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2009-03-09

[]「インタゲ論争の終り」という大嘘 「インタゲ論争の終り」という大嘘を含むブックマーク


 また、インタゲ論争が終わった、という嘘がネットで流れている。そして岩田規久男先生や原田泰さんがインフレ目標をいわなくなった、とかいう嘘も流れているようだ*1


 さてバーナンキFRBインフレ目標を検討していることは書いたhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090222#p1。このエントリーでリンクしてあるFRBの協議内容をみればインフレ目標の検討が行われていることがわかるだろう。


 クルーグマンアメリカ経済を日本とは異なる可能性で考えているかもしれないこと、さらにたとえそうでなくても別にインフレ目標を政策手段として放棄しているわけでないこともこことこのhicksianさんの整理http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20090305#p1をみればわかる。

(追記)というか嘘の勧進元をみたら、なんとクルーグマンの英語文を間違えてとってるみたいじゃないか! 呆れた。


 さて次に原田泰さんだが、最近著『世界経済同時危機』の以下のようにインフレ目標を導入すべきであることが書かれている。


 「これほど多くの人が実質と名目を混同するのなら、日本のインフレ率も世界の標準に合わせることが望ましい。日本のインフレ率を世界標準の2-3%にすれば、日本の名目長期金利は世界標準の4-5%まで上昇する(短期金利も2-3%になるだろう)。人々は、その金利収入を使うだろう。実質の貯蓄残高はインフレによって目減りしているが、それはわずかである。物価上昇率が2%なら、20年間で3分の1目減りするにすぎない。日本の高齢者は、死亡したとき、平均で消費需要の25.8年分の遺産を残しているという。それが多少目減りしても何の問題もないだろう。」


 次は岩田規久男先生も昨年の終りに出た『景気ってなんだろう』でもインフレ目標の導入をすべきであると主張していますし、また新刊の『金融危機経済学』では、インフレ目標政策を導入した国が、90年代以降、物価上昇率の低位安定と高い経済成長に寄与したこと、さらに「しかし、将来の物価上昇率が1〜3%程度にとどまると予想される状況で、資産価格が高騰したからといって、バブル退治で金融を引き締めれば、かえって、資産価格の暴落による金融危機と激しい景気後退を招く可能性は小さくありません」とした上で、インフレ目標と、資産価格バブルを防ぐ貸付基準などの規制政策を提起しています(岩田先生の日本のバブル形成、崩壊時からの一貫した立場です)。


 ついでなので政策にもかなり影響をもつと思われる高橋洋一氏もインフレ目標を設定することに積極的である。今日のエントリーで紹介した論説「給料半減時代の経済学」でも書かれている。疑いをもたれるならばFRBホームページの確認をした上で、上記二冊とあわせて本屋に行って読んできてほしい 笑


 さらに日本の政策当事者、つまり政治家はどうでしょうか? 日本の政治家の人たちの少なからぬ人たちがインフレ目標の導入や、リフレーションデフレ脱却)を必要と考えていること、そういった主張の経済学者やエコノミストの意見を聞こうとしていることは、例えば民主党内でも動きが顕在化しつつあることはこのブログでもお伝えしたことです。自民党でも小池氏グループや、あるいは政府紙幣懇談会の面々のインフレ目標の理解は高いと思われる。


 まあ、とりあえずあまりに当たりまえなのですが、ネット用に書いておきましょう。

 ちなみにどうもネットでは「リフレ=インタゲ」という阿呆な図式ですが、これもすでにここ(最近書いたのではなく何年も前から!)で書いたように、ひとつの有力なオプションにしかすぎず、いまの深刻な状況のもとでは、やれるものは矛盾しないかぎりなんでもやる必要があるでしょう。日本単独の不況のとき以上の積極性が求められるのです。


 これよんでも「インタゲ論争の終り」とか信じたいなら、それはカルトと同じなのでもう僕にはどうしようもない。例えばFRBの公式文書でのインタゲ導入の議論をみても、また岩田先生や原田さんたちの実際の引用をみても、「どっちが本当なんだろう」と思うならば、もう何も僕からはすることはできない。

[]失業率10%、給料半減か 失業率10%、給料半減かを含むブックマーク

 『Voice』4月号をいただきました。ありがとうございます。今号では、若田部昌澄さん「政府通貨は見事な政策」、山形浩生さん「食糧危機はヨタ話」、上野泰也さん「ミステリーのなかの大恐慌、、猪瀬さんの「小泉改革批判への大反論」など読みがいのある論説が多いです。その中でも最も僕が注目したのが、高橋洋一さんの「“給料半減”時代の経済学 失業率10%を回避する75兆円対策」でした。


 「失業率10%」という数字は、僕の今度の著作のサブタイトルと同じで、これは別に煽りでもなんでもなく、本書を読めばおわかりになるように、僕はいまのままの日本政府日本銀行の政策が続けば、最悪ケースとして失業率はかぎりなく二桁に近づくと思っています。去年の年末に朝日ニュースターの特番で、番組の中でその数字をいったときに(若年失業者は20%になるかもしれないとも僕はいいました)、高橋さんや宮崎哲弥さんも同じことを懸念していたことを知って、僕ひとりの懸念ではないことがわかりました。


 高橋さんは失業率10%(若年失業率は20%)の説明を次のようにしています。


「昨年10-12月期の実質GDP成長率が二桁マイナス、今年1−3月期も5%程度のマイナスという堅めの足もとデータから、100年に一度の危機ということで三年で回復(これもかなり甘い前提)するとすれば、今後1〜2年のGDPギャップ(潜在GDPと現実のGDPの差額)は80兆円程度とGDPの14%程度になる。これから失業率を算出すると、6〜10%程度になるのだ」。


 この点はラスカルさんのこのエントリーにおける高橋予測(今年度の経済成長率がマイナス3〜4%の可能性)のときの赤字の注意書きを参照のこと:http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20090211/1234319549(ただしラスカルさんでは若干、高橋さんや僕の考える超過失業率の水準が過小であるように思われる。高橋さんはこの減速が二年は確実に継続するので、さらに失業率は6%台を上回り、10%に近づいていくことになる。


 さらに高橋さんは、長谷川幸洋さんとの共著でふれたように、物価連動債から算出されるデフレ期待をもとにして、日本の給料が半減する可能性をも書いている。


 給料が半減し、失業率10%になり、若年失業がその倍の20%になる。その段階にきたときでは、事態はすでに手遅れである。

百年に一度の危機から日本経済を救う会議

百年に一度の危機から日本経済を救う会議

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

[]170万アクセス 170万アクセスを含むブックマーク

 たぶん明日起きるころには170万アクセスに達していると思います。あらためてありがとうございます。先月の10日ごろに160万でしたので、ほぼ一月で10万アクセスをいただいていることになります。多いのか少ないのかよくわかりませんが、もう少しマンガ関係に注目がいくようになれば嬉しいです 笑。

 いつでも速攻やめるつもりでいますので、いつまで続くか相変わらず未定ですが、しばらくは引き続きよろしくお願いします。

[]芹沢一也『暴走するセキュリティ芹沢一也『暴走するセキュリティ』を含むブックマーク


 芹沢氏の本はここ数年、新刊が出るたびに毎回買っている。その一方で、『論座』はよほどのことがないと読んでなかったので、本書が連載されていたときも当然に未見であった。本書を日曜の昼間に読んでいて、思わず、あれ、と声を出してしまった。僕の昔の著作『日本型サラリーマンは復活する』からかなり長めの引用があったからだ。今度でた『雇用大崩壊』につながる作品である。芹沢氏の著作をまめに読んでいた身からすると少しうれしい出来事であった。


 さて本書は日本が少年犯罪をめぐる社会の関心のあり方が変化することで、「厳罰化社会」になったことを丁寧に議論している。「厳罰化社会」はまた、「安全神話の崩壊」というメディアや警察側の喧伝によって、人々に過剰なセキュリティへの傾斜を促した。この過剰なセキュリティは、単に意識の変化だけではなく、犯罪への厳罰化や、また監視システムの構築など、制度面の変化をもたらし、社会のありかたを変貌させた。


 また社会の厳罰化、監視化への加速は、近代の権力のあり方に矛盾をつきつけることになる。芹沢氏によれば、近代の権力は矯正と生の次元において発露されるものである。しかし死刑基準の事実上の変更、刑務所が矯正の場ではなく社会保障の代替物へ変容することなどを通して、近代の権力は死と生存の軽視という矛盾に直面している。


 芹沢氏によれば、このような厳罰化・監視化社会への変容は、90年代以降からの経済状況の変化と無縁ではない。若い世代の困窮化、社会的弱者の放置などがすすむことが、彼らを事実上敵視すること(例えば本田氏らが「ニートっていうな!」と書いたときの、ニートと俗流若者論をいっていた人々)と、また逆に若者を中心にした人々に社会改革者(プレリカートや赤木智弘氏のメディアでの登場の仕方など)の残影をかさねあわせる動きとが、表裏一体としてすすむ事態を、芹沢氏は指摘している。


 本書ではまた、監視化社会の二面性についても指摘している。例えば監視カメラというテクノロジーの進展自体を否定することができない。芹沢氏によれば、問題はその「政治的文脈」にあるという。例えば、取調室に監視カメラをおき、自白偏重の取調べの可視化と、それに対して監視カメラが不審者発見に過剰に利用されてしまうことで、住民を潜在的な犯罪者として処遇し住民にもそのような意識を植えることなど、二律背反する困難があるという。


 芹沢氏の論点については、僕は以前、『不謹慎な経済学』の中で論じたことがある。それは自由のパラドクスという文脈でである。芹沢氏の今回の本にひきつけてみると、90年代以降の日本の経済システムの変化(日本型雇用システムの崩壊など)をうけて、私たちは従来の社会=会社 という管理のあり方が、従来の長期的雇用が可能にしていた社会資本(信頼)から、(短期でも長期的雇用でもその雇用形態を問わない)監視カメラの下へと移行してしまったというべきなのだろう*2


 監視カメラのもとでの会社=社会のあり方は、他方で効率化をうながすことで私たちの自由な選択肢を増やすことにつながるだろう、だが同時にそれは会社=社会における選択肢の排除(会社や社会にのれない人たちへの軽視)をともなうことで、自由の抑圧にもつながるかもしれない。本書はこのパラドクスを考察するよき素材である。


暴走するセキュリティ (新書y)

暴走するセキュリティ (新書y)

*1:僕がいちいちこの嘘をチェックしていると誤解されているが 笑 そんな暇はない。はてなの機能のリンク元で何かこの種のペテンが起きるたびに、そのペテンの勧進元からかなりの人たちのアクセスがくるのでバカでも気がつくw はてなを知らないか日記の機能をつかわないから理解できないのだろう。ちなみに嘘つきを相手にしても「議論」はできない。誤解と嘘は大違いで、誤解は議論でただすことが可能だが、嘘は嘘であることを指摘しておけば十分

*2:もしろん日本の雇用システムの中にあった社会資本=信頼にも、社会の効率化と同時の、暴力装置としての役割という多面神的側面はあった

e-takeuchie-takeuchi 2009/03/09 10:27 おはようございます。
警察庁によると自主防犯団体が5年連続で増加し4万を突破したそうです。子供への犯罪は減っているのに。

ベルナンヶベルナンヶ 2009/03/10 15:39 大崩壊したのは雇用ではなく、リフレ派の論理ではないかーー読む価値∞の高級同人誌、「世界」4月号に載っていた服部茂幸さんの論説に接して、そんな思いを深くしました。

そうそう、服部さんといえば、NTT東日本から上梓した「金融政策の誤算―日本の経験とサブプライム問題」が洛陽の紙価を高めているみたいですね。
賢者は他人の経験に学び、愚者は自分の経験に学ぶといいます。翻って聡明なリフレ派諸氏は「日本の経験」から何を学んだというのでしょうか。

tanakahidetomitanakahidetomi 2009/03/10 16:16 何を学んだというのでしょうか。>

あなたが他人のブログを荒らすタチの悪い人であることを学びました