奥の部屋

奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)

奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)

ホラー・ストーリーと一味違うストレンジ・ストーリーの数々で編まれた邦訳オリジナル。その中でも比較的オチが明確に付いている「待合室」と表題作がやはりイメージとして残りやすい。しかし「恍惚」の慣れない旅先での見知らぬ家への訪問の何が起こるでもないただ単に気味の悪い落ち着きなさ等もそれと劣らず鮮烈とも言えて、いつも人の精神は思っていたよりも移ろいやすく動きやすいものなのだと、その地味な真実がつきつめれば最も怖いのかもしれないと考えが至る。他にあまりない読後感の作家である。

不思議の国のアリス

不思議の国のアリス (角川文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)

訳が新しく、テニスンの挿絵のレイアウトも的確で全体としてテンポが生まれており、コミカルに読める。特にウミガメとグリフォンがアリスを挟んで踊り歌うくだりは吹き出しそうになるほど。実はこの有名な物語を通して読んだのは初めてで、案外に章の数が少ないのだなとようやく知った。