珍しいキノコ舞踊団「FLOWER PICKING」

「フリル(ミニ)」や「フリル(ミニ)ワイルド」など、劇場以外での上演のほうがこのカンパニーは絶対に楽しい。すでに一度観たというリピーターの同僚に「ここで観るのがベストポジション」という席位置をナビってもらいながら観劇。
会場のCLASKAはなるほどこじゃれたホテル。カフェはなかなか居心地良さそう。まぁ駅から結構歩くから来る機会あんまりなさそうだけど。近所の人にはいいんだろうな。まず最初は1階のカフェ、普通にお茶してるお客さんなんかもいる中で開演。中央の一番大きなテーブルに座ったメンバーたちが、おしゃべりしながら、いつのまにか踊り始める……という感じ。ただ、その踊り始めるまでの時間が、正直、居心地悪い。だって、フツーの女の子たちが普通にしゃべってるだけのところを、じっとお客さんたちが観てる空間って、誰が楽しいの? 思わず「今、何待ちー!?」と心の中で呟いてしまう。これって客入れの間にやっておけば良かったんじゃないかなぁ。開演時間と同時に踊り始めればイイのに。なんて思ってしまった。そっちのほうがよっぽど自然。
ひとしきり踊った後、ダンサーたちはエレベーターで、観客は階段で2階へ移動。なんかこれも不自然だなぁ。もういっそ、一階のカフェの場面は客入れの間みたい人だけ見せて、あとは普通に二階を会場として案内しちゃえば良かったんじゃないのか……なんて思ってしまう。
さて、2階のギャラリー。横長の会場なので席位置によってはかなり死角ができそう。早々に中央ポジションゲット。まぁ、ここからはいつも通りのダンス。肩のこらないまったりダンスに、軽く気をとりなおす。観客参加で踊る場面、ふだんならやらないんだけど「一緒に踊ったほうが楽しいよ」という同僚の言葉を信じて参加。手をぶらぶら、くるっとまわって……あ、ほんとうだ。楽しい! あははー。くるくるー。ぶらぶらー。シンプルな動きなんだけど、一緒にギャラリーをひとまわりするうちにすっかり楽しくなってしまった。
と、思ったら本当の見せ場はここからだった。新人の篠崎芽美さんがソロで踊りはじめた瞬間、もう、空気が一変。びっくりした。それまでのほんわかムードを吹き飛ばすような激しいダンス。うわあああ。すっげえええ。正直、その場面になるまで大して目にも止まらなかったのに。そのへんにいそーな地味な雰囲気の娘さんなのに。まるで取り憑かれたようにものすごいスピードで踊り続けるそのソロには、思わず息を飲んだ。というか、まばたきを忘れるくらいに見入ってしまった。「ああ、ダンスの神様に愛されてるんだなぁ」なんて思ったり。おかげで、その後のシーンはずっと篠崎さんばっかり目で負うことになってしまった。いやはや。
そういえばこの公演を観た人は後になって、誰もが口をそろえて「あの新人さん、すごかったねぇ」と言っていたなぁ。

  • 演出・構成・振付・出演 伊藤千枝
  • 出演 井出雅子 山田郷美 佐藤昌代 飯田佳代子 篠崎芽美

会場:CLASKAhttp://www.claska.com/