今日は男性向け大人漫画を取り上げようと思います。


元々漫画というものは子供の読むようなものでした。
それが日本では特異なことに戦後の発展と共に漫画家が育ち、様々な漫画家が育つことで様々なジャンルが芽生え、漫画が大衆芸能になり、メジャーになる、という図式になっています。
今は幼年漫画から老人向けに手が届く世代向け漫画や、学校の検定用教科書に掲載するための漫画すら出てきてます。


男性向けアダルト漫画もあれば、女性向けアダルト漫画であるレディコミ(レディースコミック)もあります。今の漫画はさしずめ江戸時代元禄文化真っ盛りの浮世絵春画のようです。
安くてどんなビンボー人でも手にはいるのも現代の漫画と当時の浮世絵とも共通しております。印刷物というのも共通しています。絵師(漫画家)にそれぞれ画風があり、人気を持つのも一緒です。
(例えば日本の漫画のベッドシーンで、どの作家のどの作品も大体男根を異常に大きく描くのは、江戸時代の浮世絵と変わらないところがあります。さらには、各地に男根を祭ったり、お祭りしたりもしております。そういう日本民族としての歴史的共通点は興味深いのですがまた別稿にします。)


私は男性向けアダルト漫画があるように、女性のためのレディースコミックを批判はしませんが(むしろ肯定します)、読み比べて見ると男女は考えが異なり、各々理想の恋愛像があり、歪曲して物事を都合よく考え、「こうなればいいなあ〜〜・・・」というものを内に秘めつつお互い行動する生き物なのかもしれません。


衣食住に困らない貴人が、暇で恋しくてたわいもなく、「こんなんだったらいいな〜〜。うふふ」みたいに好き勝手に書いた恋愛作品が、かえって逆に長い歴史で残っていくのかもしれません。(もしかしてそんなものが源氏物語の作者の本音だったりするのかもしれません^^;)
元々文学の作家さんは良家の子女やエリートが多いですしね。
商業ベースとして大衆へ発信するエンターテイメントを追求するのか、もしくは作家が描きたいことを自由に描きたいように書く、いわば同人誌的なノリでやっていくのか、作品性として両者は相反していながらも交錯する部分があるのではないのかと思います。



前置きが長くなってすみません。
では漫画紹介に移らせていただきます。




日本漫画で代表的な、働く男性のための大人漫画といえばこれ!

シリーズ作品として「部長島耕作」「取締役島耕作」「常務島耕作」「専務島耕作」「ヤング島耕作」「主任島耕作」があります。


作者は弘兼憲史先生です。
リアリティあるヒューマンドラマ、「人間交差点」。政治家を主人公とした大人向け作品、「加治隆介の議」。民間TVで毎日の最終ニュース番組の制作裏側舞台を取り上げた「ラストニュース」等の作品があります。また「東京ラブストーリー」等で有名な、柴門ふみ先生のだんなさんでもあります。


作品の内容を一言で言うと、いいとこの大学を出て大企業のエリートサラリーマンの主人公島耕作が、颯爽にかっこよく仕事をこなして(大体棚からぼたもちでラッキーマン)、女にもてまくって出世するお話です。


・・・・・・・・・・・・。


って、なんていうか妄想ストーリーなんだよなーー・・・。
それが作者の意図だと思うと悔しいんだけど・・・。


読んでいるときはハラハラドキドキするけど、後から冷静になると、現実的なサラリーマン・会社人生を舞台にしているので、「こんなのありえない〜〜」「島耕作、美味しすぎ!超むかつく!」と、殺意すら覚えます。俺が駄目サラリーマンだったからかなあ〜〜〜・・・・?
作者の弘兼憲史先生が何年もサラリーマン生活を経て漫画家(サラリーマン出身の漫画家さんは意外と少ないそうです)になったということで、妙なリアリティさがあるからなのでしょうか・・・?


弘兼憲史先生はこの作品の主な対象読者を人口的に多く、「あしたのジョー」の洗礼を受けた団塊の世代をターゲットにしていると思います。


テーマは大企業・家電系モノ作り日本企業という代表的な日本企業像、エリートサラリーマンの生活、仕事の面白さやほろ苦さ、出世競争の揶揄という仕事仕事の人生、妻との仲、男なら夢みる様々な美女との恋愛などのエンターテイメントをてんこ盛りにしているのが人気なのかなあ〜〜・・・と思います。




最後にこれは個人的な考えですが、仮に民俗学の柳田 國男(やなぎた くにお)先生のような方が100年後の未来にいたとしたら、20世紀に太平洋戦争で大敗した日本・日本人は、戦後いかにしてここまで勤勉に働き、国家を富ませられたのか?国富を作った日本のサラリーマンとはいかなる人種でどういう考えを持ち行動しどのような生活をしていたのか?というのが赤裸々に理解できる書物だと言うかも知れません。



かっこよく働く男が島耕作なら、その反対の人物も紹介しましょう。

まともに読むに耐えられないほどの悲哀・心をえぐるストーリー作品

作家はギャンブル・博打うちの心理描写を描かせたらもはや第一人者の福本伸行先生です。


44歳土木作業員、さえないおっさん、独身もてない金もない黒沢の、ただただ毎日の哀愁と苦難の日々を描く物語です。


作業場の人から人気を取ろうと、みんなの弁当にただ一切れの天ぷらを入れるだけで何話もあって黒沢の心中や行動が四苦八苦で、逆に裏目に出てしまいます。
さらには中学生のオヤジ狩りにあった黒沢は苦しみながら闘って勝ちました。
勝ったはいいが、その中学生は帰国子女でお金持ちで、英語イタリア語が話せてその上女にもてて喧嘩が強いと、仲良くなった後黒沢は一緒に遊ぼうとするのですが、遊ぶ世界が違って一人から回りする。涙涙のおやじ悲哀ストーリーです。


なんとも主人公がもどかしく、正直読むのが恥ずかしくて辛くなってくる程の、主人公の心の中をめくるめくようにねちっこく描写する福本伸行先生の力量に完敗です。


福本伸行先生の作品はギャンブルを題材にした漫画で高い人気がありますが、この作品では博打抜きで、ほぼ主人公の一人称心理描写のみで作品を完成させたところに特筆があると私は思います。