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2009-02-15

[]露骨な富裕層優遇よりも政府紙幣が嫌われる理由とは? 露骨な富裕層優遇よりも政府紙幣が嫌われる理由とは?を含むブックマーク

 『週刊東洋経済』を一日早く読んでいるんだけど、今回の特集は「土壇場企業」。さて注目すべき記事は四つで、ひとつはミニ特集だけど児童の貧困などの身近な問題ルポ。河野龍太郎氏の経済を見る眼は日本はもう長期大停滞に入った、というもの(僕は基本的にずっと入っていると思ったんだけど)、ケネス・ロゴフの「そんなに悲観的なのもいかがなものか」という話、そしてライターの福永宏さんの政府紙幣反対論になる。


 福永さんの記事の詳細は読んでいただくことにして、政府紙幣の反対の根拠がこの記事には総ざらえであり、基本的に過去の昭和恐慌期のリフレ政策の思想をそのまま継承している政府紙幣発行にこれほど拒否とは、知人の福永さんが書いたものとはいえ、東洋経済としていかがなものかと小一時間。

 この福永さんの反対論の根拠も要するに、政府紙幣の発行が、法律で禁止されている日本銀行国債引き受けと同じである、というものであり、それが禁止されているのは、財政規律の喪失と通貨の信認の下落である、というものである。

 まず話の前提として、政府日本銀行の二種類の紙幣が市中に流通することが問題なので、日銀が経由し(ここで福永論説だと日銀のバランスシートの問題が発生するらしい)て流通することが大切らしい。まず簡単にいうと、二種類紙幣が流通しても問題はないと考える。額面の工夫、デザインの工夫、さらには材質の工夫(その昔、高橋さんはプラスティックマネーの発行を唱えた)でもいいだろう。そうすると福永論説の(僕にはよく理解できない)日本銀行を経由する必要はなくなる。終り。


 だがどうしても日本銀行のバランスシートの問題にしたい勢力もいるだろう。そこで福永論説をさらに拝見すると、

1)政府紙幣国債引き受けよりもさらに悪い。なぜなら市中売却ができないから。 →日本銀行政府が協調できているはずなので(そうでないわけは議論の前提からありえない)、不況脱却後に、バーナンキのボンドコンヴァージョンと類似のアコードを結べばよい。http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080910#p1

2)運用益のない資産をもつのに等しいので日本銀行のバランスシートが毀損して円の信認落ちる → 円の信認が落ちるというのはだいたいこの種の論者はインフレになるのと同じことを意味している。しかし政府紙幣発行は、デフレないしデフレ懸念経済インフレにする政策であるからそもそもそれでいいわけである。急速なインフレが怖いのならば(その理論的・現実的可能性はほとんどないが)、前記のアコードとともにインフレ目標を設定すべきである。さらに運用益のない資産でありなおかつバランスシートが毀損するならば、それは民間のあまりよろしくない資産を購入するのと同じであるが、それもFRBなどが考慮しているように僕は行う根拠があると思う。いずれにせよ、この反対は、いわゆる岩石理論(積極的な緩和政策をするといままで斜面で止まっていた岩石がいきなり猛スピードで転がりだして斜面の下の住民を押しつぶす=デフレからハイパーインフレへの一挙ジャンプ)と同じで、単なるデフレないし不況脱却の責任をとりなくない、という理由に等しい。

3)政府紙幣発行益は将来の日本銀行の利益を、政府が発行時に先取りするに等しい。これが理由がよくわからないが、確か運用益がでない資産の話だったのに将来はでるということになっている。う〜ん、よくわからないけれども、もし3)のようならば、まさにボンドコンバージョンの設計でこの種の議論は回避できるだろう。どうもこの理由で政府の歳入を将来増やさないといいたいらしいが、でも不況を脱却できれば、税収も増えるわけで、要するにこの種の根拠も、よくある景気回復したら税収よりも国債の利払いの方が「絶対」にはるかに上回るので、名目成長率の伸び(=国民の懐が暖まるの)は百害あって一利なし、という与謝野路線と同じイデオロギーなのであろう。中途半端な景気回復期を経験したのでわかるが、低い成長への回帰でも税収は飛躍的にのび、国債残高の伸びは抑制された。いま成長が下方屈折して税収の大減少が問題であり、この種の議論はいったい何をしたいのかよくわからない議論の典型である。つまり成長しないでいい=デフレ放置と同じであろう。


 ところで無利子非課税免国債だかなんだか、というのはsvnseedsさんがここhttp://d.hatena.ne.jp/svnseeds/20090213#p1で書いているように、ただ単なる富裕層への優遇措置でしかないわけだが、なぜかそれへの批判はネット以外ではみかけない(あるのかもしれないが)。そして政府紙幣発行については、要するにいままでのデフレバイアスにみちた財政再建派と日本銀行理論をもとにした反論であり、それは国民全般の利益優先よりも、日本銀行のバランスシートの健全化自体の目的化(バランスシートを「悪化」させないと景気回復ができないのに! →各国中銀をみよ)、財務省国債利払いへの根拠なき恐怖症(景気が悪化していけばさらに恐怖は高まるのに!)をもとにしていて、そのイデオロギーをそのまま引き継ぐものであろう。


 ちなみに金利引き上げを待望する層の支持を、日本銀行財政再建派は毎度利用しているが、この無利子非課税国債もまた、たいして相続税を払う心配のないお年寄りたちの広汎で(僕には完全に不合理と思えるけど…だってお年寄りの大半は大して相続税をそもそも払わないから。これは大して貯金がない人たちが金利上げを求めるのに似ている)根強い支持をうけそうな気がする。それは単に現役世代との格差をさらに深刻化させ、また同時に富裕でないお年寄りの生活も困窮させると僕は思うけど。

 政府紙幣反対、無利子非課税国債のスルーは、ちょっといただけない。

 あとこれは別に積極的に主張したいわけではないけれども、もし政府紙幣の20兆円発行という高橋案が「怖い」「責任とりたくない」という人が多いのならば、地域を限定して、額も数百億から数千億のレンジ(額は地域の規模などでいかようにもしていいから)で政府紙幣の社会実験(政府紙幣を利用した減税や社会保障減免など、あるいは政府紙幣を裏づけにした当該地域住民への給付金)をしたらどうだろうか。それをみてから効果と弊害の議論をしてもいいのではないかなあ(本当はそんな悠長なこといってられないから政府紙幣発行なんだけども)。僕ならばその実験の当該地域にいたいけどね 笑。

nao1997nao1997 2009/02/15 13:24 でも政府紙幣で過去成功した例がありまが・・・。

kaikajikaikaji 2009/02/15 18:00 >地域を限定して、額も数百億から数千億のレンジ(額は地域の規模などでいかようにもしていいから)で政府紙幣の社会実験(政府紙幣を利用した減税や社会保障減免など、あるいは政府紙幣を裏づけにした当該地域住民への給付金)をしたらどうだろうか
 中国でまさに先手を打った大々的な社会実験が行われていますね。それこそ中国に調査団でも派遣してから効果と弊害の議論をしてもいいのではないかとマジに思います。
http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20090214

まぐまぐ 2009/02/15 21:17 面白い話をみつけました。
http://homepage3.nifty.com/hougyokudou/newpage35.htm
>この頃の惨状はまだ記憶に新しい所であろうが一口に言って恐慌そのものであった。その原因は岩戸景気の反動で、
(一)投資価値の減退
(二)株式需給バランスの破壊
(三)証券業者の不況抵抗力の喪失等が絡み合ってきたと考えられる。
> この時、田中角栄氏に資金枠2千億円と言ったら「なかなかうまい事を考えたね、1兆円か2兆円をつくれよ」と言われ田中角栄独特の角栄節が飛び出し即決決断されたたのである。宇佐美新日銀総裁からは「今回が最後の対策のカネだ、これは証券会社救済ではなく公共目的のカネだ、市場は自律価額にもどってほしい、業界はここで体質の改善をしなきゃいかん。
>しかも表向き日証金の借り入れ資金としていたが、その背景は総て日銀資金であったので「鬼に金棒、渡りに舟」最強の味方の後ろ盾での出発である。しかも業界プロの機関誕生である。 
>過剰株式の吸い上げはすべてバイカイをつけるいわゆる「肩代わり」で2327億円強を一気に吸収したのである。
>日銀の特別融資の実施やそれに符節を合わせるように引き締め政策の大転換が発表され反騰相場の舞台装置が絵に書いた様に形成されて来たのである。そしてこれを期に保有組合の使命は完全に大成功の偉業を歴史に残し、経済大国ニッポンに躍り出たのである。

tanakahidetomitanakahidetomi 2009/02/16 00:20 >nao1997さん。前もこのブログで紹介しましたが、大恐慌期のルーズベルト政権の1933年に。そして福永さん自身が認めているように原理的に日銀の国債引き受けと同じであるならば昭和恐慌期に。ともにデフレ脱出のレジーム転換に貢献しました。

>kaikajiさん。僕もそのエントリーを拝見しまして、やはりこういう機敏性と大胆な実験的手法は、中国ならではですね。本当に視察にいきたいですよ。どうもご教示ありがとうございます

まぐまぐ 2009/02/16 08:08 前記を旧日銀法25条の日銀特融の「最後の貸し手」に帰着させると、ありふれた話になります。
面白いのは、日銀が絡めば株式売買における究極のインサイダー取引が実現する事です。
(モリタク先生の話を思い出しました。)
いっその事、日銀の公示をもとに国民参加型のインサイダー取引を行えばどうでしょう。株価を2万円台に乗せることも可能です。バブルを引き起こさない為に信用取引を中止するとか、買い付け期間中は外国人の買い手を抑制する。(内需拡大の為)
また定額の信用を国が保証し広く全国民に与え、投資信託の形で運用し一定期間は売り買いできないようにする。銘柄選考に産業育成要素もいれる等々。
メチャメチャ経済のあり方が歪むかなw

tanakahidetomitanakahidetomi 2009/02/16 09:11 >まぐさん。まぐさんの一連のコメントはあまりエントリーとも関係なく、またちょっと何をいいたいのかわかりません。投稿を重ねるのも結構ですが、コメントを他人のブログにする前によく熟考してからおやりになることをすすめます

まぐまぐ 2009/02/16 12:47 はい、大変、失礼しました m(__)m

Fellow TravelerFellow Traveler 2009/02/17 15:01 福永さんのは読んでいませんが、何か下の論文の焼き直しに聞こえますね。http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu/ron086.pdf
最近のいくつかの解説のネタはこれじゃないですか。
この論文でも何か論点不明瞭なところが多いのですが、そもそも統合政府の観点からすれば政府紙幣だろうが日銀券だろうが無差別です。バランスシートを気にするならば統合政府のそれを気にするべきで、政府の一部門である日銀のバランスシートを気にする必要はないですね(気になるならばまた所得移転をしてやればよい)。

tanakahidetomitanakahidetomi 2009/02/18 01:45 確かに、これでは日本銀行のバランスシートが大事であるということが自己目的化していて、国民の厚生なんか眼中になしですね。