読書記録

Modular Forms: Basics and Beyond (Springer Monographs in Mathematics) (English Edition)

Modular Forms: Basics and Beyond (Springer Monographs in Mathematics) (English Edition)

春先に買ったのだが、夏になって読んでいる。
「読む」というのは私には無理で、帳面をつけながら確認している。
一度数学が嫌になった人にお勧めの作業である。
丁寧に「読んで」いると必ず答えが出るという、練習問題帳みたいな感じだ。
練習問題帳として楽しいのはそれぞれに大切な意味を感じられるからであろう。
half-integral weightの概念はθ関数から自然に導入される。
と書いたが、\Gamma^\thetaをうまく定めているところが本質的なようだ。この辺りまではSiegel upper space で書かれている。
後の所は1-dimensionalのようだ。著者が意図したようにtransparentになったかどうかは別だが、良い勉強にはなる。
残りはhalf-integral weightでDirichret seriesとEisenstein seriesを扱うのが主眼のようだ。
題名は"Basics and Beyond"なのだが、多分"Basics"の部分が前半で多次元で易しく書けるところまで、後半は2つが混じり合ったものと見るべきなのだろう。


多次元のの話を続ければ、せっかくの"genus"から、abelian variety(multiple torus)が出てくるのであろう。


見つけた誤記
P.ix-x Legendre-Jacobi symbol\left(\frac{a}{b}\right)が定義されているが、bが偶数の場合が書き落としてある。(後P.28に使われる)
いずれ、Dirichlet characterと一緒に把握しないと意味が無いと思うが、Kronecker symbol (https://en.wikipedia.org/wiki/Kronecker_symbol)に拡張する必要がある。或いは私の知らない別の拡張なのかもしれない。
\left(\frac{a}{b}\right)はbが偶数の場合は0とする
で後の表記がされている。


P.28 こちらは注記ということになる。
\varphi(m)=\left(\frac{3}{m}\right)がDirichlet character with modulo 12になるらしいが、それだけなら、\varphi(m)=0 (m: even) としてしまっても構わない気もする。(Kronecker symbolでもそうなるが、後の計算がとてもできそうにない)と書いたが、φ(偶数) = 0 なら、mod12 で4つしかnonzeroな項は出てこないので、計算できそうに思う。いや、そこの計算は易しい。
大幅に訂正、Dirichlet characterを勘違いしていた。modulo 12なら必然的に偶数は0でなければならない。
正しくは\eta(z)^{24}=\eta(z+1)^{24}\varphiの12周期性だけで出せている。


P.14 一箇所、S_n(\mathbb{Z}) は S_n(\mathbb{Q})でなくては困るところがある。


P.29 (g||_{nk} \alpha)(p(z))=... は p( (g||_{nk} \alpha)(z) )=...が正しい。


P.29 f_1=f||_k \deltaf_1=f||_k \sigma_\deltaが正しい。
この2つは読んでいればすぐわかる。
このLemmaの証明は著者も書いている「後で使わない」せいか、退屈な、やる気の無さを感じる。


P.36 L.13 y|p_\xi(z)|=|\bar{f}hy^{k-1}|\circ\xiとあるが、y|p_\xi(z)|=|\bar{f}hy^{k-1}|が正しい。



どうであれ、この本には恐ろしいほどミスがない。