公共事業の供給制約仮説を直観的に考えるつぶやき

 Twitterに書いたものを簡単にまとめただけ。

 不思議だけど、多くの人は「公共事業の景気刺激効果」をめぐる問題に関心があるはずなのに、その最新の論点(公共事業の供給制約説)を丁寧に書いてる原田泰他『リフレが日本経済を復活させる』(中央経済社)に全く言及してない。

 そういう知的関心度の低い人を相手につぶやいてもなあ、とは率直に思う。とりあえず、いいかげんな関心しか99%の人がもってないので、こちらも超省エネで(笑)直観的に書かせてもらうが、同書の飯田論説では、問い「財政政策の景気刺激効果が落ちてる。でも財政支出が増えてるんだから、どこかの経済活動が減ってるってことだよね? それはどこ?」というもの。

 で、公共土木建築指数が増えると民間土木建築指数がとてもはっきり低下させてる、しかも逆の民間が増えると公共は増えてもいる。

「ここから示唆されるのは、公共事業の増加が民間の土木・建築事業を文字通りの意味でクラウディング。アウトしている可能性である」。

 この文章の注で飯田さんは丁寧に、『供給能力が上限に達しているときにある需要が他の需要を「掃き出す」ことも文字通りのクラウディング・アウトである」と書いている。

 例えば公共事業部門だけではなく、経済全体(ここ注意!)で考えてみると次のADAS曲線で考えるとイメージつきやすい。いまの事例を以下の図で考えるとASとADがどんな位置関係にあるときだと思う? これは宿題。

 さて公共事業の方に戻すけど、もし飯田仮説とおりだとすれば、(アベノミクス実施期間中でも)ある月の公共土木建設活動指数が上昇すると、一定期間のラグをとって民間土木建設活動指数は低下する。で、以下の図は活動指数の最近の動向。(データはここから)

 アベノミクス期間中、公共土木建築活動指数が増加していくと、民間土木建築活動指数が低下していっている。実際には時系列分析をやる必要があるが、冒頭にも書いたように、省エネですませたいのでこの程度で十分。そしてこの図表で直観的に考えると、ここ数か月公共活動指数が急上昇しているので、飯田仮説が正しいとすると、民間活動指数は一定のラグをおいて低下するだろう。そのラグはひと月遅れから一年ぐらいをざっとみておけばよくて、それはもう図にも表れているように思える。

 この図をもう一度みると、直観的には、「供給制約がひと段落した」というよりもこれからさらに顕在化ししてきてもおかしくはない状況だ。

 さて、多くの人たちは、「短期」と「長期」だとか、政策の割り当てを理解したりするのがとても不得意だ。というか意識にない。いまの「公共事業の供給制約」はすべて短期的な状況だ。わかりやすくいえば景気に関係している話。「長期」には供給制約は緩む方向にもっていくことは可能。飯田さんもちゃんと「長期的計画」をたてれば供給制約に対応可能と示唆している(それでも難しい要因は実はある、この点も飯田論説では示唆されてる)。

 僕は他に先んじてわざわざ「国土強靭化省」なるものをいったのはあくまで「長期」の話。いまの国土強靭化系の人たちの大半は、景気刺激策と長期的計画とをごちゃまぜにして理解している。奇妙な人たちだ。

付記:建築活動指数、土木活動指数も合せて掲載。これをみると直観的には建築の方は公共部門にリソースをくわれてしまっていてそれが現状も継続している感じ。他方で土木の方は2013年はかなりくわれてたが、14年からはかなり改善しているように見える。