「希望の国」(園子温監督作品)

新宿ピカデリー

評点・・・☆☆☆☆(ダンゼン優秀!)

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青いソラ白い雲 [DVD]

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観た直後感じたことを、つらつらと箇条書き的に書きます。

原発事故をテーマにしているが、「型破りな園子温作品」を期待すると肩透かしをくらうかも。

作風は「愛のむきだし」と「冷たい熱帯魚」の間に公開された、自分は「冷たい熱帯魚」より好きなんだけどあまり話題にならなかった佳作「ちゃんと伝える」にどこか似ている。つまりどっちかというと、急に沸点が上がったりしない映画と感じた。「過剰」に徹さなかった点を支持したい。

個人的にはコメディ化しながらたっぷり皮肉った金子修介監督の「青いソラ白い雲」のほうが好みだけど、はっきり「反原発」を示した点を推したい。「ヒミズ」は青春映画としては力作そのものだけどその点と被災地描写が緩かった気がする。

この監督は、名脇役を主役級で光らせることに定評があるようだ。滑舌が悪いから個人的には苦手な俳優だが「冷たい熱帯魚」のでんでん氏が当時話題になったが、この映画では夏八木勲氏がとても良い。評点は夏八木勲氏、大谷直子氏の良さを加算している。夏八木勲氏は現時点で主演男優賞にしたいほどだ。認知症芝居を観るのは「わが母の記」の樹木希林氏以来だが、周囲の共感を誘うような樹木氏とはまた違う芝居をしている。

以下、ちょっとネタバレ気味。

結婚して長い夫婦。結婚してまだ浅いその息子夫婦。これから結婚する男女。その三つを軸にしているのも巧い。みなそれぞれ、別の道へと進む。

引っかかる点も無くはない。例えば自分の不勉強かもしれないが「放射能恐怖症」なんて言葉、本当にあるのかな?医者はあのような助言をするだろうか。

先日急逝した若松孝二監督も、原発を題材にした映画を撮ろうと決めていたらしい。若松監督のそれも観たかった。やはり「実録」だっただろうか。今後原発事故を題材に映画を撮る監督がどれだけ現れるだろう。いつ現れるだろう。

思いだしたので追記

原発事故後の福島県ドキュメンタリー映画の佳作「相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶」でも、自分の家から離れようとしない老夫婦がいたっけ。