私の優しくない先輩(山本寛)
新宿バルト9
私の優しくない先輩 日本映画
監督:山本寛
脚本:大野敏哉
出演:川島海荷 金田哲 入江甚儀 児玉絹世 永野芽都 小川菜摘 高田延彦 東浩紀他
原作:日日日
音楽:神前暁
チーフ・プロデューサー:岩上敦宏 針生雅行
配給:ファントム・フィルム
好感度=☆☆☆★
アニメーション出身の山本寛監督の実写初挑戦となる映画。愛称が”ヤマカン”だというから、”ヤマモトカン”なのかと思っていましたら、”ヤマモトユタカ”と読むそうです。原作は未読。
公開開始当初、僕のTwitterのタイムラインに不思議なくらい結構な数の反応が流れていた話題作?です。
川島海荷ちゃん演じる空想好きの主人公の女子高生西表耶麻子(イリオモテヤマコ)には、南愛治という憧れの人がいる。しかしヤマコと南愛治の関係に、金田哲氏演じる不破風和(フワフウワ)先輩が入ってきてサァ大変。さらにそこに友達の筧喜久子も加わりヤヤコシイことに。そして耶麻子にはある秘密が・・・まあ、こんな感じです。
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アニメーション出身の監督ですが、あまりアニメーションっぽさは感じませんでした。これはアニメーションにこだわりがあったりヤマカンアニメ作品が好きな人が観るとどうなんでしょう?友人にアニメーションが好きな人間がいるから今度聞いてみたい気もします。
ダンスシーンは、アニメーションの際にもやってるそうです。あれは良かったです。むしろもっとたくさんやってほしかったくらい。
かなり多用されるモノローグは個性的で良い。
ちなみに建物が崩れるあのシーンは、あの鈴木清順監督を意識してるんだとか。
これは一種のアイドル映画とも言えるんでしょうか。でも川島海荷ちゃんだけでなく、金田哲氏のアイドル映画にも観える程彼にこだわりを感じましたけど。
「アイドル映画」って定義が難しいですけど、「時をかける少女」「人間失格」[花のあと」「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」「今度は愛妻家」あたりも、そう言われる面があるのかも。だとすると今年は多い。この中で興味があるものがあったらどうぞ。
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映画秘宝でも取り上げられていたこの映画ですが、キネマ旬報でも特集が組まれていて、「キミと僕だけのセカイ系に君臨する”先輩”」と題した、映画プロデューサー直井卓俊氏の分析が興味深いです。
「セカイ系」っていうのは正直僕にはよくわからない言葉なんですが、僕は以下のように思いました。
それは、しばらく考えても上手い言い方が思いつかなかったんですが、この映画、「ネガティブなことの受け止め方」とか「そこからポジティブなことをどうやって掬いあげていくか」、そんなメッセージを感じました。
そう感じるに至った理由がいくつかありまして、最初のほうで「一生懸命は視野が狭い」みたいなことを言うヤマコと対するフワフウワ先輩との間には、ポジティブな事柄又はネガティブな事柄に対する受け止め方が全く異なっている。そんな先輩とヤマコは相いれないわけです。
なんというか、ヤマコという女の子は、第一印象というか、直感、ファーストインパクトで自分にとって「悪い情報」に成り得る事柄は、直で受け止めてしまう女の子に思えました。空想好きなのに。で、全く違うのが先輩。上手く言えないために極めて回りくどい書き方になってしまいましたけど。
そういう点で細部に気になる演出もありました。先輩はウザくてクサてキモいのですが、ヤマコに先輩のクサイ汗が押しつけられるところで、汗の生々しいベッチョリ感が、音で強調されていたり。かたくなに拒んでも、ネガティブな情報や事柄は直で受け止めてしまうヤマコ。
汗がクサイといえば、この映画のヤマコと近い世代の女子が主人公の「武士道シックスティーン」でも、剣道は汗クサイと言っていました。10代の女子は汗臭さと隣り合わせ。8×4は通用しません。
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まあなんというか、そんなヤマコが先輩によって変化していく青春過程が興味をそそられました。
以下、ストーリーの終盤に触れます。その前に、Majiでバナークリックする5秒前。
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遂に、実は不良だった南愛治くんに告げるヤマコ。結果、これまでのヤマコにとっては「良い」はずだった、つまり「ポジティブ」に捉えていたことだった返事がきたのに、ヤマコはその反応を「ドレミファソ」の「ソ」というようにがっかりな反応として受け止めます。
つまりこの返事は、この時点のヤマコにとっては、もはやネガティブなことになっていて、まあつまり、ヤマコが南愛治くんに伝える時点で、ヤマコの恋心は、南愛治くんには向いてなかったってことではないでしょうかね。
エンディングテーマは、かつての大林宣彦監督の映画を想わせます。ストーリーとエンディングテーマは切り離すという意図だったのかもしれませんが、エンディングテーマに入る前に1回流れを切ってるんですが、ここは繋げてみても高揚感が増したかも。
色々と引っ掛かるところもあった映画でしたが、反面どこか好きな映画でした。
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