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バーナンキの日銀評

 中央銀行の政策手段は失われつつあるのか。日銀の決定に関連し、こうした議論が再浮上している。
 日銀は2%のインフレ目標を単に達成するだけでなく、それをオーバーシュートすることを掲げた。そして、短期金利を目標にするだけでなく、長期金利も目標にするという。
 これは一種の革新であるかもしれないが、なぜこれまでの革新が不足しているのか、という悩ましい疑問を浮かび上がらせる。
 FedやECBは日銀と同じボートにのっている。だが、日本の状況は欧米と似ているが、唯一それよりも悪い。
 日本の成長率は平均0・2%だ。インフレ率がわずかにマイナス。そして、もっとも問題なのは、市場などのインフレ期待が低位で動かないことだ。水曜日、円は最初わずかに円安となり、その日は円高で終えた。新たな日銀の政策に対する懐疑心があるせいだ。
 日銀は水曜日、インフレ率が2%に届かなかった理由として、3つの要因をあげた。原油価格の低迷と、2014年の消費税、そして、新興国市場の減速だ。
 http://www.wsj.com/articles/central-bank-tools-are-losing-their-edge-1474501934
 バーナンキ前議長が日銀の今回の決定について、論評を加えている。
 今回の政策アナウンスメントは、2つのパートからなっている。一つは、2%超のインフレ目標へのコミットメントだ。2番目は、非常に重大な変更であり、日銀は10年国債金利を政策の目標に据える。しかし、2つめのメッセージは、一方で毎年JGBを80兆円買うという、量の約束も行っており、混乱がみられる。
 日銀の決定に対する市場の反応は強弱さまざまだ。声明は政策のフレームワークを変更するとしているのだが、政策スタンス自体は変わらないからだ。とくに、10年国債金利のターゲットに関する表明は混乱を招いている。
 しかし、全体として、私自身は良いニュースだと評価している。というのも、ふたたび日本においてデフレを終わらせるという目標にコミットしたこと、その目標を追求するための新しいフレームワークを確立したからだ。
 もっとも驚きである、興味深い点は、10年国債金利をターゲットにした決定だ。かつて私が論じたように、長期金利ターゲット政策は、米国という先例がある。
 長期金利ターゲット政策は、量的緩和と非常に深く関係がある。長期金利にペッグするということは、量にターゲットをあてるのではなく、価格にターゲットをあてるということを意味する。売るにせよ、買うにせよ、中央銀行がある価格を設定するが、買う量は実際には、マーケット参加者がいくらで売るか次第だ。
 その点で、今回日銀が80兆円の買い入れ目標を維持したことは困惑させる決定である。2つのうち、1つは余計な政策である。私が思うに、日銀は量の目標を落とすと、市場参加者が緩和の縮小だと受け止めることを警戒していたからだと思う。時間が経てば、この量のターゲットがだんだんと縮小し、重要性を減じていくと思う。
 では、日銀が長期金利ペッグ政策にシフトしたことは良いアイデアなのか。一般的にいって、長期金利にペッグすると、いくつかのリスクが生じる。
 とくに、ペッグを守るため、中央銀行はバランスシートのサイズをコントロールすることをあきらめることがある。もし、市場参加者が近い将来のうちに、中央銀行がペッグを諦めると受け止めたときは、このリスクは激しいものになりうる。
 このことはつまり、金利ターゲットを守るために、日銀の国債買い入れ額が80兆円以下となる可能性もあることを意味する。
 日銀は金融政策と財政政策の間のシナジー効果に言及している。しかし、声明文で黒田総裁は政府支出の金融によるあからさまなファイナンスに反対することを表明している。いわゆるヘリコプターマネーだ。
 定義の問題は別にして、日銀が長期金利のターゲットレートを始めると、ヘリコプターマネー政策との類似性が一層喧伝されることになるかもしれない。
 https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/2016/09/21/the-latest-from-the-bank-of-japan/