母親が着物を探しに来た話

詳細は聞いたけど忘れてしまった。人が死んだら、その人が生前着ていたものを家のうしとらの方角の軒先に吊るしておくものらしい。女性ならじゅばんを吊るすそうだ。
さて、祖母の話である。


伯母が亡くなったとき、その息子さんが葬儀を出したのだが
無人の家に夜中白い着物がひらひらしていたら、気味が悪いだろう」
といってじゅばんを自分の家に持って帰ってしまった。伯母は一人で家に住んでいた。
その夜、
息子さんは自分を呼ぶ声で目が覚めた。
呼ばれるまま外へ出てみると、庭先に誰か立っている。
見間違いかと思って目をこすってみたが、
やはり母親だった。
驚いて、慌てて寝間へ引き返して布団にもぐりこんだ。
翌日母親の住んでいた家へ行き、あらためてじゅばんを軒先に吊るしておいた。
それきり母親は見ていないそうだ。