あなたはいつ論文を投稿しますか?

tatsuamano2013-08-04

7月中旬から続いていた猛暑もひと段落したような気温が続き、そろそろ夏も終わりか…?と思わせる毎日です。
学校が夏休みに入ったということもあってか、ビルやアンドリューなど教授陣も続々と夏休みに出かけていきました。ティータイムに顔を合わせて話しているうちにだいぶ話が理解できるようになったマックナリーも、「インテコル行かずに北極海クルーズ(!)行くから」と笑って去っていきました。
こんな中で働き続けるのは日本人だけかと思いきや、周りを見回せば研究室のいつもの面々が休みも取らず働き続けています。特に今年は博士論文を書いている学生が4,5人いるため、憔悴の色を隠しきれない面々もちらほら… 「初めは世界を救おう!と思って入ってきたのに、博士論文を書いているとどんどん自分の仕事の小ささを実感してへこむ」とそんな会話をして大きくうなずきあうドクター3,4年生。とはいえ彼ら彼女らの仕事は、例え少しずつだとしても世界を確実に変えていくんだろうなと傍から見て思っています。
そんななか、Biological Conservationに少し珍しい論文が発表されていることに気付きました。
Campos-Arceiz A, Koh LP and Primack R (2013) Are conservation biologists working too hard? Biological Conservation 166: 186–190.
同誌に投稿された論文や査読の投稿時間をデータとして解析した論文です。投稿時間=勤務時間、という前提をしているので留意事項はありそうですが、国間の傾向がなかなか面白いものでした。
主要な結果としては、
・週末に投稿された論文の割合は、ベルギーやノルウェーの5%以下から、中国やインドの約20%まで国によって大きく異なる
・平日の勤務時間外(夜間)に投稿された論文の割合は日本が群を抜いて高く、約30%
など。自分はいつ論文や査読レポートを投稿するだろうと思い返したのですが、最優先させたい論文は平日日中に、空き時間などに済ませたい査読は夜間や休日に返すことも多いような気がしました。
なおこの論文の著者ですが、自分が学生の時に同じ研究室に所属していたアイムサだということに途中で気付きました。日本の勤務時間外労働について、彼の考察:
“Japanese scientists are known for their unusually long working hours, and many often work in their offices until nearly midnight on a regular basis (Campos-Arceiz, personal observation).”
パーソナル・オブザベーション(笑)。きっと彼の周りにいた辻君や吉原君を観察した経験に基づいているんでしょう。
勤務時間外や休日に働いているひとつの理由として、平日日中の教育活動や雑用の多さを挙げ、彼自身もこの論文は勤務時間外に執筆したと告白しています。国や研究機関によって研究以外に費やす時間割合がどのくらい異なるのかは是非とも知りたいところですね…
全く関係ありませんが、知り合いに教わってケンブリッジ近くのDevil's Dykeというところにチョウを見に行ってきました。ここは6世紀後半から7世紀前半にブリトン人に対抗するサクソン人によって築かれたという堤で、イングランド南部に特有なchalk grasslandが広がっています。

Chalkhill blueという水色の鮮やかなチョウが無数に乱舞していました。

羽が…

背景が…
ケンブリッジ周辺は、Chalkhill blueの分布域ほぼ北限ですが、近年温暖化の影響で増えているそうです。詳しくは、「詳しすぎる」Butterfly Conservation及びUK Butterfly Monitoring Schemeのウェブサイトをご参照ください。
また、イギリス人のナチュラリストは大抵「ガ」に夢中です。国内でもいろいろな模様の種が身近に見られるからではないかと思っているのですが、本当のところはどうなんでしょうか…

Six-spot burnet