(税)TMKの資本構成

1、概要

資産流動化法で規定されている特定目的会社は、業界では頭文字をとってTMKと呼ばれている。

TMKは、投資ビークル(投資するための器)の一種として用いられている。

典型的には、企業が不動産投資を行う器として用いられている。

TMKは、税制上、一定の要件を満たせば、導管として取り扱われ、支払った配当を損金に算入できる。

その結果、所得が圧縮されるため、TMK段階では所得を課税ベースとする法人税等の税金がかからないこととなる。

TMKから投資家に分配された段階で課税がなされる。

この課税方式をペイスルーと呼ぶこともある。

配当をペイすれば、TMKに課税がなされない(スルー)ですよ、との意。

同様のペイスルー課税がなされているビークルとしては、投資法人がある。

投資法人は、JREIT(日本版不動産投資信託)として用いられている。

投資法人は、その発行する出資金が上場され、多数の投資家に保有されることが多い。

対して、TMKは、少数の企業が不動産投資を行うために組成されることが多い。

投資法人は運用型、TMKは流動化型という違いがあるが、詳しくは省略する。

このほか、TMKと比較されやすいのは、匿名組合(略称TK)。

これも、少数の企業による不動産投資を行うために組成されることが多い。

税制上のたてつけは、TMKと異なる。

 

2、TMKの資本構成

TMKは、不動産に投資するため、資金調達が必要になる。

資金調達は、デットとエクイティで行うことが多い。

TMKは、デットとして、特定社債発行と特定目的借入れを行える。

エクイティとしては、優先出資と特定出資を発行できる。

 

3、税制をふまえた資本構成

税制上、TMKは上記の配当損金算入の特例を受けるため、特定社債または優先出資を一定の方法で引き受けてもらう必要がある。

実務上は、要件の満たしやすさや他の要件との関係から、特定社債機関投資家等により保有されている見込みであることとの要件を満たすようにすることが多い。

ここでも、当該要件を満たすよう投資家を手配することを前提とする。

 

3−1、特定社債

特定社債は、税法上、機関投資家等により保有される見込みである必要がある。

税法上の機関投資家等は、金融商品取引法上の適格機関投資家の中から一定の絞りをかけて範囲を狭めたものと、プラスアルファとなっている。

 

証券会社、銀行、保険会社等の金融機関は当然機関投資家等に該当するが、未上場の一般企業(上場企業の子会社含む)だと該当しない場合も多く、検討を要する。

これらの国内投資家は、特定社債の利子に対して15%の源泉所得税・5%の利子割課税を受けた上、法人税課税を受ける(源泉税・利子税は法人税から控除される)。

源泉所得税・利子割は、一定の手続規定を満たせば免除されるケースが大半である。

特定社債の売却益は、法人税の課税対象となる。

ただし、特定社債の売却に際しては、上述の機関投資家等による保有見込みに違反しないようにする必要がある。

 

また、海外投資家(日本に拠点なし)の場合、機関投資家等に該当するのは一定の金融機関等に限定されており、検討を要する。

海外投資家については、利子に対して15%の源泉所得税が課されるが、一定の手続規定を満たせば免除されるケースが大半である。

ただし、特定社債の支払利子がTMKの利益に連動するケースや、特定社債がTMKの関連者により保有されるケースでは、当該免除を受けられない。

また、TMKが支払利子を損金算入できるかという点について、理論的には、過少資本税制の適用がないかを検討する必要がある。

特定社債の売却益は、法人税の課税対象とならない。

ただし、特定社債の売却に際しては、上述の機関投資家等による保有見込みに違反しないようにする必要がある。

 

まとめると、特定社債は、機関投資家等により保有される必要がある。

日本の税効率上は、海外投資家が保有すれば日本での課税がなされないため効率的だが、上記のとおり海外投資家が機関投資家等に該当するのが難しい場合がある。

彼らに、TMKのローリスクローリターン部分は帰属することになる。

 

※特定目的借入れについても、特定社債と類似の機関投資家等からのものであるという要件が課されているが、詳細は割愛。

 

3−2、優先出資

優先出資は、税法上、国内で発行価額の50%超を募集する必要がある。

当該要件を、以下では国内募集要件という。

国内募集要件の存在から、少なくとも組成段階では、優先出資の過半を国内投資家に持ってもらう必要がある。

 

国内投資家は、原則として、優先出資の配当に対して20%の源泉所得税課税を受けた上、法人税課税を受ける(源泉所得税法人税から控除される)。

国内投資家の法人税申告において、受取配当の益金不算入の適用はない。

優先出資の売却益は、法人税の課税対象となる。

ただし、優先出資の売却に際しては、上述の国内募集要件との関係で、検討を要する場合がある。

 

また、海外投資家(日本に拠点なし)の場合、優先出資の配当に対して20%の源泉所得税課税を受ける。

この20%の源泉所得税については、租税条約により、軽減が可能な場合がある。

優先出資の売却益に対しては、源泉税は課されないものの、事業譲渡類似株式や不動産関連株式の売却益として、法人税の課税対象となる場合がある。

 

まとめると、優先出資は、過半を国内投資家により保有される必要がある。

国内投資家に対しては源泉所得税法人税が課されるが、海外投資家に対しては源泉所得税のみが課される。

国内投資家については、日本の税効率を高める観点から、ファイナンス手法について検討が可能な場合もある。

海外投資家については、日本の税効率を高める観点から、租税条約の適用について検討が可能な場合もある。

彼らに、TMKのローリスクローリターン部分は帰属することになる。

 

3−3、特定出資

特定出資についても、原則として、優先出資と同様、国内募集要件が課されている。

国内募集要件の存在から、少なくとも組成段階では、特定出資の過半を国内投資家に持ってもらう必要がある。

 

国内投資家は、原則として、特定出資の配当に対して20%の源泉所得税課税を受けた上、法人税課税を受ける(源泉所得税法人税から控除される)。

国内投資家の法人税申告において、受取配当の益金不算入の適用はない。

特定出資の売却益は、法人税の課税対象となる。

(税)海外からの不動産投資

海外の投資家(法人を想定)が日本の不動産に投資する場合、日本で各種税金が課される。

どのような形態で日本の不動産に投資するかによって、日本の税務上の取扱いが異なることになる。

海外投資家が直接不動産(不動産を信託財産とする信託受益権含む)に投資するほか、実務上は、特定目的会社(TMK)や匿名組合(TK)を通じて投資することがある。

なお、投資法人を活用したJリートは、投資口(株式)が小口化され、多数の投資家に保有されているのが典型的なため、ここでは省略する。

以下では、投資形態別に、主要な税目の課税上の取扱いについて、概観する。

外国法人は、国内に恒久的施設(一定の拠点)を持たないことを前提とする。

これは、外国法人は、自ら不動産の管理運営をせず、管理運営業務を管理会社に委託することにより、国内に恒久的施設を持たないようにしていることが多いからである。

なお、不動産自体がPEになるかという論点もあり、この点は別途検討を要する。

 

1、外国法人が不動産に直接投資

2、外国法人がTMKを通じて投資

3、外国法人がTKを通じて投資

 

1、外国法人が不動産に直接投資

1−1、源泉所得税法人税

外国法人が日本の不動産に投資する場合、直接所有するケースと、不動産を信託財産とする信託受益権を所有するケースがある。

後述するように、登録免許税、不動産取得税(不動産)の問題から、後者を選択するケースが多い。

不動産を直接所有するケースも、信託受益権を所有するケースも、通常は源泉所得税法人税の課税関係は変わらない(信託受益権を受益者等課税信託とすることが通常)。

 

1−1−1、賃料

外国法人が日本の不動産の賃借人から受け取る賃料については、原則として20%の所得税が課されることとなっている。

そのため、賃料を支払う側は、賃料の20%を源泉徴収して、翌月10日までに税務署に納付する必要がある。

ただし、個人が一定の居住用不動産に関して外国法人に支払う賃料については、源泉所得税が免除されている。

 

外国法人が受け取る不動産の賃料は、上記の通り所得税源泉徴収されているが、同時に法人税の課税対象となる(源泉所得税法人税から控除できる)。

賃料が課税所得計算上、益金に算入される一方、不動産の減価償却費や管理費等の経費は損金に算入されることとなり、益金と損金を相殺したネットの所得金額に対して法人税が課される。

なお、不動産投資のために借り入れた借入金に係る支払利子も、損金に算入される場合があり、借入金を外国法人の親会社から行っている場合には過少資本税制の検討も必要である。

法人税の税率は、原則として30%である。

ただし、外国法人が中小法人等に該当する場合には、一定以下の所得金額について軽減税率の適用がある(中小法人等に該当するかの判定に当たっては、本店の資本金を円換算して判定する)。

なお、ネットの所得金額がマイナスの場合には、繰越欠損金として取り扱われ、向こう7年間繰り越して、益金と相殺することが可能である。

源泉所得税法人税から控除できる。

賃料の20%はグロス源泉徴収される一方、法人税はネットの所得に対して30%で課されるため、多くの場合、外国法人の申告は還付申告となる。

 

1−1−2、売却益

外国法人が日本の不動産を売却した場合、売却対価については、原則として10%の所得税が課されることとなっている。

そのため、不動産の買い手は、購入対価の10%を源泉徴収して、翌月10日までに税務署に納付する必要がある。

ただし、個人が一定の居住用不動産に関して外国法人に支払う購入対価については、源泉所得税が免除されている。

 

外国法人が受け取る不動産の売却対価は、上記の通り所得税源泉徴収されているが、不動産の売却損益は同時に法人税の課税対象となる(源泉所得税法人税から控除できる)。

不動産の売却損益は、売却対価から売却不動産の簿価を差し引いて求められ、仲介手数料その他売却に関連する経費は損金に算入されることとなり、益金と損金を相殺したネットの所得金額に対して法人税が課される。

法人税の税率、中小法人等の取扱い、繰越欠損金、源泉所得税の取扱いは、「1−1−1、賃料」と同様である。

売却対価の10%はグロス源泉徴収される一方、法人税はネットの所得に対して30%で課されるため、多くの場合、外国法人の申告は還付申告となる。

なお、法人税の申告において、売却損益と「1−1−1、賃料」に係る所得は合算され、内国法人と同様、事業年度終了後、2ヶ月以内(延長あり)に申告納付する必要がある()。

 

1−1−※、不動産自体がPEになるか

 

1−2、消費税

日本の不動産の譲渡・貸付については、原則として消費税が課される。

これは、日本に恒久的施設を持たない外国法人であっても同様である。

ただし、土地の譲渡、住居の貸付については、消費税が非課税となっており、消費税が課されないこととなっている。

そのため、住居以外の不動産に係る賃料、建物・備品等の譲渡については消費税がかかり、住居に係る賃料、土地の譲渡については消費税がかからないという整理になる。

 

ある取引について消費税がかかるか否かは上記の通りだが、外国法人が消費税を申告納付する義務があるか否かは、内国法人と同様、基準期間の課税売上高や届出等によって、課税事業者となるか、免税事業者となるかによる。

外国法人がはじめて日本の不動産に投資する場合、過去に日本に関連する投資を行っていない場合には、当該外国法人の資本金が1000万円以上である場合を除き、原則として免税事業者になる。

しかし、不動産投資に関して消費税をもっとも多く支払うのは、当初の建物を購入した段階である。

外国法人が建物の購入対価にかかる消費税の還付を受けたい場合には、課税事業者となっておく必要がある。

そこで、以下では、課税事業者、免税事業者という切り口で、不動産投資に係る消費税の取扱いを整理する。

 

1−2−1、課税事業者の場合

 

1−2−2、免税事業者の場合

 

1−3、登録免許税、不動産取得税

 

2、外国法人がTMKを通じて投資

 

3、外国法人がTKを通じて投資