小野智吉という男
俺のトモキチが行ってしまう。
一緒に腕まくりをして戦ったトモキチが横浜を去ってしまう。
いつかはこの時が来るかもしれないと毎年覚悟しながら安心してきたのに。
今年も多数の選手の契約未更新が伝えられる中、名前がなかったので安心していたのに。
なんてこった…。
2002年に当時J2で2年目を戦う横浜に臼井幸平と共に元湘南から空白期間を経て加入したトモキチ。背番号は23番。
2002年途中に森田信吾(シンゴ)から左SBのポジションを奪うと、鋭いドリブルよりもスピードと的確なクロスであっという間に定着。
ところが2004年は怪我が響いて中島崇典(なかじ)にポジションを奪われてしまいます。
しかし2005年には、ポジションを前に移して左MFとして復活。左右どちらでもこなせる器用さと、相手を使うプレー、使われるプレーのうまさから左右のMFとして2006年のJ2優勝を大きく支えた選手となりました。
暑い時期には半袖を肩までまくりあげて、上下動を90分間繰り返すトモキチを僕は大好きでした。
2007年からは起用がかなり減り、その後の監督の考えでサイドよりもボランチで使われる機会の多かった智吉。
サイドで使ってもらえば、どれだけ良いプレイができただろうか、と思わざるを得ません。
ほんとうに残念です。
僕の記憶に残るトモキチのプレー3つ。
それは
まず
J2優勝した2006年11月18日J2第49節対神戸戦でのプレー。
2-1で首位を奪還した試合の先制点だった。
35分、トモキチのフィードからこぼれ球をヤマが拾って前線まで持ち込みます。これは一度潰されますが、クリアボールをタッキーが中でインターセプトして左の山口がワンタッチで中の城へ、さらにカズへ渡って大外を駆け抜けたトモキチが深いところから上げたクロスを、ファーで城がDF2人の間に割って入ってヘディングでゴール。
というプレー。
ほかには、復帰後初のゲームで1ゴール2アシストを決めた2009年7月26日J2第30節対東京V戦。せっかくのヒーローチャンスを当時ヴェルディにいて、なんだか横浜にも今年いてくれたらしいオーグロっつー選手のせいでそれどころじゃなくなっちゃった試合。
そして意外なところで記憶に残っているのが、「雨中のファンタジー」と銘打った、2005年7月9日J2第20節対鳥栖戦での伝説のPK外し。なんとGKは本職ではなくFW氏原。
とにかく、記憶にも記録にも残る横浜の歴史に残る素晴らしい職人だったトモキチ。
明日の試合のバラ一輪。
俺はトモキチに贈る。