午前中は涼しかったが、午後からは暑く。
 宮崎、大分では雨がガンガン降っているけど、九州山地で全部降って、こっちでは全然降らない。熊本に限れば、本当に影響ないな。フェーン現象で暑くなっているのだろうけど…
 しかし、本当に屋久島を一周しやがった。

『歴史群像』2018/8号

歴史群像 2018年 08 月号 [雑誌]

歴史群像 2018年 08 月号 [雑誌]

 150号記念ということで、ボードゲーム付き。ボードゲームのほうは、まだ開封していない。
 今回はドイツ陸軍特集ということで、あちこちドイツ軍尽くし。しかし、こうして見ると、国力が劣った状態で、戦争技術に物を言わせなければならない無理が、ドイツ軍の悲劇だなあ、と。


白石光「鉄十字のタンクキラー」
 突撃砲や対戦車自走砲のモノクロ写真を彩色したもの。彩色したものとはいえ、汚れ方なんかは参考になるなあ。特に、上面から見たヘッツァー、こういう上の汚れ方は、なかなか分からないから貴重。しかし、この写真、どういうシチュエーションなんだろう。あとは、ジャーマングレーのマルダー3とか。


有坂純「フリードリヒ大王のウォー・マシーン」
 18世紀は、完全に「近代」だと思うが。軍事史では、時代区分が違うのだろうか…
 フリードリヒ大王の軍隊を強者たらしめた、いくつかの技術。軍楽による歩調行進が、戦場での隔絶した機動力を与えた。また、鉄製のさく杖のよる射撃速度の優位。一方、プロイセン軍は、弾をばら撒くことに主眼が置かれ、イングランド軍の輪番射撃のような精度は軽視していた、と。


守屋純「ドイツとドイツ陸軍の歴史」
 17世紀、プロイセンの草創期からの、陸軍の歴史。フリードリヒ大王の軍事的成功、ナポレオン戦争における敗北と軍制改革、ドイツ統一に繋がる普墺、普仏戦争において参謀本部や鉄道利用による勝利、帝国の錯綜した制度、外交のグランドプランを見ない戦争計画とそれに国の命運が掛けられてしまった状況、第一次世界大戦における近視眼的な戦争指導と「戦争目的」の欠如による国家の崩壊、ワイマール共和国を経てナチ政権に取り込まれる。一連の歴史を紹介


守屋純「ドイツ陸軍とバルバロッサ作戦」
 むしろ、陸軍も推進の中心だったと。対イギリス戦で、リソースを空軍、海軍に持って行かれそうになった陸軍は、組織防衛のために、早くから対ソ侵攻のプランを練って、そちらにヒトラーの関心を持っていった、と。
 そして、ソ連軍の軍事力に対する過小評価の問題。


古峰文三「ドイツ陸軍装備変遷史」
 ドイツ軍の装備のうち、小銃、手榴弾、野砲、戦車に絞って、その背景の戦術思想とともに概観している。
 後装式ライフル、ドライゼ銃に始まるボルトアクション小銃の歴史。7.92ミリ×57ミリの弾薬の重要性。一方で、第一次世界大戦以降の銃身を短縮した万能小銃の導入に遅れを取った。
 その後の、セミオートライフルや突撃銃の導入の経緯。第一次上海事変で、小銃戦闘距離が400メートル前後という戦訓を日本もドイツも学んだという話が興味深い。あとは、軽機関銃が、火力のメインになっていく、とか。
 ドイツ軍といえば棒付き手榴弾というイメージがあるが、実際には卵型手榴弾も同じくらい作られていた。しかし、卵型は、安全に投擲するには体力と訓練が必要で、戦争後半の資質の劣る兵には、棒つきのほうが良かったという。それが、連合軍側に強い印象を残した。
 75ミリ対戦車砲が、砲兵を補う歩兵火力となっていたという指摘も興味深い。75ミリといえば、日本軍の野砲と同じ口径だしな。
 自動車産業の生産能力で劣るドイツは、軍の車両化に苦しんだこと。戦車にしても、その生産基盤の薄さに苦労した。本格的戦車が生産できるようになるまでには、時間がかかった。そのストップギャップが二号戦車やチェコ製戦車。また、ドイツ軍のメインの戦車の体系は、前半が主力戦車三号と支援戦車四号、後半にはパンター、これに、砲兵の「戦車」である突撃砲が加わる、意外とシンプルな構成。それに、代用戦車が加わるために雑多に見える。
 大型戦車工場ニーベルンゲンヴェルクの話が興味深い。ソ連の似たような専用工場に比べ、徹底性を欠く。ついでに、それが少数の重戦車の生産のためにリソースを喰われてしまったという、ドイツの物量戦への不定見。


山崎雅弘「ドイツ陸軍の中国派遣軍事顧問団」
 中国軍の中核を近代化したのは、ドイツの軍事顧問と。敗戦国ドイツと一地方軍閥の国民党政権の協力関係。よく考えると、国民党の支援者とよく同盟を結ぶ気になったなあ。最終的には、日本との同盟関係を考慮して、撤退となったわけだが。
 小銃、火砲、各種弾薬の生産工場の供与は、まさに中国軍の継戦能力を支えたわけで、かなり日本の死命を決した感があるなあ。


田村英紀「36年型野戦服」
 いろいろと試作やモデルチェンジがあるのだな。後半の生産過程の紹介が興味深い。現在でもそうだが、縫製は、相当に労働集約的な産業なのだな。規格品だけに、ボタン縫いとか、ポケットの成型用アイロンなどの機械化も考慮されている。一枚の生地を、いかに無駄なく使い尽くすかも、重要な問題。これに、着心地や耐久性も重要な問題になると。
 20センチの厚さに積みあげた生地から、パーツを裁断していくのか。


モリナガ・ヨウ「迷宮歴史倶楽部:敵機の姿を耳で捕まえろ!2 聴音壕」
 へえ。敵機の音を聞き取るための、雑音カット用の土木施設。こういうのがあるのか。
 ステルス機が出てきた現代こそ、重要だったりしそう。音波による捕捉。


久野潤「インタビュー:「盤谷丸」と「伊四〇一」に乗り込んだ信号兵:廣野昌勇』
 特設巡洋艦の乗組みから潜水艦へ。特設巡洋艦の役割の変化が興味深いな。防潜網や機雷の敷設、近海警備から、南洋での輸送任務。その過程で、潜水艦に撃沈される。船倉にいる陸兵より、船員の方が生き延びやすいのか。
 ウルシー攻撃に至る伊401潜の行動とか。


手塚正己「一等輸送艦奮戦記」
 沖縄戦開始直後の、奄美大島への輸送作戦の顛末。17号一等輸送艦は、2ヶ月で撃沈されたわけか。艦載機の集中攻撃で、輸送船団のなかでも目立つ一等輸送艦海防艦が撃沈。
 生き残った乗員は、二等輸送艦で帰還。帰りがけに、沖縄へ水上特攻を行う大和以下の艦隊とすれ違い、発光信号を交わしたエピソードが印象深い。
 沖縄への最後の輸送を成功させていたり、短い生涯で成果は大きいとも言えそう。