『食』って何? 料理のススメ。

チョット長いお話しになりますので、興味のある方、時間がある方・・・読んでいただければ嬉しいです。
料理を本格的に教え始めて34年目になるのかしら。

小さい頃から料理に興味を持っていましたので、料理を作るのは得意分野だと思っていました。
若い頃はとにかく美味しい料理を、そしてその当時目新しい料理を中心に教えていました。
フォンのとり方やマヨネーズの作り方など、なるべく自家製でとも思って教えていました。
その後、なかなか叶わなかった子供がやっと授かってからは、
『食の大切さ』を凄く考えた料理をしてきたつもりです。
それは特に人の成長過程では心身共にとても重要な位置を占めるのだと思うのと、
大人になっても『食べる事と食を囲むテーブル=食卓』が人間の生活に大きな役割をするのを感じ、
大切にしたいと強く思う様になりました。
それを伝える為の料理教室を目指そうと思ったのです。
今、簡単に『食育』という言葉を使用するようになりましたが、
その当時はよく分からないまま『食』がどの様に成長に影響するのか、とても興味があったのです。
『食べる』ということは体の成長と健康に役立つのは分かっていたのですが、
精神的な事にも左右するものだと思ったのです。
単純な一例ですが、私が母から作ってもらった温かい食事は、頭に来ていてプンプンしていても、
食べると気持ちが悔しいくらいに落ち着くのです。
顔もほころび、恥ずかしい程にニタッと笑ってしまう私がいるのです。
質素で良いので良質で美味しい物を食べていると、穏やかに過ごせる日々が続くのではと思いました。
『料理って凄いな〜』とずーっと思っていました。
こんな単純な事柄の積み重ねで、大きな事にもつながっていくのではないかとも思ってきました。


料理は基本がしっかりしていると、より美味しく作る術を自然に身につけることが出来ます。
私の教室は基本をしっかり身につけて欲しいので、簡易に出来る料理は少ないと思います。
でも基礎が浸透して、それが普通のことになったら、料理は楽に出来るのですね。



私の教室は、各国の伝統的家庭料理が中心ですので王道なものが多く、
今となってはレトロなのか、今は流行らないのかも知れませんね。
勿論、買ってきたお総菜やお弁当、ファストフードもお楽しみですし、忙しい時もOKです。
ただ、出来れば器に移し替えて欲しいですけどね。

家庭での食卓は唯一家族が向き合って同じ行為をする場所です。
そこで同じものを食べて表情を見ることが出来、色々コミュニケーションがとれる場所です。

この思いを分かって下さっている生徒さんが、今も続いて来て下さっていますので、
殆どが20年以上のクラスになるのです。
また子供の手が離れて一度退会された方がご夫婦ふたりになった今、
『たまの外食はお楽しみにとっておいて、
日々は家庭での食事を中心にしたい』とご主人様に言われて、再び来て下さるリピーターも多いのです。
ここにも『食と食卓』の楽しさ大切さを浸透できたと嬉しく思います。
ただ、若い方や若いお母さんに伝える力が弱いのでしょうか、お忙しい方が多くなったのでしょうか・・・
残念ですが新しいクラスが続かないのですね。
今のニーズに合った、見た目にもオシャレで簡単に出来る料理が、融通が利かない私には難しいのかも知れませんね。
以前、雑誌のお仕事もさせて頂いていた時期があります。

スタッフの方にも私の思いがなかなか伝えられず、
雑誌では料理の紹介と手順を伝えるだけが精一杯なってしまう事と、
子供にも生徒さんに負担を掛けしてしまったので、その当時私が一番やりたいことは、
せっかく授かった子供をしっかり育てることと、
今通って下さっている生徒さんに顔を見て教えることを大切にしなくては・・・と強く思い、
ここでも、こういう私の不器用さと力不足のために、ひとつを残して殆どの雑誌の依頼はお断りすることに致しました。
確かに無名なのに・・・奢った気持ちは全くなかったのですが、さぞかし傲慢に思われたことでしょうね。
ただ、できるなら最後に雑誌の1ページでなく、
子供達のため、生徒さん達のための料理本を作ることが夢ですかしらね。

先日、お子さんが生まれる前から通って下さっている方で、
高校生になった思春期の男の子で殆ど会話がないのに、
食卓でだけは『これウマッ♪○○先生の料理?』という会話が唯一出来ると
喜んでいらっしゃる生徒さんがありました。
これも『食』が役に立っている証のひとつです。

長く通って下さっている方のお子さん、わが子達・・・社会人に。。。
そろそろこの『ちゃんと作った食』の結果が出始めて来ました。『人を育てられた』と実感しています。
勿論『食』だけではないですよ。それぞれのご家庭の意識が素晴らしかったのが一番ですよね。

また、私の母のことでも自信がつきました。
母が我が家に来たのは2年5ヶ月前。
三姉妹である一番上の姉の家の庭続きに両親の家があり、姉が父母ふたりの介護をしていました。
4年前に父が亡くなり、母ひとりになり、姉もかなり疲れていたので私がバトンタッチしたのです。
我が家に来るまでは、週末は姉家族で集まりますが、普段は食事等の時に姉が用意して食べさせたり
ヘルパーさんが来る時間意外は広い家で殆ど車椅子でひとりでウトウトTVを見ていました。
姉は2軒の家の世話をするのは大変ですから、当然仕方ないことですね。

母は食事制限はなかったので、我が家ではみんなと同じ物を作りました。
私は栄養士ではありませんし、栄養素やエネルギーには明るい方ではありませんので、
食事療法がある方のは難しいのですが・・・
母の場合はまず、彩りを考えて可愛く盛りつけて、可能な内はなるべく咀嚼をしてもらいたいという思いもあり、
若干細かめに作りました。
飲み込むのが難しくなった頃は、最初にどんな食事かを目で見てもらい、
みんなと同じ食事だと分かってもらってから、潰したり刻んだりトロみを掛けたり工夫して食べてもらいました。
何を食べているか分からない程、食事がつまらない物はないですからね。



母の状態は波があり、水分も摂れない状態の時は、フルーツに栄養補給ゼリーを掛けてみました。
これはお勧め!上手く水分と栄養が摂れ、脱水症状が避けられました。

この様に『食の仕方』によって無表情だった母の顔に明るい表情が出てきて来ました。
『美味しい〜』と言って目が合うとニコッと笑ってくれます。
最期の方は目をつぶった状態で食事をしていましたが、
娘が料理の説明と口に運ぶ時に『これは○○よ。美味しいよ〜』と
根気強く語りかけながら食べさせてくれました。
母はうなずきながら食べていました。
母の食事を幾つか写真に納めています。
食事療法が必要でないお年寄りの食事のヒントになればと思い、何年か掛けて本にまとめたいと思っています。
どの様な形で出版できるか考えています。何か良いアイディアはないでしょうかしらね?

超高齢の人は食べられる時と食べられない時の差は明確に表れます。
食べられない時は1日で頬が痩けてゲッソリして何歳も年をとった感じになり、
食べられるようになると、その日の内にプックリしてきて顔色も良くなり表情も出てきます。
凄い変化が見えました。

母はパーキンソン症候群。我が家に来た時は目眩もひどくて立たせるのも困難で、
手は震えて物を持つことが難しかった状態です。
この様に食生活も改善し、環境も狭い家ですので常に人の声が聞こえ、人が見えるのが良かったのでしょうか、
来て1ヶ月経った頃、気が付いたら目眩と震えがなくなっていました。最期までありませんでした。
これは私は医者ではないですので病気が治ったとは思いませんが、
『食』と『食卓』と『家(族)の環境』だったと思います。
そして努力家の母の意欲も掻き立てました。
震えと目眩がなくなり『もう一度きちんと字を書きたい、自分で立ちたい』と頑張っていましたが・・・


この様に特に『食べるということ』は地味ではありますが、心の幸せのかなりの部分を占めるのだと確信しました。
ですから家庭では、豪華な物でなくて良いので安全(これが一番難しい時代ですが)で、
美味しくて心のこもった料理を作ることを心がけたて頂きたいと切に願います。
試してみる価値はあると思います。食べてくれて笑顔が出るとすごーく嬉しいでしょ?
その笑顔を思い浮かべて料理すると楽しいですよ。

『エ〜?人生、食が主じゃないよー。そんなにこだわらなくても良いんじゃない』と思われる方も多いと思います。
でも『食』を愛して考えて数十年過ごした私個人の結論ですので、思ったことを書かせて頂いたまでです。
ひとつの意見としてみて頂きたいかな。
『自慢してるー』と思われた方もあると思いますが、
少しでも私の料理がお役に立てたことが嬉しくて書かせて頂きましたことをお許し下さいませ。
そしてまだまだ伝えたいことはあるのですが、思うように文章に出来ない力のなさが悲しいです。

最後まで読んで下さったて、ありがとうございました。