タマさんのお部屋(跡地)

嫁に行く前の黒歴史と化したぶろぐ

万能薬

 私の庭に宇宙人の円盤が着陸したのは、約一年前の事だった。
 彼らは、自分の母星が崩壊することを事前に予知し脱出してきたそうだ。
 何年も住めそうな星を渡り歩き(?)やっと住めそうな地球に辿り着いたと言っている。
 高等生物の宇宙人が、テレパシ―を用いて語りかけてきたのは尤もなことだ。
 彼らは極めて紳士的に地球に住み着いてよいか尋ねた。
 私の独断でそんな事を決められる筈はないが、職業意識が出て『私が、あなた達の地球における影響を調べてからお答えしましょう』と答えた。
 私はある製薬会社の研究員である。
 新しい製品の毒性とか、副作用はあるか無いか種々様々の実験を行なうのが主な仕事である。
 その結果私の開発した新薬が発売される事となったのは三ケ月前のことである。
 その薬の効能書はただひとこと――総ての病原体及び遺伝・精神的疾病等――と書いてある。
 ひょっとしたら切り傷にも効くかもしれない。
 何しろ効能は無限大、実験して効かなかったのは何もない。
 恋の病まで直ったのは嘘みたいだった。
 莫迦も死なずに直る。
 この薬の製法はあの宇宙人から伝授されたのでは決してない。
 但し、彼らを錠剤の中に生きたまま封じ込めて売り出しただけである。
 彼らはミクロン単位の身長を持つ宇宙人で、主食は病源体・リケッツチア等、病気を食べる。
 副食として不平・不満を食べる。
 こうして地球全体総ての病気・鬱憤・喧嘩はもちろん戦争もなくなり平和となった。
 地獄という単語は辞書からは抹殺され天国となった。
 宇宙人は飢餓状態となった。
 そして私の大失策が表出したのは一週間前の事である。
 宇宙人は間食をとるのだった。
 今までそれがなかったのは主食と副食のおかげであった。



 宇宙人の間食は命だった。