにより、次節デンマーク戦で引き分け以上ならばノックアウト進出です。

グループF


イタリア

パラグアイ

ニュージーランド

スロバキア
勝ち点2421
予選通過1.231.067.807.20
1位通過6.601.2516.00n/a
優勝23.0042.00--
パラグアイはニュージー相手に引き分け以上で予選通過なので楽観視されています。そのニュージーは勝利こそ無いものの勝ち点2と善戦しており当初より評価を上げています。前回の優勝国であるイタリアは最終節が対スロバキア戦ということで同様に予選通過は楽観視されています。

グループG


ブラジル

北朝鮮

コートジボワール

ポルトガル
勝ち点6014
予選通過n/an/a65.001.01
1位通過1.31n/an/a3.80
優勝5.60n/a-26.00
楽に予選通過を決めたブラジルを見るに、彼らにとってここは死のグループではなかったようです。北朝鮮に勝利したポルトガルは次節ブラジル戦で引き分け以上となりました。北朝鮮は予選敗退が確定しました。試合の勝敗がおおよそ予測できる状況で、象牙海岸のカカに対する挑発はポルトガルを利する無意味な行為でした。このあたりの戦術眼や経験の差が強豪同士の明暗を分けたように思います。

グループH


スペイン

スイス

ホンジュラス

チリ
勝ち点3306
予選通過1.371.52120.001.65
1位通過1.927.20-2.92
優勝5.90200.0-50.00
チリは勝ち点6でグループトップなのですが、最終節の相手は勝利が必要なスペインということでオッズ上は underdog となっています。スイスはホンジュラス相手に勝ちを逃さなければ予選通過と有利な状況にありますが、ホンジュラスもまだ予選通過の目は残しているので楽観はできません。

2010FIFA ワールドカップ 〜 最新オッズ @0617

6月17日現在、各グループの第一試合が終了した時点での賭博市場のオッズ一覧です。6月3日版と同じく予選通過( To Qualify )、1位通過( Group Winner )と優勝のそれぞれオッズに、現在のグループリーグでの勝ち点を加えたものをまとめてあります。

新しいオッズは確率的に第1試合の結果を組み込むだけでなく、今大会における各国代表の戦う姿を披露した後ということもありチーム評価の修正分も織り込んでいきます。よってオッズの精度にもより磨きがかかっている、、、はずですが、やはり大祭典ワールドカップ、世界中が参加していることもあり普段の賭博市場とは異なる様相。昨年一年間収集した各国リーグ戦のデータに比べてオッズ(=価格)のボラティリティが高いような印象を受けてます。4年に1度しか取れないデータなので大会終了後の分析が非常に楽しみです。

グループA


南アフリカ

メキシコ

ウルグアイ

フランス
勝ち点1111
予選通過2.822.021.921.53
1位通過6.404.204.002.57
優勝196.00114.00124.0028.00
南アフリカとメヒコは開幕戦に相応しい好ゲームでした。一方、ウルグアイスコアレスドローに終わったフランスは早くもドメネク監督に対する批判があがっています。(第2試合開始前のオッズです。)

グループB


アルゼンチン

ナイジェリア

韓国

ギリシャ
勝ち点3030
予選通過1.032.401.7115.00
1位通過1.2340.005.90120.00
優勝6.80290.00158.00-
アルヘンはエインセの1点を守りきり、second favorite とされているナイジェリアから勝ち点3を得ました。予選突破はほぼ間違いないと考えられています。韓国は勝利もさることながら、その試合内容からチームの質そのものに対する評価が上がっています。ギリシャはその逆、もはや優勝オッズに値が付きません。

グループC


イングランド

アメリ

アルジェリア

スロベニア
勝ち点1103
予選通過1.101.5520.002.36
1位通過1.594.5066.006.60
優勝9.60106.00-565.00
スロベニアは現在グループ1位にも関わらず、依然英米が favorites です。ちなみにイングランドはブラジルについで過大評価されがちな国です。果たしてこのオッズは過大評価なのでしょうか?適正なのでしょうか?

グループD


ドイツ

オーストラリア

セルビア

ガーナ
勝ち点3003
予選通過1.039.605.001.30
1位通過1.29130.0037.005.00
優勝8.40825.00565.00102.00
ドイツは圧倒的な力を見せ付け勝利、グループ内でダントツの評価です。セルビアとガーナは初戦がお互いにとってグループリーグで最も重要な試合でしたが、果たして制したのはガーナとなりました。

グループE


オランダ

デンマーク

日本

カメルーン
勝ち点3030
予選通過1.052.552.055.60
1位通過1.1533.0010.5038.00
優勝10.50285.00505.00705.00
オランダがデンマーク戦に勝利し、更にカメルンの不甲斐なさを見て一抜けといった感じ。日本はカメルン戦を勝利したことにより second favorite へと躍進しました。しかしながら予選突破にはもう一押しが必要です。日本のノックアウトステージ進出を期待!

グループF


イタリア

パラグアイ

ニュージーランド

スロバキア
勝ち点1111
予選通過1.111.2413.003.50
1位通過1.703.2048.009.80
優勝17.00124.00-920.00
初戦は2試合とも1-1の引き分け。全チーム条件は変わりません。選手に銀行員がいると揶揄されるニュージーランドに負けたスロバキアの評価は下がっています。

グループG


ブラジル

北朝鮮

コートジボワール

ポルトガル
勝ち点3011
予選通過1.1513.501.931.71
1位通過1.48215.006.205.10
優勝6.60-48.0034.00
注目の死のグループです。強豪同士の対決、象牙海岸 v ポルトガルがドローに終わったため、まだ今後の展開が掴めません。ブラジルは勝利したものの、ポルトガル象牙海岸を残しているので安泰ではありません。また北朝鮮の奮闘振りは更なる混乱を予感させます。

グループH


スペイン

スイス

ホンジュラス

チリ
勝ち点0303
予選通過1.361.3817.001.56
1位通過3.302.38200.003.50
優勝6.60170.0-64.00
優勝候補筆頭のスペインがまさかの黒星スタートとなり、ホンジュラスを除く3チームの三つ巴となりました。キーとなる試合は第3試合のスペイン v チリでしょう。

「ジャパン」が勝った!

日本大勝利!!!本田が決めてくれました。いや〜素晴らしい。8年ぶりの大興奮でした。

しかし、連日連夜、世界各国を代表する選手たちが行う「ガチ」の試合を観戦できるとはこの上ない幸せ、ワールドカップはまさに4年に1度の大祭典であると思います。その興奮はおそらくその昔、ローマ時代にコロッセオで剣闘士の戦いを観戦するローマ市民が得たものに匹敵するのではないでしょうか。剣闘士の栄光と苦悩も同等かもしれませんが。

サッカー経済学

さて、先週末に Freakonomics で紹介されていた本を読んだのですが、これが非常に面白かった。本の名は、「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理アメリカでは "Soccernomics" というタイトルで出版されているようです。サイモン・クーパー(サッカージャーナリスト)とステファン・シマンスキー(経済学者)がタッグを組み、経済学的手法でサッカーを分析するという試みです。彼らによって今までサッカーの常識とされてきた様々な事柄が覆されていくのですが、その中で特に面白かったPKにまつわる話を紹介してみよう、、、と思っていたのですが、それは次の機会に回し今回は日本の勝利を味わいたい。

勝てない理由

日本版の出版にあたり新たに『「ジャパン」はなぜ負けるのか』という章が加筆されています。なぜ勝てないのか、その理由としてよく挙げられるのは、曰く、組織としては機能するがゴールには消極的な日本人の民族性である、中盤でのパス回しは得意だが責任が重いフォワードは避けがちな日本文化である、そもそも体格の差が大きい、など多分に属性的なものになりがちです。しかし、実は文化はもっと柔軟なもので数ヶ月で壊せるものであり、体格の差は思うほど大きくない、とクーパーは言います。そして真の原因はヨーロッパで強豪同士が長年切磋琢磨して築き得た円熟に接することが出来ないからだ、と主張します。つまり巨人の肩に乗っていない、と。

この論には非常に説得力があります。なぜならばヒディンクという名将が実際に韓国、オーストラリア、ロシアと立て続けに3カ国を大舞台に押し上げたからです。彼のやったことはまさに凝り固まった文化を破壊し巨人の肩の上からピッチを望む状況を作り出すことでした。そして彼の率いた全てのチームが、各々の大会でそれまででは考えられないような成績を残したことは周知の通りです。

巨人の肩から

一個人が巨人に打ち勝つことは出来ません。巨人と戦うにはこちらも巨人の肩に乗るしかないのです。では巨人の肩に乗るにはどうすればよいのでしょうか?クーパーは方法は極めてシンプルだと言います。 1.経験豊富な(つまりはユーロ圏の)チームと数多くの対戦 2.経験豊富なチームでプレイする選手 3.経験豊富なチームを率いるような監督、この3つのどれかから学ぶだけです。日本はそもそも地理的にユーロから離れてしまっているために国際試合経験の質と量も限られ、監督やクラブとの人脈も築きにくい状況にある。今まで結果が出せなかった理由はただそれだけのことなのです。

そして今回、日本の凝り固まった文化を破壊し、変化させ、巨人の腰あたりまで登ってこれたのは、間違いなく本田圭佑のおかげでしょう。本田は得点を決めたから素晴らしいのではありません。彼の功績はユーロで築かれた群集の叡智を日本に持ち帰り、皆に広めたことなのです。

クーパーは日本やアメリカや中国はその国力から大きな潜在力を秘めていると分析しています。そして群集の叡智を取り込むことができれば2050年までにワールドカップで優勝できない理由は無い、と結論付けています。*1

2010年南アフリカ大会は始まったばかり。今後の試合も期待しています。頑張れ、日本代表。

*1:2050年までの優勝は日本サッカー協会が掲げる目標である。

2010FIFA ワールドカップ 〜 グループリーグ オッズ一覧 @0603

各国23人の代表選出が終わり、いよいよ本番直前です。まずはどの国がグループリーグから勝ち上がってくるかが注目されます。今回は6月3日現在、各組それぞれの予選突破のオッズをまとめた一覧です。

賭博市場には予選通過( To Qualify )と1位通過( Group Winner )、それぞれ別々のマーケットが開かれています。ワールドカップではグループリーグ2位までが次の決勝トーナメントに進出できるので、当然1位通過とはオッズが異なるわけです。近年はサッカーニュースでも「ブックメーカーのオッズ」が紹介されることが多いのですが、両者を混合して1位通過のオッズが予選突破のオッズとして報道されることも多いので注意が必要です。

予選通過、1位通過に加え一応大会優勝のオッズも表示してあります。「ブックメーカーのオッズ」としてはこれが一番話題になりがちですね。しかしながらこの優勝オッズ、以前のエントリに紹介した高配当選好(ロングショット・バイアス)のみならず、国際大会ということで刺激されるナショナリズムもあり、相当のバイアスがかかりがちです。個人的にはこのオッズの数字はあまり真に受けず、その確率的な意味合いは他のオッズと比べて薄くなると考えて差し支えないかと思います。*1

グループA


南アフリカ

メキシコ

ウルグアイ

フランス
予選通過3.002.002.101.35
1位通過7.504.555.002.00
優勝181.00111.00161.0021.50
賭博市場の判断は、フランスが1位通過、2位の座をメヒコとウルグアイで競い、南アフリカは最下位であるとなっています。南アフリカはアフリカ大陸初の開催という栄光を手にした反面、ホスト国初の予選敗退という不名誉を背負ってしまうのでしょうか?

グループB


アルゼンチン

ナイジェリア

韓国

ギリシャ
予選通過1.122.003.652.50
1位通過1.456.0514.009.65
優勝7.65176.00251.00251.00
メッシはじめ多くのタレントを擁するアルヘンが大本命、2位の座をナイジェリア、ギリシャ、韓国で争う展開が予想されています。しかしながら、クレイジーレジェンダリー、マラドーナ監督の南米予選での迷走を見るに、終わってみるまでどうなるかは分からない混戦グループのひとつでしょう。

グループC


イングランド

アメリ

アルジェリア

スロベニア
予選通過1.071.704.852.88
1位通過1.336.0022.0014.00
優勝8.0091.00751.00551.00
イングランドが大本命、その後をアメリカが追います。両者が激突する緒戦の結果がこのグループの行方を左右することでしょう。

グループD


ドイツ

オーストラリア

セルビア

ガーナ
予選通過1.203.351.822.40
1位通過1.909.804.886.00
優勝17.00176.0068.00151.00
ドイツが本命でその後をセルビアが追うという予想ですが、そのドイツもバラックを欠く事となり戦力低下は間逃れません。セルビアの強さもさることながら(4月、我々はその3軍に翻弄された)、オージーやガーナも十分に予選突破の力を持つ国です。

グループE


オランダ

デンマーク

日本

カメルーン
予選通過1.162.004.202.05
1位通過1.605.5018.506.05
優勝12.00176.00801.00126.00
オランダが本命、2位をデーンとカメルンで競うだろうと予想されています。我ら日本は1段下の評価。しかしながら、スポーツ観戦において最も興奮するのは事前の下馬評を覆したとき。ぜひともその「一番の爽快感」を期待しています。頑張れ日本代表!

グループF


イタリア

パラグアイ

ニュージーランド

スロバキア
予選通過1.101.5313.002.25
1位通過1.534.20100.008.55
優勝17.00111.002501.00501.00
前回2006ドイツ大会の覇者であるイタリーが本命で、対抗がパラグアイ、それをスロバキアが追う形です。初参加のニュージーランドは完全に思い出参加扱いにされています。

グループG


ブラジル

北朝鮮

コートジボワール

ポルトガル
予選通過1.1125.001.831.70
1位通過1.62144.005.304.80
優勝5.802501.00411.0031.00
今大会の「死のグループ」がここ。ブラジルが大本命であるものの、コートジボワールポルトガルも世界的に活躍する多くのタレントを抱えており、決してブラジルに見劣りするものではありません。最後まで目が離せない大混戦グループ。

グループH


スペイン

スイス

ホンジュラス

チリ
予選通過1.052.626.801.70
1位通過1.2515.0057.006.50
優勝5.50301.002501.0081.00
ユーロ2008の覇者、スペインが大本命です。優勝オッズも参加32カ国中トップ。2位をチリとスイスが競うという予想がされています。

*1:例えば150倍ではなく151倍というように区切りが悪いのは、他のブックメーカーより少しでも良いオッズを提供する姿勢をアピールしたいというマーケティング的要因による。

またもや秀逸なNIKEのビデオ、Write the Future

ワールドカップを目の前にして新しく発表されたナイキの新しいプロモーションビデオが面白い。その名も"Write the Future"。

キーパーをかわしたドログバから打ち込まれた得点確実と思われたシュートをカンナバーロが素晴らしいプレイで防ぎます。実は、そんな素晴らしいプレイも、成功の暁に国中から英雄と称えられる自分の姿をニヤニヤと想像するという、一見下品な欲望から生まれたものかもしれません。ロナウジーニョが魅せる華麗なステップも、 facebook で like ボタンを押されまくり、 youtube で大量の動画がアップされ、世界中から褒め称えられたいという欲望がなせる芸術なのかもしれません。(残念ながら彼はワールドカップは出れないけれどね。) ロナウドに至っては、その功績がイケメン俳優*1により映画化、あげく自らの巨大な像が立てられることを夢想しながらフリーキックを蹴ります。


特筆すべきはやはりウェイン・ルーニーのパートです。舞台はワールドカップであろうイングランド v フランス。試合終了間際にルーニーから出されたウォルコットへのパスはリベリーにカットされます。その瞬間ルーニーが想像する将来がすさまじい。このプレイが原因となってイングランドはフランスに敗退、冷え込んだ国内の空気は株価の暴落をももたらし、ルーニーは完全に戦犯扱いとされます。サッカーの選手生命すら絶たれ、今やキャラバンに住むグラウンド整備員。それでもサッカーに関係している仕事をしているのがまた泣けます。そんな人生どん底のひげもじゃルーニーがふと外を見上げると大きな看板でフランスを背負って誇らしげに両手を広げるリベリーが・・・*2

我に返ったルーニーは、そんなみじめな人生は嫌だと、必死に走りリベリーからボールを奪い返します。そのあと夢想する成功の果実がまた面白い。「Just ROO it!」*3と書かれた新聞を投げつけるセスク、イニエスタ、ピケを見るに、おそらく最終的にスペインを破って優勝したのでしょう。なんと、果たして、ナイトの称号を授与されます。沸き立つイングランド国内の株価は上昇し、新生児の名前は皆ウェインという始末。特にその後の卓球は間違いなくこのビデオ中で最高のシーンです。*4

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私はこういう下品なインセンティブが大好きです。「あなたが思い描く未来に高級も低級もない、それに向かって突っ走るだけだよ」、"Write the Future" にはそんな意味合いもあるのかもしれません。

*1:友人から「欧州ではロナウドはブサイク扱いだよ」なんて話を聞いたことがあるが、この"夢"を見ると本当にそんな評価が多いのかもしれない。ちなみにイケメン俳優はガエル・ガルシア・ベルナル

*2:イングランドの国旗をボディペイントしたルーニーが力強く両手を広げるNIKEポスターが実際にある。(ビデオの中でも頭に来た若者が引き裂いている。)それを丸ごとフランスのリベリーに取られたというわけ。

*3:もちろん、これはNIKEの"Just do it"から。その前の"England in ROO-ins"は"in ruins"=「台無し」という意味。

*4:対戦相手はなんと現役テニス選手No.1のロジャー・フェデラー

なぜ宝くじの価格はそんなに高いのか?

宝くじはギャンブルの中でもプレイヤーに最も不利である(胴元に有利である)ゲームのひとつです。日本の宝くじを見ると売上の45.7%しか払い戻されていません。(参考: 宝くじ1枚の中身|財団法人日本宝くじ協会) 私は今までギャンブル全般において、一見ネガティブに見えるゲームが驚くようなアイディアやスキル、または偶然の機会によってプレイヤーにポジティブとなるケースを数々見てきました。しかしながら50%超というハウスエッジは、どんなスキルやチャンスを以てしても、おそらく打ち勝つことができない大きな壁であると思われます。

ハウスエッジとはすなわちギャンブルという商品の価格です。だから商品の供給者であるカジノ側はなるべく高く売りたいし、消費者であるプレイヤーはなるべく安く買いたい。そして需給が均衡するところで価格が決定される、はずです。ところが実際は購入するのは愚か者だけだと罵られるほどの高い価格となっています。なぜ、宝くじという商品の価格はこれほどまでに高いのでしょうか?

市場の独占

日本の場合はなんといってもこれが一番大きな要因です。改めて独占市場の弊害を述べる必要はないしょう。

モラルや価値観の論議はさておき、宝くじを買いたいという需要は決して無くなることはありません。いくら規制してもアングラ化するだけです。ブラックマネー市場を産み出すくらいならいっそ政府が管理して運営する、というのもひとつの案でしょう。しかしながら政府の管理運営⇒失敗という構図は、歴史を振り返るとさして珍しいものではありません。1年で1兆円超の売上がある宝くじ、運営が失敗しているとは言いませんが、例えば上に紹介した宝くじ1枚の中身にある印刷経費や売買手数料の14.2%=1400億円という数字を見ると、もう少し効率的な運営方法があるのでは?と思ってしまいます。

供給側からみた価格

では競争市場の下では、もし刑法187条が撤廃され誰でも宝くじを発行できるようになったとしたら、宝くじの価格=ハウスエッジは下がるのでしょうか?下がることは下がります。おそらく、10%以下は実現可能でしょう。しかし、他のギャンブルと比べると依然としてハウスエッジは高いままであると思われます。なぜでしょうか?まずは供給サイドであるカジノ側の事情を見てみましょう。

これは、カジノゲームそれぞれの時間あたりのプレイ回数、ハウスエッジ*1、$100ベットした場合の収益です。

Game round/hr house edge return/hr
Baccarat 72 1.20% 86.40
Craps 48 1.58% 75.84
PaiGow 30 1.65% 49.50
Spanish21 75 2.20% 165.00
Roulette 38 5.26% 199.88
BigSix 10 15.53% 155.30

ゲームによってハウスエッジや時間当たりのプレイ回数にはかなりの差があります。もちろん価格が高ければ需要が減少するのですが、需要を固定した場合に価格と時間当たりの収益は比例しません。例えば PaiGow はより価格の低い Baccarat より儲からない。理由は明白で時間当たりのプレイ回数、すなわち回転数に差があるからです。安い価格とは、回転数によるカバーつまり薄利多売構造の上で成立しており、宝くじのような1時間に60回70回の回転が実現的でない商品の価格は高く設定せざるをえないのです。もちろん、カジノが価格戦略はもっと複雑でこの他にも消費者の選考など様々な要因を考慮しています。回転数はその中のひとつに過ぎませんが、重要な要因のひとつでもあります。

消費者からみた価格 〜 ロングショット・バイアス

消費者であるプレイヤーはこのギャンブルという商品の価格=ハウスエッジをどう捉えているのでしょうか?実は消費者は効用に対するコストという認識はあるのものの、必ずしもその価格を正しく評価しているわけではありません。その一例がロングショットバイアスです。

ロングショット・バイアス( wikipedia )とは Favorite-Longshot Bias とも呼ばれ、競馬などのギャンブルで古くから観測/認識されている、本命( favorite )を過小評価する一方、大穴( longshot )を過大評価してしまうというバイアスです。このバイアスにより本命のオッズは本来あるべきオッズより高いオッズに、大穴のオッズは本来あるべきオッズより低いオッズとなります。例えば競馬を例にとると、本命のオッズは割安で大穴のオッズは割高になりやすい。実際に競馬で、(1)本命馬券のみを購入する、(2)ランダムに馬券を購入する、(3)オッズが100倍以上の馬券のみを購入する、この3つの買い方を繰り返すとそのパフォーマンスはきれいに(1)→(3)の順になるそうです。*2

この原因は2つ考えられています。ひとつはプレイヤーは risk lover であり、彼らのより高いリスクを好み、より高いオッズが好むという合理的な行動の結果であるという仮説です。もうひとつは行動学に基づく仮説です。確率に対する勘違い*3であったりプロスペクト理論ウィキペディア)で説明されるような心理的影響に左右されているという仮説です。行動経済学の研究が盛んになった近年では後者の仮説が有力とされています。*4

いずれの説であれ、結果として高いオッズは好まれやすく高い需要があることになります。つまり価格は高くなる。実はカジノはこの消費者のもつバイアスを、行動経済学が注目される遥か以前から、経験的に知っておりそれを exploit してきました。傾向としてカジノは高いオッズ、高配当が設定されたギャンブルゲームのハウスエッジは総じて高めに設定しています。そして宝くじのオッズの高さと言えば間違いなくギャンブルの中でトップクラスです。結果、宝くじのハウスエッジ=価格はどうしても高くなってしまうのです。

より安い価格を

以上、宝くじというギャンブルの価格が高くなりがちな理由を述べましたが、ではより安く商品を手に入れるにはどうすればよいのでしょうか?その方法は他と変わりません。バイアスに惑わされずに、他と比較をすることです。賢くなければならないのです。ということで、今回は前々回のエントリに対するカウンターパートとしてこのようなエントリを書きました。ギャンブルをすることは愚かではない。しかし、するならば賢くあれ。

*1:カジノから見た平均的なハウスエッジである。かならずしも固定された値ではない。

*2:必勝法ではない。このバイアスがハウスエッジを捲れるからはまた別の話。

*3:小さい確率の差はあまり気にしない、例えば「10%と20%の違いは気にするが0.01%と0.02%の差はあまり気にしない」という傾向がある。

*4:参考:Explaining the Favorite-Longshot Bias: Is it Risk-Love or Misperceptions? ⇒PDF