「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」を読んだよ

[あらすじ from 新潮社HP]
心優しいオタク青年オスカーの最大の悩みは、女の子にまったくモテないこと。どうやら彼の恋の行く手を阻んでいるのは、かつて祖父や母を苦しめたのと同じ、ドミニカの呪いらしい――。英語とスペイン語マジックリアリズムオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。英米で100万部のベストセラー、日本上陸。

気になっていた最近の海外小説シリーズもパート3ということで、最後にジュノ・ディアス著、都甲幸治・久保尚美訳の『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を読みました。とにかく新しい文学のはじまりなんて言葉で強烈なポップと印象的な表紙で目だっていた本作でしたが、まさしく未体験ながらも古典的な読書体験でした。いやはや最高。

アメリカに住みながらどうしても抜け出せないものに捕らわれてしまう、(作中で”フク”と呼ばれるまさしく”呪い”)、そんなオスカーがどこまでもドミニカ男らしく闘っちゃうんですよ。どうしようもないオタク(イメージ的にはアメリカ映画に出てくるナードが近いけど)で、ドミニカ男のかけらも感じられないぐらい女の子の扱いが苦手なオスカーなのに。
指輪物語スターウォーズはもちろんアメリカンヒーローや日本アニメ(マクロスAKIRA、キャプテンハーロックまで!)からの引用が作中に散りばめられて、スペイン語の響きとともに、ポップなテンポで本を読み進めていくことができるのですが、そこにはドミニカの暗い歴史(不勉強で全く知りませんでした)を中心とした暴力の力が色濃く渦巻いていて、気づくと心にずっしりと響いています。


オスカーの歩んだ短く凄まじい道のりは、誰も辿りたいとは思わないだろうけど、憧れずにはいられない。
あんたカッコいいよ。

そんなことを思いました。