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2009-04-12

[]福永宏(in週刊東洋経済)、田中秀臣(in Economics Lovers Live)に反論す 福永宏(in週刊東洋経済)、田中秀臣(in Economics Lovers Live)に反論すを含むブックマーク

 福永宏「再論・「政府紙幣発行論」批判 政府紙幣の発行益は一時的・短期間で消える」『週刊東洋経済』。

 明日発売の『週刊東洋経済』がいち早く手元に来たので読んでたらちょっと驚いた。前、このブログで福永さんの記事を批判したのだが、

 露骨な富裕層優遇よりも政府紙幣が嫌われる理由とは?http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090215#p1

 上記エントリーからの引用を含む名指しの反論になっている。たまに忙しいと東洋経済は読まないで積読のままになるので、今回は気がついてよかった 笑。ブログはまま紙媒体の情報を批判的にとりあげるが、逆の現象は珍しいと思う。

 福永さんの反論は、先の僕の「二種類紙幣が流通しても問題はないと考える。額面の工夫、デザインの工夫、さらには材質の工夫(その昔、高橋さんはプラスティックマネーの発行を唱えた)でもいいだろう。そうすると福永論説の(僕にはよく理解できない)日本銀行を経由する必要はなくなる」にむけられている。

 ところでこの引用部分は、福永論説(ここ)の(1)と(2)共通で、実務的な関連から日銀券と政府紙幣二種類が流通してしまう、と福永さんが心配されるので、両方が区別つくようにデザインすればいいんじゃないの、終り、 ということである。

 ところが今回の福永論説では、このデザインの区別などに関心がいっていない。むしろ論点は、僕のエントリーの引用部分以後にあるようだ(僕のブログを引用いただいたのはいいのだが、引用箇所が適切ではないと思う)。

 しかも確か記憶では、前回は政府通貨発行は無利子・無期限国債と同じで、これは財政規律の緩みとか、通貨の信認に関して問題があるということだった(これを福永パートワンとする)。今回はこういった問題以前に、「そもそも政府にとって採用する“うまみ”のない政策である」ということだそうである。

 その福永さんのロジックは、ご本人のまとめによれば(政府紙幣が市中を流通するケース)

 「政府紙幣日銀に還流→日銀が保有→日銀の利益が減少→政府への納付金が減少→通貨発行益が消滅(と同等の効果)。政府紙幣日銀に還流→政府が回収→通貨発行益が消滅。いずれにせよ政府が得た通貨発行益はしだいに消えていく運命にある」。

 この引用部分を、福永パートツー(供砲箸垢襦

 もしこの福永さんのロジックが正しければ、福永パートワンと照らしあわせると奇妙なことに気がつく。まず財政規律は緩まない(だって政府通貨発行益は消滅しているから!)、通貨の信認の問題もない(政府紙幣の発行額と日銀発券残高がちょうど打ち消しあうと福永さんがいっているから、インフレにならない!)、のだから「問題以前」ではなく、パートワンとは違った問題を今回は提出しているに等しい。

 しかも、今回でも、「政府紙幣とは、結局、無利子・無期限国債と同等であり、政府紙幣の発行は、政府債務の増加であるという問題の本質をよく示している」といっているのだから、やはりパートーツーではなく、パートワンの方が問題の「本質」のようである。この問題の「本質」の方は、要するに財政に維持不可能性、高いインフレ、ということが、福永論説のいうところの「弊害」だったはずだ。でもパートワンとパートツーは矛盾する。いったい政府紙幣は福永さんにとって何なのだろうか? 

 ところでパートワンで強調されていた「弊害」への応答はすでに前回のブログで書いた。さらに最近では、FRBのバランスシートの膨張(これは日銀流に読み替えれば“日銀”の利益の減少)が出口においてもつリスクを回避する方策として、イエレンやバーナンキ、そして政府側でも積極的な発言がみられる。それはバランスシートの膨張の急減を避けて、経済の正常化の後に金利の正常化をなしとげる方策である。この点はまた後日暇があればまとめよう。

 それにくらべて日銀とその代弁者たちは、なぜか日銀のバランスシートの毀損を理由に積極的な緩和を避けている。いいかたをかえると毀損するからやらないだ。米国イギリスなどは、緩和政策のコストを理由に「やらない」ではなく、コストを引き受けて「やる」だ。この姿勢が意欲的な出口政策の設計のあるなしにもつながるのだろう。

 かってバーナンキは「要するに、中央銀行のバランスシートというものは金融政策の決定にとってせいぜい限界的な意義しか持ち得ないことを経済的に証明できます。しかし、この問題を巡り、おそらくかんかんがくがくの非生産的な論争となりそう」だ、と彼はいっていた。僕の認識もそうである。

 日銀は自分のバランスシートのみを大切にしているようだが、本当に大切なのは国であるはずだ。百歩譲っても統合政府であるはずだろう。そういう意識は、福永論説にも感じられない。ちなみに僕の前に書いたエントリーの主張(ボンドコンバージョンの導入、名目成長率目標が重要である、格差をもたらす無利子非課税国債の無視はなぜか?)にいっさい、福永論説は応えていない。それはちょっとないんじゃない?

 ちなみに福永論説のパートワンのここ、と白川総裁の発言(2月の記者との問答参照のこと)はまったく同じであり、その意味では日銀理論流の政府紙幣批判論である、ことも申し添えておく。


(おまけ)農作業で手を酷使してちょっとしびれた〜w

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[]書評:『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』 書評:『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』 を含むブックマーク

週刊東洋経済』に掲載された書評の草稿

 日本の将来に暗い翳をおとしている少子高齢化問題。その対策をどうするべきか。本書は、出生率の上昇に貢献したフランス少子化対策をわかりやすく解説した良書である。著者自身の現地での子育て経験や、またフランス人家族へのインタビューを通して、フランスの家族政策や社会保障制度の仕組みを、具体的に知ることができて面白い。

 フランスでは子育ては人生の愉しみなのに、なぜ日本では子育てが人生の苦労になりやすいのか。本書を読むと、それはフランス人と日本人の人生観の違いというよりも、政府の制度設計の仕組みの違いに決定的に依存していることがわかる。例えば所得格差、男女間格差、長時間労働などを放置すれば、出生率が低下するのはあたりまえだと著者はいう。

 確かに日本ではこの三つの問題を政府はうまく対処できていない。例えば、フランスの男性がいかに子育てに積極的であるかが紹介されている。男親が子育てしやすいのは、長時間労働への規制が存在するなど政府や企業の対応次第であることがわかる。フランス少子化対策をそのまま日本に移植することが可能かどうか。成功例とされるフランスも、今日の姿を一夜にして成し遂げたわけでなく、またはるか昔から続いていたわけでもない。わずか20数年前の改革を契機に今日の少子化対策に成功したことを本書は教えてくれる。

 では、日本でも同様の改革は可能だろうか? 高齢化がすすみ年金や医療などへの老人たちの既得権が強まるなかで、いかに子育てをしている若い世代に社会の資源を割り振ることができるのか。本書では、子育てをしやすい政策を設計することが、結局は家族や社会を機能させ、若い世代だけではなく、高齢者世代までも含む国民全体の福祉を向上させることを明らかにしている。

フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由

フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由

平ちゃん平ちゃん 2009/04/12 11:44 >高齢化がすすみ年金や医療などへの老人たちの既得権が強まるなかで、いかに子育てをしている若い世代に社会の資源を割り振ることができるのか。

この辺は極めて同感します。

老人福祉の話がマスコミ等で取り上げられるときに出てくる決まり文句のひとつとして「これまで苦労して来たお年寄り」との言葉があると思います。

しかし、世代間闘争を煽るつもりは全くないのですが、思うのは、お年寄りはほんとに苦労したのか?、、、特に、老人福祉については、今のお年寄りが若い頃には、兄弟がたくさんいたから、老いた親の面倒で苦労した人たちは少ないのではないのか?また、当時は福祉医療にお金も掛からなかったろうから税金でもそれほど大きな負担はしていなかったのではないのか?
、、、そもそも、20年前、30年前に、少子化対策にまじめに取り組まずに、子育てのための社会負担を負わずに楽をして、現状の深刻な少子高齢者社会を作り出した責任は、今の現役世代にあるのではなく、今のお年寄り世代にあるのではないのか?

、、、世代間闘争を煽るつもりはないのですが、今のお年寄りにも、現状の深刻さを考え、若い世代のために、生活費(年金給付金)の削れるところは削って、若い、未来の世代のために使えるように考えてもらえたならば、とも思います。

tanakahidetomitanakahidetomi 2009/04/13 01:04 そうですね、ただ若いときの責任とれといわれると、将来、「田中たちもデフレをず〜っと放置してきたじゃないか」と非難されたときにいささかつらいですよね 苦笑。

それとおっしゃるように、いずれ年金給付は急減する局面がくると思いますが、それを担うのは僕らからなので、その意味ではすこしは非難されないですむかもですね。遠い目。

平ちゃんさんにお願いなのですが、できれば今後は、はてなに登録していただければ幸いです。平ちゃんさんのコメントは、主張が違う面があっても気持ちのいいものですので。よろしくお願いします