英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

マービン・キングとベン・バーナンキ

 イングランド銀行の前総裁、マービン・キングが新著を出した。クルーグマン教授によるその書評である。
 世界最古の中央銀行スウェーデンであるが、イングランド銀行は現代の経済学や中央銀行が常識としている数々の政策ツールを発明した。また、イギリスポンドはドルはもちろん、円や中国人民元と比べて存在感はずっと低下しているが、知的な冒険はイングランド中央銀行に端を発している。 
 Fedイングランド銀行とは対照的に、伝統的に学界出身者でなく銀行家によって運営されてきたが、その点バーナンキ議長の就任は例外的である。バーナンキと同時代にイングランド銀行を率いたマービン・キングはロンドンスクールの経済学教授であった。そして、バーナンキ氏と同様、キング前総裁も回顧録を書いた。
 しかしその内容は多くの人が期待するような内容ではない。危機時の経験や個人的な回想といった類のものではなく、経済学的なアイデアに一点集中している。幅広い歴史的な詳細に満ちており、私(クルーグマン教授)の知らない多くの話が登場する。主に金融理論や経済学の方法論に関する深い思索に満ちている。彼のラディカルな主張はクルーグマン教授自身、受け入れられない点はあるものの、正統派研究者に対するチャレンジに満ちている。
 読者はキング氏の主張すべてに同意できないかもしれない。
しかし、われわれの使っている知的フレームは血管のあるものだという彼の主張は勇気ある主張である。
 キング氏のいう危機はバーナンキの危機とは異なる。
 http://www.nybooks.com/articles/2016/07/14/money-brave-new-uncertainty-mervyn-king/