第9回 『正体見たり』

短編集『遠まわりする雛』の第三篇です。

古典部で温泉に行く話です。
時系列的には愚者のエンドロールの後、2学期始業の前、にあたる話です。
初出は、「The Sneaker」2002年4月号。

古典部は摩耶花の親戚が営業している温泉宿が改装中との事なので、無料で部屋を貸してもらえることに。古典部一同をおもてなししたのは摩耶花の姪にあたる善名梨絵・嘉代姉妹。早速夕飯を食べ、風呂へ。お風呂でゆっくりしている奉太郎でしたが、湯あたりを起こし休むことに。
隣の部屋からは怪談話が聞こえる。首吊りの幽霊がこの民宿には出る。といった話を。
翌日、12時間強の睡眠をした奉太郎は朝飯を食べに食堂へと降りる。後から来た摩耶花の様子が怪しい。事によると、昨日の夜に例の怪談話をした後、向かいの部屋に首吊りの幽霊が現れたらしい。奉太郎はそれを聞いて諺を1つ、
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」
するとえるは
「何を見間違えたのでしょう」

「私、気になりますから」

推理の結論は姉妹の関係、そして夏祭り、雨にありました。
浴衣は姉の梨絵しか持っていない……

これ以上はネタバレになりますからやめます。
読み終わると兄弟のことを考えさせられます。
兄弟がいる身にとって兄弟は鬱陶しく手放したいもの。
兄弟がいない身にとって兄弟はとても欲しいもの。
二つの考えがえると奉太郎の間に流れます。
この話は同性だからこそありえる出来事。
私には妹しかいないので、わかりえません。
しかしもし私が女性だったら、こんなこともありえたのかもしれない……
ちょっと、心が痛んだ話です。妹視点から見ると。

112ページに、『クドリャフカ』の伏線とも取れる1文があります。
それは、読んでからのお楽しみに。

次回は「心あたりのあるものは」です。
今週のお題は『遠まわりする雛』全7作が終わり次第答えたいと思います。