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2016-01-12

補足・マジックタイム

先日、ネイキッドロフトで行われた「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」を語る会に出演させてもらった。当日の状況はこちらのまとめで雰囲気を掴んでいただくとして。自分は第3部でいくつかの話数について紹介を兼ねた推薦をしたのだけど、力不足もあって説明しきれないところがあった。特に『響け!ユーフォニアム』第8話「おまつりトライアングル」の特徴、演出への言及はもう少し解りやすく出来たなという思いもあり、ここで補足してみようと思う。

映像・写真用語に「マジックタイム」(マジックアワー)と呼ばれるものがある。日没後の薄明かりが美しい時間帯を指す言葉で、文字通りドラマティックで幻想的な写真が撮れると言われている。三谷幸喜監督作品「ザ・マジックアワー」はこの言葉に由来する映画。売れない俳優がひとときの劇的な時間を過ごすことを喩え、タイトルにしているわけだ。

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「おまつりトライアングル」も同様に、ハードな吹奏楽の練習が続く日々にふと訪れた束の間の時間を魔法のように演出している。夜空を反射し、青く染まった麗奈のワンピースはその象徴的な意匠だ。澄んだ空気の青み掛かった表現――ブルーアワーとも呼ばれるマジックタイムの効果を示すため、白いワンピースを視覚的に青くする。「青」は麗奈のイメージカラーであり、思春期の色でもある。様々な青に、魔法をかける特別な時間。「特別になりたい」麗奈のキャラクターを映す回にこれほど相応しいアイディアは他にないだろう。コンセプトデザインとしてのマジックタイム、それが「おまつりトライアングル」の演出的なおもしろさだ。

……ということを簡潔に述べようとしたのだけど、イマイチうまく噛み砕いて説明できなかった。ここまで言った上で、「話数単位で語るという会の趣旨にも合致した『特別な話数』ではないか」と締めておけばそれっぽくなった気がするが、これは後の祭り。

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つけ加えるなら、同じ青春という特別な期間にマジックタイムをマッチさせたアニメの例として、『花咲くいろは』がある。まだ夜が明ける前から起きて仕事を始める緒花たち。彼女らがいつも見ているはずの、夜と朝の境い目にある凛とした空気――そのマジックタイムの画は作品を代表するものだと安藤真裕監督みずから語っていた。想起されるのはこれから咲き誇っていくだろう、花のつぼみにしたたる朝露。緒花が喜翆荘で働いていた日々はそんな朝露のきらめきを思わせる。早朝のわずかな時間にだけ訪れる爽涼とした青みを青春のきらめきと交差させ、イメージをつなげているのだ。

以上が補足になる(『花いろ』は補足の補足だけど)。頭の片隅にでも覚えておいてもらえれば、再視聴のたすけになるかもしれない。よろしくどうぞ。


4802150520アニメスタイル007 (メディアパルムック)
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メディア・パル 2015-11-30

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