第8回 『大罪を犯す』

遠まわりする雛』に収録されてある短編の2番目に時系列が早い話です。

何気ない話を、放課後の教室でする、というのが根幹にある話です。
時系列的には、2000年6月。『氷菓』の4章と5章の間にあたる話です。
初出は、雑誌「野性時代」第41号(平成19年4月号)です。

6月とある日の5時限目。静かな、そして一般的な授業風景の中、奉太郎の隣の教室から大きな怒鳴り声が。奉太郎の教室もどよめきます。そんな中、怒鳴り声の間に女の声が。えるの声。その声が沈黙すると隣の教室も静かになった。
放課後、えるからそのときの話を聞く。
授業は数学。どうやら、授業数が1時間間違っていて、次の単元の問題だったので、数学優秀な生徒でも解けない。その事に数学教師は腹をたて、怒鳴る。そこにえるが授業の進行に誤解はないかと数学教師に問い詰める……
すると教師は「ああそうか」と呟いて通常の授業へ……

一通り話すと、えるは云います。「なぜ、数学教師は授業の進度を間違ってそしてなぜ私は怒ったのかわからない」

「私気になります」

推理の結論はそれこそ、里志や摩耶花の協力を得なければ解決しきれ得ないものでした。意外な結論に「ああそうか」と数学教師と同じような感想(云ってる意味は違いますが)を抱きました。

なぜ、題名が「大罪を犯す」かは、だいたいわかりますよね?
あ、すいません。なんかちょっと上から目線で。

数学教師のミスに怒ったえるもミスを犯してしまった。
そう、二人のミスは「7つの大罪」の中の「憤怒」。

と、奉太郎が思ってしまうのも結局は「7つの大罪」の中の「傲慢」で。
4人の様々な「大罪」と、ちょっとした放課後の一コマがいかにも青春らしい一篇でした。

次回は「正体見たり」です。
なんと、本日深夜アップ!
お楽しみに。