PRINCESS KNIGHT 第一章?

はい、ちょっと間が空きましたが第三話です。う〜ん、しかしこのペースで果たして終わるのはいつになるのやら(おw






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「できたっ♪」
  嬉しそうに声を上げ、サファイアは自ら作ったブーケを母親に掲げて見せた。
「あら、上手に出来たわね。じゃあ、あとはそれにリボンをかければ…」
  王妃がそう言いかけた時、定時を告げる鐘が鳴り響いた。すると、サファイアはそれまで浮かべていた柔らかな笑みを消すと、すっくと立ち上がった。
「いけない、もう時間です。いかなければ…」
  そう言ったその声音からは先ほどまでの愛らしい響きはすっかりと消え失せていた。
「あ、サ、サファイア…」
  どこか困惑しながらわが子を呼び止める王妃に対し、サファイアは告げた。
「申し訳ありません、母上。また、後程。」
  そう言うとサファイアは足早にその場から駆け去っていくのだった。


サファイア…」
  悲しげにわが子が去っていった方角を見つめていた王妃であったが、いつまでそうしていても仕方がなかった。力なく立ち上がると庭園脇のテラスへと戻っていく。そこには王族たちが一息つくための簡単なテーブルと椅子が用意されているのだ。
「あら…」
  王妃がテラスに戻ってくると、既に先客が彼女を待っていた。
「どうした、浮かない顔をして。何かあったのか?」
  そう言って王妃に声をかけたこの人物こそシルバーランド第13代国王にしてサファイアの父、エビラ王その人であった。
「いえ、別に…。あなたこそどうしてここに?」
「何、思っていたより早く公務が片付いたのでな。そなたとサファイアがこちらに来ていると聞いて立ち寄ってみたのだよ」
「そうでしたか…」
  そう言うと王妃も王の向かいの椅子に腰掛ける。
「ところでサファイアはどうした?一緒ではないのか?」
「いえ、あの子は今…」
  そこまで言って王妃は言いよどんだ。その場には2人の他にも王に随伴している従者が2名いたからだ。すぐにそのことを察した王は従者に向かって命じる。
「お前たちももう良い。下がってよいぞ」
  命ぜられると従者はすぐにその場から去っていった。王妃はまだ俯きながら黙っている。
「…そなたはまだあの子に女の格好なぞさせているのか?」
「それの何がいけないのです?」
  非難の色を込めて王妃は王に反駁する。
「もう何度も言ったはずだ。あの子は、サファイアはこの国の王位を継ぐ者だ。そしてこの国の王位を継ぐのは男でなければならない。なまじ女の格好なぞをさせていては未練が募るばかりだ」
「あの子は女の子ですっ!」
  王妃は思わず声を荒げていた。王は従者たちが十分離れているのを横目に確認しながら王妃に声をかけた。
「仕方がなかろう。もしサファイアが女であることが国中に知れ渡れば、この国の王位は大臣の息子が継ぐことになるのだ。しかし、まだ大臣の息子は幼い。そうなればこの国の実権は大臣が握ることになる。あの男は野心家だ。そうなれば苦労して築き上げてきたゴールドランドとの和平も…」
「仕方がない…?」
  王の言葉を遮るように王妃はつぶやいた。
「あの子が、サファイアが生まれた時にもあなたはそうおっしゃいましたわね。そして私が二度と子供の産めない体であると分かった時も…」
「辛いのは私も同じだっ!」
  今度は王が声を荒げる番だった。王妃はハッとしたように王の顔を見る。
「私とてサファイアが女であると何度国中にそう告げたかったか。しかし、それはできないのだ。分かってくれぬか、王妃よ」
「…あなたは最近あの子の女の子である姿を見たことがありますか?」
「え…?」
虚を突かれたように王は押し黙った。
「年々女らしくなっていくあの子の姿を見てもなお、そんなことがあなたには言えるのですか?私はもう耐えられない…」
  そう言って泣き伏す王妃に対し王はかける言葉が見つからずに困惑する。
「王妃よ…」
  その時爽やかな声が2人にかけられた。
「母上!こちらにおいででしたか。父上も御機嫌麗しゅうございます」
  そう言って純白のマントを翻し、王子の装いのサファイアが2人の元に歩み寄ってきた。
サファイア、そなたも変わりないか?」
  何事も無かったかのように王はサファイアに問いかけた。
「ええ、それはもう。母上はどうかされたのですか?」
  サファイアは不思議そうに伏し目がちにしている王妃を見遣った。
「いえ、何でもないのですよ…」
  そう言うと王妃はまたサファイアから顔を背けてしまった。
「ところでサファイア、今日の予定は?」
  場を取り繕うようにやや焦り気味に王はサファイアに問うた。
「はい、今日は午後から馬術の稽古が、夜は侍従長より法学の教授を受けることになっております」
「うむ、王子として学ぶべきことは多いからな。あぁ、それと王子よ。明日の閲兵式にはそなたにも出てもらうからな」
「閲兵式に?私がですか?」
「ああ、そなたももうすぐ16。立太子の時期も近い。おいおい様々な公務も私の代わりに務めてもらうことになるであろうからな」
「はい!」
  そう答えるサファイアの顔には父親から一人前に認めてもらえたことに喜びを感じている様子がありありと浮かんでいた。しかし、そんなサファイアの顔を見つめながら王妃は、今後も王子として振舞わなければならないわが子の運命に思いを馳せるとやり切れない気持ちに成らざるを得なかった。
「余り引き止めていては悪いな。王子よ、行け。これからも励むのだぞ」
「はい!あ、母上。もし宜しかったらこれを…」
  するとサファイアはそれまで後ろ手に持っていたモノを遠慮がちに差し出した。
「まぁ、これは…」
  それは先ほど2人で摘んでいたマルメロの花のブーケであった。キチンとリボンもかけてある。
「自己流でやってみたので不恰好かもしれませんが…」
「いえ、とってもキレイに出来ているわ」
「本当ですか?良かった」
  そう言って照れながら笑う顔にまだ姫の面影を残しているのに気づき、王妃は思わず目頭が熱くなるのを堪えた。
「では、父上、母上。失礼致します」
  マントを翻すとサファイアは颯爽とその場を去っていった。その背中を頼もしげに見つめながら王は王妃に声をかけた。
「優しい子ではないか。あの子ならきっと立派な王になってくれるであろう」
「ええ…」
  満足そうに笑みを浮かべる王に対し、それでもなお王妃は晴れやかな気持ちになることはできなかった。





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以上第三話です。なかなか本編進みませんが、どうかご容赦をm(__)m 次回はあの『かっけー』お方が登場予定です。