英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

中央銀行への信任

 快晴。新年にふさわしい、良い天気である。
 2016年の中央銀行は危ないことが何度も起きる年となりそうだ。市場の中央銀行に対する信任は揺さぶられることになりそうだ、と指摘している。
 2015年を振り返ると、市場は何度も中央銀行に揺さぶられた。まず1月に、スイス中央銀行がユーロに対してスイスフランを固定する政策を放棄すると突然発表した。中国中央銀行も8月に市場に混乱を引き起こすような通貨切り下げを発表した。これによってリスク回避行動が世界中に広まった。
 欧州でもECBが12月に行った決定は、量的緩和に対する市場との対話に混乱を招いた。
 こうした混乱の根本には、中央銀行に市場があまりに依存しすぎていることがある。ドイツ国債の10年もの金利が4月に0・05パーセントをつけていたのが、6週間後には1パーセントまで上昇したことがその一例だ。
 2015年のこうした前例を考えると、2016年は新たな挑戦がいくつかありそうだ。もっともはっきりしているのは、Fed金利見通しと市場のそれが乖離していることだ。
 http://www.wsj.com/articles/central-banks-a-year-of-living-dangerously-1451558239
 2015年は原油相場にとっても、低迷の1年となった。この1年間で30パーセント価格が下落した。供給過剰状態は2016年も続き、価格の重しになりそうだ。
 2014年は米国のシェールオイルが市場に流れ込み、供給過剰状態をつくった。2015年はこれにサウジアラビアとロシアという2大供給国が加わった。米国における原油在庫は80年ぶりの高水準を記録している。それもこれも、生産者が低価格の中でも何とか利益をあげようとするからだ。
 「シェールが世界を変えた」と、ある専門家は述べている。
 http://www.wsj.com/articles/oil-prices-rise-but-supply-glut-caps-gains-1451560147

海外旅行7選

 新年らしく明るい話題。閑話休題である。
 旅行の専門家の勧める旅行先7選。スリランカを筆頭に、ペルーやグリーンランドなどのお勧め旅先が上がっている。
 スリランカは6年におよぶ内戦があったが、ここにきてホテル投資が急増し、観光旅行客にとって良い環境になっているという。
 http://www.ft.com/intl/cms/s/2/597e0e3c-a7e0-11e5-9700-2b669a5aeb83.html
 ベルギー警察は新年にテロを企てたとして、6人の容疑者を拘束した。
 昨年のパリテロ事件以降、ベルギー警察当局はテロ対策が不十分だとして厳しい批判にさらされてきた。
 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e761edf2-afb2-11e5-b46e-3ef837cafba3.html#axzz3vxTiVpH0
 ドイツ政府は今後、シリア難民に対し、自動的に難民資格を与える政策を変更する予定だ。2015年の1年間だけで100万人の難民が流入してきたからだ。
 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/3cd3f6f0-afa3-11e5-993b-c425a3d2b65a.html#axzz3vxTiVpH0
 

米国経済3つのシナリオ

 2016年、米国経済で考えうる3つのシナリオ。利上げ後のシナリオでもある。いずれもゼロ金利からの脱却がいかに難しいかを示している。
 ここで引用されているのが、クルーグマン教授が日本経済について診断した有名な論文だ。いわゆる、無責任であることを責任を持って約束する、という政策だ。財政政策の大規模な発動を含め、金融政策をそのように発動しないと、流動性のワナ、デフレの悪い均衡から逃れることができない、と教授は説いた。
 金融危機からの脱却の過程で、もう一つのシナリオが浮上した。フリードマン・シュワルツ・バーナンキ仮説とでも言うべきストーリーだ。
 フリードマンとシュワルツは有名な著作で、1930年代の大不況は、Fedがマネーの供給を劇的に絞ったことが原因だ、と説いた。Fedの政策の失敗のせいで、不況が深く、長引くことになったのだ。
 バーナンキ前議長は2人の著作のフレームワークを借用し、今回の金融危機に当てはめて解釈した。流動性のワナが生じたのは、中央銀行の金融緩和が不十分であったからだ、と。十分なほど非伝統的金融政策を使えば、流動性のワナは克服できると説いたのだ。
 しかし、この見方は間違っているとこの記事の論者は説く。新たなシナリオとして妥当なのは、ハンセン・サマーズ流のセキュラー・スタグネーションシナリオなのだ、と。
 もしこの仮説が正しければ、現在のところ正しいことを証明しているように見えるが、大胆な中央銀行の施策はゼロ金利の問題を改善していてはいても、根本的に解決することはできない。
 貯蓄と投資の不均衡を是正するには、もっと大胆な改革が必要だろう。すなわち、人口が減少している豊かな国がもっと大胆に移民を受け入れること、さらに、政府による大規模な国債の発行である。
 セキュラー・スタグネーション仮説は陰鬱なシナリオである。もしかして、間違っているかもしれない。しかし、米国が再びゼロ金利に戻るようなことになれば、世界経済は今後10年間、不確実で、憂慮すべきものになるであろう。
 http://www.economist.com/blogs/freeexchange/2015/12/zero-one-then-back-zero