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2007-08-01

[] 借金よりもアクセスで破綻(借金時計)  借金よりもアクセスで破綻(借金時計)を含むブックマーク


 http://www.mof.go.jp/oshirase.htm

 うはぁ! ネットイナゴ(オレ田中も含む)の殺到の前にもろくも崩れたか 笑。せっかく借金時計の馬鹿らしさを題材に何か書く予定でしたが、僕はいまADSL回線が故障でみれないので、電話回線だと重くて重くてたどり着けませんでした。ちらっとでもみたかったなあ。


 しかし財務省安倍政権の窮地につけこんであこぎなプロパガンダをしますね。

[] アメリカとは違う経済モデルは可能か?  アメリカとは違う経済モデルは可能か?を含むブックマーク


 著名な経済学者オリビィエ・ブランシャールがヨーロッパ経済モデルについて簡潔な論説を書いていました。ヨーロッパ型の経済モデルの特徴は、経済的効率性と寛容な社会保険制度を完備していることです。いまある経済モデル(一番近いのはオランダ経済)の特徴を取り入れながらも、ブランシャールの理想形態といえるものになっています。


 その全体構想は、1)競争的な財市場、2)労働市場における保険制度、3)積極的なマクロ経済政策、から成立しています。これらの特徴は今日の日本経済のあり方を考える上でも示唆に富むと僕は思います。


1)について。90年代以降のヨーロッパでは経済部門間での資源再分配が急速に進んでいて、なおかつその再分配は経済全体の生産性を増加するのに貢献している。つまり衰退産業から成長産業への資源の移動が増加している。もちろん人的資源の再分配に焦点をあてても、職の喪失などの「痛み」が存在する可能性がこの再分配過程には起こりうる。そこで2)が重要。


2)「労働者は保護するが、仕事は保護しない」=社会保険制度の核心。これは先にスティグリッツの発言を引用したことがありますが、それと趣旨は同じです*1。しかし現状のヨーロッパではむしろ仕事の保護が先に来てしまっている。


 ブランシャールは、フランスなどに典型的にみられる支払給与税を利用した様々な労働者保護制度ではなく、米国のレイオフ制度(先任権や退職に当たってそれから企業が得る利益を労働者に還元する解雇手当みたいなもの)を推奨しています。そしてフランスなどで採用されている労働監督官の解雇に当たっての許可制限の緩和が、米国的なレイオフ制度を参考にすることで実現されることを狙っています。


 もちろん労働者を保護し、資源の再分配をスムーズにするには、適切なマクロ経済政策の適用が求められる。これが第三の柱。


 ブランシャールは、今日のヨーロッパ経済圏について診断もしています。90年代半ば以降、EU15カ国の生産性は低迷していますが、ブランシャールはこの生産性の低迷は深刻な構造的要因(市場の崩壊みたいなもの)ではなく、主に各国政府の産業保護によるものである、と先の1)の裏返しとして指摘しています。


 また労働市場改革については、イタリアフランスのような労働規制の厳しい国(労働者を保護するというよりも仕事を保護しているような規制、雇用の流動化を妨げるコストを労働者自身が結果的に蒙っている国)は、オランダデンマークのような、先の2)の特徴を踏まえた労働市場の特徴を実現することができるかどうかは、ブランシャールは悲観的なようです。フランスでの若年雇用の規制緩和に伴う近年の暴動などが念頭にあったかもしれません。本論文では発表時期の関係でふれてませんが、雇用規制の大幅な撤廃を狙うサルコジ政権への評価はどうなのか知りたいところです。


 また雇用関係における「信頼」をブランシャールは重視していて、これは日本でもかって有効に機能したといわれる労使間の所得政策が失業率の改善に貢献すると彼は考えています。しかしこの「信頼」は他国の制度にそのまま移植することは不可能だ、というのがブランシャールの見解です。この労使間の「信頼」の経済的役割については、僕も以前に『日本型サラリーマンは復活する』で書きました。

 ヨーロッパの財市場の改革には楽観的で、労働市場の改革にはやや悲観的なのがブランシャールの見解なのですが、ヨーロッパモデルの第三の柱である積極的なマクロ経済政策についてはどうかというと、ここでは共通通貨ユーロ圏が事実上の「足かせ」になっている、とブランシャールは考えているようです。


 たとえばロバート・マンデルの最適通貨圏の理論では、最適通貨圏の範囲は生産要素の移動が十分に保証されていることを基準にしていました。この労働や資本の各国の移動が十分に統合されていることで、各国へのなんらかのショックが襲ってもそれを生産要素の移動によって調整する、というわけです。


 しかし今日のユーロ圏はもちろんこのマンデルの理論的形態とは異なります。金融政策をユーロレートの維持に割り当てているプラス生産要素の調整は不完全(労働市場の硬直性など)なので、不況に対応するには積極的な財政政策の出番しかなくなる。もちろんいわゆる構造改革で生産要素価格の伸縮性を増すことを狙うことも考えられますがなかなか難しい。


 ブランシャールは先の論点を踏まえて、労使間が交渉も重視して「信頼」関係の構築を目指すことも(困難を認めつつも)重要だ、というのがブランシャールの強調点でしょうか。ユーロという「足かせ」を否定しないかぎり、ここでのブランシャールが実現可能だと提起しているヨーロッパ型モデルの要は、この第三の柱である積極的な財政政策とまた労使間の所得政策ということになるか、と思います。


 もちろん日本では、共通通貨制度を採用していないですから、この足かせはフリーのはずですが(実際には円の足かせがいまも効いています)、財政ならぬ積極的金融政策がキーになるのでしょう。


ブランシャールの論文

IS There A Viable European Social and Economic Model

July 2006


http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=916606

*1:「日本の保護主義の真の問題は、日本が個人としての勤労者を保護するのではなく、多岐にわたる脆弱な産業を保護していることにある。日本の課題は、効率の高い製造部門とその他の部門との間の格差だ。日本は、競争を促す規制をより導入すべきであり、競争を妨げる規制をより緩和する必要がある」。