下書き:いまさら、モバゲーFFの話。

【未完成のメモ書きです・・・】

さいきんモバゲーのFF(FINAL FANTASY BRIGADE:以下FF)をやっていて、初めての課金を奪われました。
ソーシャルゲームとしてのFFには「ゲームをいかにビジネスと繋げるか」という点の設計面で試行錯誤している部分が非常に伝わってきて面白いなと思ったので、それを書きます。

僕自身、ゲーム製作にはいくつか携わってますが、で働いてるわけではありません。専門的なノウハウも無いので、基本的には一介のヌルソーシャルゲーマーの言として、「週間少年ジャンプを読み終わっても未だ残っている潰すための時間」を潰すために読むくらいのゆるゆるスタンスで読んでもらえると幸いです。(ソーシャルゲームは50作品くらいしか触ったことがないので、「FFの他にも似たようなのがあるよ」というのがあったら教えてくださるとありがたいです)


まず、ソーシャルゲームは、

「数値」
「物語」
「ストレスレス」

の三つの要素が重要になっていると思います

A.「価値」の低さ
FF BRIGADEは、「価値」が低いです。

それはたとえば、
1.キャラクターレベル・武器レベルといった「数的」価値。
2.ポーション類・レアアイテムなどの「物的」価値

のことです。

まず1.について、
RPGの「レベルアップによる成長」など「目に見えた数値が変動すること」は、ゲームプレイヤーにとって楽しみの一つだと思います。
FFでは、経験値が0の状態でスタミナを使い切った場合、LVによらず基本的に40〜60%くらいまで貯まる印象です。通常は成長するにつれてLVUPの速度が鈍化していくデザインが多い気がしますが、スタートからLV50後半現在まで安定して成長速度が一貫している印象です。つまり前提として、「レベルアップ」しやすいゲームデザインになっていると思われます。

「レベルアップ」という目に見えた変化のインターバルを上手く設計することで、ユーザーをモチベートさせやすいと思われます。
たとえば、どんなに戦ってもなかなかレベルがあがらないRPGだと、ユーザーのプレイモチベーションは下がっていきます。
FFでは無いですが「レベル○○ごとに新しい特技を覚える」という頻度をどのくらいかに設計するかという別の軸も組み合わさるはずです。

「レベルアップのしやすさ」といえば、武器・アビリティのレベルもかなり上がりやすくなっています。武器を鍛える合成アイテムは特に手に入りやすく、LV100あたりまでカンストすることも容易で、一回に数十レベルくらいアップしたときはユーザーに爽快感があります。

つぎに2.について、
他のソシャゲにおけるスタミナやバトルポイントを回復するアイテム的な立ち位置の「ポーション」「エーテル」類は、従来の100%回復以外に、50%、25%回復といったように分化させ、下位の回復アイテムを作り出しています。これら下位の回復アイテムは、なんとログインボーナスでタダでもらえます。つまり通常なら100モバコインほどで購入した回復アイテムが「もらえてあたりまえ」のレベルにまで価値下落していることと捉えることが出来ます。

ここで上記の経験地テーブルのゆるさが活かされます。無料で支給されるアイテムをつぎ込むことで、無課金でも「あと少しでレベルアップだけどスタミナが切れてしまった…まあ回復アイテムはまた明日手に入るし、使ってもう少しプレイするか…」といったように、ユーザーに長い時間遊んでもらう工夫として機能していると思います。ボーナスは毎日手に入るので、スタミナの数値にアイテムの効果値が自動的に上乗せされることを前提に設計されているといってもいいかもしれません。

つまり「アイテム」という形で「量的な数値」を「質的なモノ」として拡張することによって、「アイテム」を「自分の意思」で「使用している」という能動的な満足感を与えているとも考えられます。

そこには「無料」という「お得感」もあります。

課金強者のブルジョアたちがスタドリを飲みあさる光景を、僕ら低/無課金集団のために無料の下位アイテムを設定することで、ユーザーは喜ぶはずです。

FFの設計的な面白さのひとつかなと思います。
またレアアイテムは、通常レアはそれこそ山のように、SRですら無課金でもそれなりに手に入ります

対象の「価値」が低ければ、当然それを取得するための「労力」が少なくなります。
また、「価値」は「数値」として、分かりやすく可視化されています。
そこでなにが生じているかというと…

「目に見える変化の起こる頻度が、安定して高い」

ということです。
ソーシャルゲームにおいて「目に見える変化」の頻度を多くし、ユーザーにプラスの刺激を与えることは、

ユーザーを喜ばせ、心を掴んだ状態なっていてはじめて、ビジネスチャンスが生まれる
ことにもつながります。
つまり、無料の回復アイテムをガンガン使って、ガンガンレベルが上がったり、ガンガンレアアイテムが手に入ったりすることで「おいらっち強くなってるんやけど〜www」という爽快感を喚起することに成功しているということです。

B.「価値」の設計

「プレイヤーの行動を、いかに数値として可視化するか」という問題です。
FFでは、「探検ドリランド」における「キング」的なモンスターを攻撃するごとに「ジョブレベル」を上げるためのポイントが手に入ります。
これは現行のソーシャルゲームの枠で考えるなら、なかなか面白いことだと思っています。

例えば「ドリランド」では、ただボスを攻撃するだけでは得がありません。
FFの面白い部分は、「ボスを殴ること」のモチベーションとして、「物語性」を帯びた「ジョブ」という要素を作り出し、それに付随する新しい価値基準(ジョブポイント)を作り上げたことだと思います。

また、特別なボスと戦うことで「CP」というポイントが入手でき、これも景品と交換できます。(初回のみ少ないCPで入手可能というのがまたニクイです)
「あらゆる行動に価値を与え、可視化する」というメソッドを徹底している。

ゲーム研究者である井上明人さんの 「GAMIFICATION」でも触れられていますが、プレイヤーの行動を測定するセンサーを張り巡らし、数値として可視化することはゲームにおいては有効な手段です。手前味噌ですが、「ゲームのちからで世界を変えよう会議」さんを取材させていただいた際の、こちらのゲーミフィケーションの記事をどうぞ

ゲームの力で世界を、そしてビジネスを変える

1.価値の適度なデフレーションを起こす
2.パラメータを「アイテム」という形で拡張する
3.ユーザーの行動を効果的に数値化する

というのが、モバゲーFFにおける、ユーザーを意識したシステムの基本的設計思想だと思います。
貴重なアイテムを入手したときの喜びや、プレイヤーが能動的に参加している感が強まっているのかなと思います。
レベルなど数値上昇の基準を低水準にすることで、モチベーション維持を強めていると考えられます。

C.チョコボ
たぶん散々いわれてますがあえて。

これまでのソーシャルゲームの多くは、
静的なシステムとして備え付けられている「ガチャ」にお金を投入すれば、レアでクールなべリナイス☆強者(つわもの)カードをいつでも入手できるというものでした
FFは、そこに「チョコボ」という動的な要素を導入し、出現を偶発性に委ねています。

お金を「ガチャ」に入れて、めでたしめでたし…そして世界はレアカードの炎に包まれた…
というわけでなく、まずチョコボのエサ的なサムシングを購入して、それからチョコボ本体を見つけなければなりません。

つまり、「ガチャ!課金!レアカード!ドヤァ!」的な方式ではなく、「チョコボが現れた!→餌付けしろよオラァ!」という物語性を挿入することで、「課金に対する妥当性」を生み出しています。

ユーザーからの「情報提供」という形でも、餌付けの権利を得ることが出来ます。
しかし、ガチャマシンとちがってチョコボはナマモノだから、そりゃどっかいったりもするでしょう。
だから情報にも「48時間」という取得制限があります。このように課金機会を時限性にすることで、「やばい!早くエサをやらないと逃げる!」という背景から、気がついたら購入画面でクレジットカード番号16桁を入力している自分に気づくはずです(ぼくはそうでした)

日本での課金モデルは海外ではウケが悪いらしく(やはり「課金への妥当性」を筆頭に文化的な問題があるらしいです)、海外向けの対策の実験場としても機能させているのかな
物語をビジネスに用いる「ナラティブマーケティング」という概念がもてはやされた時期もあったそうですが、チョコボの事例は、ナラティブマーケティングの新基軸として位置づけられるのかなと思います。

http://www.amazon.co.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%A7%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-SeriesMarketing-%E5%B1%B1%E5%B7%9D-%E6%82%9F/dp/4820744542/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1331187462&sr=1-1

いままでのオンラインゲームのようなアイテム課金の形に近づいていくのかなと思ったりします。
GREEさんはMMOっぽいソーシャルゲームをリリースしてたのでそれなのかな(まだやってないのでわかりませんが)

海外展開に向けた試金石として、システムによる「必然性」から、動的な「偶発性」に設計思想をシフトしたプロダクトの実験をしているのすることで、課金機会を物語的に自然と創出しているのではないでしょうか。

D.ストレスレスな設計
上記3点は、あくまで「ユーザーがプレイしてくれる限りにおいて」有効なポイントです。
これです。
FFは、あらかじめまとまった分の進行をダウンロードしている方式らしく、通常のクエスト進行における画面遷移がスムーズです(しかし相対的に、チョコボ出現→餌付け結果までの画面遷移がとんでもなくだるく感じる人が多いという話を多く聞くので、さらなる改善の余地があるのかなと思いました)

ストレスレスに関しては、インディーズゲーム製作者であるモスーさんのゲーム設計思想を、現行のソーシャルゲームに当てはめられる部分もあるかなと思います。
ゲームを作るときに力を入れている所はありますか?http://theinterviews.jp/mos_taro/71972
「ゲームプレイヤーは一秒でも長くゲームに干渉していたいのです」

ーー

上記とはずれるのですが、

FF以外でも思うのですが、クエストの合間に出現するボスが現状ただの生きたサンドバックと化していることが多く、存在の必要性が薄いと感じるので、なにかしら修正を入れることもできるんじゃないでしょうか。

たとえば経営学の文脈において、様々な事業部門が共同して営みを行う企業体において、機能していない部門は、

1.活性化させる(ボスに何らかの意味を持たせる)
2.撤退する(ボスをなくす)

のどちらかだと思うので、なにかしらの処置をとってもいいんじゃないでしょうか。

ーー

多くのユーザーに楽しみながら課金してもらうためには、上記の「数値」「物語」「ストレスレス」の3つの要素が、今後のソーシャルゲーム設計において重要になってくるのではないかと考えます。

非常に質の高いソーシャルゲーム分析などを行っているgigirさんやrikzenさんのような記事を書きたかったのですが、専門的アプローチが出来ないノーバリュー文系ゴミ人間パーソンの僕にはこれが限界でした。

とりま、FFは、一般的に思われているソシャゲの「ガチャ☆ウハウハ」なバブリーイメージとは裏腹に、プロダクトとして堅実に作りこんでいるものだなと思いました。既存のソーシャルゲームのノウハウをぎっしりつぎ込んだ、という所感です。徹底した価値のデフレにより、初動でプレイヤーを掴むことに成功している印象ですが、今後にどういったアプローチをするのかが気になります。レアアイテムが出すぎは、有り難味の無さに繋がり、ユーザー離れに繋がるかもしれません。

モバゲーの「アリス大戦」とかちょっと触ってみると、物語性を重視した設計や時間別ログインボーナス(ランチボーナス、イブニングボーナス)、デートイベント(これはギアスにもありますね)など、新しい設計の形を模索しているんだなと感じることが出来ます。DeNAさんの今後のプロダクトを楽しみにしたいですね。