『深沢七郎コレクション 流』 (ちくま文庫) 深沢七郎

楢山節考は入ってないけど、代表作の小説。
「東北の神武たち」は、今村昌平監督映画に1エピソードとして入ってたやつだあ〜これがあんな映像になってたのかと。
ものすごい作品で、なんつうか日本の話なのに現代社会から隔絶した地の自然描写とエキゾチズムと、男主人公視点の妙に青春小説して爽やかな気もするし、非道徳的状況(人権剥奪の次男三男の奴隷労働、堕胎、嬰児の遺棄とかごく日常の社会)でも人間の情動あるし、なんかもうすげーよ。
暴力や原始の力ともいえる卑俗と粗野と、ほのぼのが合い混じる、狭く狭く閉じた普遍の世界で、妙な話アメリカでよくある日常に含む暴力+日常描写系の小説みたいな印象でした。コーマックマッカーシーとかとかジョイス・キャロル・オーツ…これ昭和日本の本だけど。
興行する役者書いた『千秋楽』のこの自分の人生で大事なところなのに冷めたアッサリした寂しさみたいなのも独特だなあ…ものすごく面白かったです。題材が大衆小説として十分に卑近卑猥でセンセーショナルなんだけど、この冷め方、閉じ方で、ヒューマニティ描くっていうのが味なのかもなあと思います。